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どんなイヤホンのポテンシャルも引き出す。iBasso「DX300」が示した次世代ハイエンドDAPの姿

2021/02/12 高橋 敦
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ベースラインもクリアに届ける高密度サウンド

まずは筆者がイヤーピースやケーブルを好みに合わせて交換しつつ、ダイナミック型ハイエンドイヤホンのリファレンスとしているAstell&Kern「T9iE」との組み合わせで確認した。

3.5mmシングルエンド駆動の時点で、その説得力はすでに十分かつパワフル。しかしその力を解放的に発揮して迫力を出すばかりではなく、必要に応じて音をしっかり抑え、あるいは力感を凝縮し、高密度な力感も生み出してくれるタイプだ。4.4mm/2.5mmのバランス駆動ではその凝縮感がさらに高まる。

標準のアンプカードには3.5mmシングルエンド/2.5mmバランス/4.4mmバランスの3端子を搭載

ロバート・グラスパー「Better Than I Imagined」では、ミシェル・ンデゲオチェロによるベースに注目。フレーズの音域も音色の帯域もぐっと沈み込んだ、超低重心なベースラインだ。

DX300とT9IEの組み合わせはその底深い域でのベースラインの動きを、モゴモゴと不明瞭にすることなく、実にクリアに届けてくれる。ただコンパクトな音像にまとめて見えやすくしているわけではない。前述のように、音像を引き締めつつ、そこに込める力の密度を高めているのがポイントだ。その凝縮されたエネルギーが、音場の底に沈んでいてなおかげらない存在感を生み出してくれている。

音の滑らかさも魅力。ベースのアタックもゴツゴツさせないし、細かなリズムを刻むシンバルでも、ザシュザシュとした濁点はあまり目立たせない。女性ボーカルのしっとりとした色気も抜群。中高域の雑味の少なさは、アナログとデジタルのどちらにおいても歪みや濁りを徹底的に抑え込んだ設計のおかげだろうか。

アンプカードは交換可能で、標準ではディスクリート構成の「AMP11」を付属する

何にせよ、この曲に含まれるクラブ的な成分とヒップホップ的な成分のうちクラブ側、加えてソウル的な成分も強めに感じられるサウンドだ。そこはT9IEの持ち味でもあり、その持ち味をDX300がさらに引き上げてくれていると感じる。

イヤホンの秘めたポテンシャルを引き出す

ではLiSA「紅蓮華」のように “ストレートな激しさや鋭さも出してガツンと再生したい曲” には合わないのかというと、そんなことはない。というか合わせることができる。

例えばアタック感を強めたいなら、「GAIN」設定LOWでボリュームを上げるよりもHIGHでボリュームを下げた方が、同じ音量でも稼げる印象だ。またデジタルフィルターの種類の変更で音のカッチリ感の微調整も可能。それらの設定を詰めていけば、元からの持ち味である高密度な力感にガツンと硬質な迫力もチョイ足しできる。

背面部

とはいえやはり、元から曲にフィットするイヤホンとの組み合わせならさらに楽しめる。例えばDX300と組み合わせて紅蓮華を聴くのであれば、Acoustune「HS1657CU」は特に好感触。真鍮筐体のイヤホンらしい華やかさや手触り感がLiSAの声やラウンドロック的なギターのエッジにフィット。この曲ではギターの瞬間的な発振、フィードバックも効果的に用いられているが、その突き抜ける音のインパクトも引き上げてくれる。

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