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<連載>角田郁雄のオーディオSUPREME

シルクのような滑らかな肌触り、アキュフェーズ「C-3900」で開けるさらなる高解像度の世界

2020/12/26 角田郁雄
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■C-3850をも上回る高解像度再生を実現。各楽器の倍音成分も豊富に

さて、そのC-3900の音質です。実際に色々なアルバムを再生してみましたが、まず、再生して感激したことは、C-3850をも上回る高解像度再生を実現したことです。空間と奥行きはさらに拡張され、ヴォーカル曲を聴くと、歌姫が部屋で歌っているかのような生々しさを体験します。

コンサートやイベントが少なくなってしまったが、自宅リスニングルームで音楽を聴く時間が増えた2020年

各楽器の響きも、倍音成分が豊富になり、再生するディスクに内包する音楽情報をストレートに表しているように思えます。聴き慣れたディスクから、いままで気にもとめなかった暗騒音やアンビエントもクローズアップされ、コレクションしたCDをもう一度、聴き直したくなりました。あたかも、愛聴盤が最新リマスターされたかのような感覚にもなりました。

ストラヴィンスキーの「春の祭典」やマイルス・デイヴィスの「We Want Miles」などを聴くと、弱音から強音へと瞬時に移りゆく旋律で、今まで経験のないハッとさせる高い音圧も体験するようになりました。

C-3900は、C-3850よりも定格S/Nを3dB向上させ、118dBを実現しました。確かに静寂感が格段に増した印象も受けますが、それだけではありません。今回搭載する技術により、弱音だけではなく再生する音楽全体に影響し、高解像度化、高密度化され、奏者の演奏の緊張感や表情、演奏の空気感、深い響きの陰影までも今まで以上に再現します。再生する音楽に、実体感のある深い味わいを体験することができるのです。

色付けの少ないことも特徴ですが、唯一、音質面で気がついたことは、極端な例えとなりますが、C-3850では、木綿の肌触りであるのに対し、C-3900では、シルクやビロードのような滑らか、艶やかさを感じます。これは今回の電源部の効果もあると思います。

■プラタナスのカートリッジではコンサートに臨席しているような生々しい体験

次に、アナログ再生です。今年私がいたく感激したのは、プラタナスのMCカートリッジ「3.0S」でした。この3.0Sは、磁気回路のリア・ヨークを大型し、内部インピーダンス2.5Ωで、0.4mVという高出力を発生します。開発者の助廣哲也さんは、カンチレバーの素材にも固有音があることを嫌い、テーパー状の中空アルミ・カンチレバーを今回、採用しました(これは製作費も高価になるそうです)。

PLATANUSのカートリッジ「3.0S」。価格は350,000円(税抜)

そして、レコードの音を忠実にピックアップし、フラットなワイドレンジ特性を重視しています。私は、この3.0Sを幾度か試聴しましたが、かなり歪み率やダイナミックレンジ特性を意識されているように思い、助廣さんに質問してみました。すると、「色付けを極力せず、まずはS/NやDレンジの再生能力を高めることが大事だと考えています」というお答えをいただきました。それほどに低歪み、広いダイナミックレンジ、解像度の高さが実感でき、早々に導入しました。

ヤマハのアナログプレーヤー「GT-2000L」にPLATANUSを取り付けたところ

実際に再生してみると、驚くべきアナログの高解像度再生が実現したのです。その特徴のひとつは、スクラッチ音が少ないことです。特にスクラッチ音の少ないレコードを選んで再生すると、最初の無音時に本当に針が載っているのか、と確認する時もあります。2つ目は、極めて空間描写性が高いことです。ですから、夜、照明を消して交響曲を再生すると、コンサートに臨席しているかのような、生々しい演奏を体験します。録音に優れたレコードを再生すると、レコード再生であることを忘れさせるくらいです。C-47とC-3900のコンビネーションは、優れたドライブ力により素晴らしい音楽の抑揚を再現してくれています。

アキュフェーズは、S/N、歪み率、ダイナミックレンジ、ダンピングファクターなどの諸特性を向上し続けています。おそらく、新しい音を作るというよりも、再生する音楽に内包する情報を鮮度高く再生し、あたかもレコーディングしている最中にまでワープするかのような、高解像度な音楽再現性を実現したいと考えているように、私には思えてなりません。

■デジタルとアナログの最先端が、限りなく近づいてきている

最後に、今年私が感じたことをお伝えします。それは、「オーディオはさらなる高解像度再生を迎えた」ということです。例えば、一直線上の両端にデジタルとアナログ再生があるとすると、近年のオーディオ機器の進化により、その両端の点はもはや限りなく近づいています。そして、演奏家の心までも映し出す理想的な音楽再生の世界となるはずです。アキュフェーズはすでにこの点に着目し、技術開発しているのかもしれません。ぜひ一度、C-3900の魅力を専門店で体験して欲しいと思うところです。

終わりに。皆さまも、今年は本当に過去に体験したことのない疫病の流行となり、生活や仕事で多くの影響や制限を受けていることでしょう。ストレスも感じることでしょう。こんな時は、心安らぐ音楽をいい音で聴き、前向きで開放的な気分にしたいものです。そして、さらに衛生面に注意し、親しい方々へも気配りしたいところです。

では、2021年も、どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

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