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オーディオ銘機賞 審査委員5名もコメント

“新生”マランツの「MODEL 30」「SACD 30n」を聴く。満を持して登場した“妥協のないオールラウンドモデル”

公開日 2020/12/11 06:45 生形三郎
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■銘機賞の審査委員5名が30シリーズを語る


藤岡 誠氏 (審査委員長)

新機軸なデザインの採用とコンビネーションに驚愕
詳細には触れないが、2020年後半のマランツは、めまぐるしい新製品の展開で「一体、どうなっているのか?」と私は驚いた。普及型では、CDプレーヤー「CD6007」とプリメインアンプ「PM6007」が登場。その一方、上級の定番ともいうべき“12シリーズ”に属するCD/SACDプレーヤー「SA-12 OSE」やプリメインアンプ「SM-12 OSE」といった製品群が、きめ細かな変更を加えながらもシリーズとしての音質・キャラクターを変えずにクオリティを向上させ、国内専用モデルとして新登場させている。
そしてこれら以上に驚かせたのは、マランツの歴史上で最高のネットワーク再生機能と、ハイクラス「SA-12」に匹敵するCD/SACD再生能力を実現した「SACD 30n」とセパレート方式のプリアンプのような規模を誇り、パワーアンプ部にはオランダのHypex社のClass-Dスイッチング方式によって200W/ch(4Ω)を発生するプリメインアンプ「MODEL 30」のコンビネーションである。その上で「これがマランツか!?」と思うほど新機軸なデザインが採用されている。


石原 俊氏

スピーカーのドライブ能力が非常に高く繊細で音楽性が高い
マランツから全く新しい「顔」を持つプリメインアンプが登場した。MODEL 30である。両サイドに一種の文様の入ったフロントパネルは、優しげでありながらも、頼もしさも感じさせる不思議な表情を湛えている。内容は非常に濃い。このクラスのプリメイン機はパワーアンプにボリュームをつけたようなものもあるが、本機には立派な電流帰還型のプリアンプ回路が搭載されている。プリアンプの電源部は完全独立型でパワーアンプ部の影響を受けない。プリアンプ部にはMC/MM対応のCR/無帰還型のフォノイコライザーが搭載されている。MC入力に関しては負荷抵抗を3段階切り替えることができる。パワーアンプ部はPWM方式だ。キーパーツはHypex社のNC500スイッチング・パワーアンプ・モジュールで、これを2基、出力端子の直近に取り付けることで高いダンピングファクターが得られたという。出力は200W×2(4Ω)。スピーカーのドライブ能力は非常に高く、B&Wの大型機を楽々とドライブすることができる。しかもパワー一辺倒ではなく、繊細で音楽性が高い。

角田郁雄氏

暖色系で繊細さや柔らかみが引き立つアナログ的で高密度な音
マランツは、デザインを一新したSACD 30nとMODEL 30を登場させ、銘機賞の受賞に至った。前者は、最新のSACDメカエンジンを搭載し、ディスクリート構成のDSPとCPLDでサポートされた独自のMMMディスクリート構成の1ビットDACを搭載することが特徴。さらには、HEOSネットワークオーディオにより、最新のストリーミング再生やUSBメモリによるハイレゾ再生にも対応し、ほとんどのデジタルメディア再生を実現した。一方で、後者は、同社伝統のHDAM搭載のフルディスクリート・プリアンプ部と、従来の4倍の電流供給能力のプリアンプ専用電源を搭載することが特徴で、高品位なフォノイコライザーも装備。そして、B&Wの800D3をも駆動させるHypex社製クラスDパワーアンプを搭載し、200W/4Ωを発生する。この組み合わせでは、空間にリアルな音像を描写するが、他の同社製品とはテイストが違い、暖色系で繊細さや柔らかみを引き立てるアナログ的で高密度な音質を再生できることが大きな魅力となっている。このデザインと音質は、リビングでも輝くことであろう。


福田雅光氏

斬新な高解像度基調であり高速なレスポンスが素晴らしい
マランツが、中核モデルの30シリーズを強化して装いも新たにモデルチェンジした。SACDプレーヤーのSACD 30nとプリメインアンプMODEL 30である。試聴してみると、斬新な高解像度基調であり高速なレスポンスが素晴らしく魅力的だ。20万円代の価格帯で投入できたことは、開発陣の熱意が示していると言える。SACD 30nはコントラストが高く、明晰で彫りが深い。低音は制動力に優れた性能で、緩みがなく高精度な描写力を達成していて上位機種と比較しても見劣りしない。アンプはスイッチング電源、クラスDアンプ構成。200W/4Ωのハイパワー出力。プリアンプ部にはトロイダル電源トランスを採用した複合電源。フォノイコライザーアンプも内蔵し、JFET入力とDCサーボ回路によってカップリングコンデンサーを排除している。目の覚めるような先鋭高解像度、高速レスポンスで、瞬発力にも優れていて中低域の反応は見事である。難題の低音弦楽器の旋律描写も的確な分析力で高く評価できる。ペアで使うマッチングもベストであった。試聴条件は付属電源ケーブルではないが、無限大の可能性を秘めた製品であることも確認することができた。

山之内 正氏

ミュージシャン固有の音色や演奏の表情を鮮やかに描き出す
マランツの中核を担うSACDプレーヤーとプリメインアンプが同時に新世代に移行し、SA12/PM12が30シリーズのSACD 30n/MODEL 30に生まれ変わった。今回は16年振りに外観も新しくなり、マランツ往年の銘機を思い出させる意匠を採り入れて、どことなくレトロな雰囲気も漂わせる。SACD 30nはジッター低減の徹底でストリーミングを含む全ての音源の純度を向上させ、メカドライブの振動対策も強化。MODEL 30はHypex社製クラスDアンプを搭載することでプリアンプ回路の設計を本質的に見直すとともに、JRC製高精度電子ボリュームの採用やカップリングコンデンサーの省略など、思い切った手法との合せ技で再生音の品位を高めることに成功した。ミュージシャン固有の音色や演奏の表情を鮮やかに描き出す能力を新たに獲得しており、従来機以上に音楽の躍動感や表情の変化が手に取るようにわかるようになった。技術的な先進性とブランドの伝統を融合することで、次世代を見通す新たな潮流を作り出す。


【SACD 30nの仕様】
●再生周波数範囲:2Hz〜100kHz(SACD)、2Hz〜20kHz(CD) ●再生周波数特性:2Hz〜50kHz -3dB(SACD)、2Hz〜20kHz ±1dB(CD) ●SN比:112dB(SACD)、104dB(CD) ●ダイナミックレンジ:109dB(SACD)、98dB(CD) ●高調波歪率:0.0008%(SACD)、0.0015%(CD) ●RCA出力(FIXED/10kΩ):2.5V(SACD)、2.0V(CD) ●RCA出力(VARIABLE/10kΩ):5.0V(SACD)、4.0V(CD) ●ヘッドホン出力(32Ω):50mW ●出力端子:RCA(FIXED)×1、RCA(VARIABLE)×1、同軸デジタル×1、光デジタル×1、ヘッドホン×1 ●入力端子:同軸デジタル×1、光デジタル×2、USB-A×1、USB-B×1、Bluetooth/Wi-Fi×2、フラッシャー×1 ●その他入出力:ネットワーク×1、RS-232C×1、マランツリモートバス(RC-5)入出力×1 ●消費電力(待機時):48W(0.4W) ●外径寸法:443W×130H×424Dmm(ロッドアンテナを寝かせた場合)、443W×194H×424Dmm(ロッドアンテナを立てた場合) ●質量:13.7kg


【MODEL 30の仕様】
●定格出力:200W×2(4Ω、1kHz、T.H.D.0.1%)、100W×2(8Ω、1kHz、T.H.D.0.05%) ●全高調波歪率(50W、8Ω、1kHz):0.005% ●周波数特性(CD、1W、8Ω):5Hz〜50kHz ±3dB ●ダンピングファクター(8Ω、20Hz〜20kHz):500 ●入力感度/入力インピーダンス:250μV/33Ω(PHONO/MC Low)、250μV/100Ω(PHONO/MC Mid)、250μV/390Ω(PHONO/MC High)、2.3mV/39kΩ(PHONO/MM)、220mV/18kΩ(CD、TUNER、LINE、RECORDER)、1.0V/18kΩ(POWER AMP) ●出力電圧/出力インピーダンス:1.6V/220Ω(PRE OUT) ●PHONO最大許容入力(1kHz):8mV(MC)、80mV(MM) ●RIAA偏差(20Hz〜20kHz):±0.5dB ●SN比(IHF Aネットワーク、8Ω):75dB/0.5mV入力(PHONO/MC)、88dB/5mV入力(PHONO/MM)、107dB/定格出力(CD、TUNER、LINE、RECORDER) ●入力端子:RCA×5、PHONO×1、POWER AMP IN×1 ●出力端子:プリアウト×1、RECアウト×1、ヘッドホン×1 ●その他入出力端子:マランツリモートバス(RC-5)入出力×1 ●消費電力(待機時):150W(0.2W) ●外径寸法:443W×130H×431Dmm ●質量:14.6kg



本記事は季刊・オーディオアクセサリー 179号からの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから。

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