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【特別企画】チューンナップで新次元へ挑戦

コスト度外視で“深淵”へ挑戦。デノン110周年AVアンプ「AVC-A110」の半端ない実力とは

公開日 2020/11/05 06:30 小原由夫
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AVC-A110は、デノンのポリシーを高次元で具現化したものに他ならない

では、実際のサウンドパフォーマンスをレビューしよう。まずは最近リファレンスディスクの1枚としているUHD-BD/ドルビーアトモス音声の『フォードVS.フェラーリ』を視聴した。

川崎のD&Mビルにて試聴を行った

フォード・ムスタングの発表会で、主人公のシェルビー自ら操縦桿を握ってセスナを着陸させるシーンでは、頭上を通過するセスナの轟音がきれいに移動するのだが、それがしっかりと大きさや重たさを伴って再現される様には感心させられた。これこそ高橋氏が言う「効果音には効果音の表情がある」という所以だ。

また、ル・マン参戦ドライバー首脳陣が相談するシーンでは、エンジンを載せ替えテスト走行するフォードGT40のエキゾーストサウンドが遠く後ろから、あるいは横から、遠近感を伴って切れ目なくシームレスにつながって聴こえる。GT40は画面に映らず、男たちの会話をずっとクローズアップしている場面なのだが、こうしたフレーム外の音のリアルな実在感にも、本機の高い表現力の一端を見る思いだ。

同じくUHD-BDでドルビーアトモス音声『地獄の黙示録/ファイナルカット版』のオープニング。ドアーズの楽曲「ジ・エンド」がバックで流れる中、ヘリコプターのローター音を模したと思しき旋回音がチャンネル間をきれいに回る。そのゆっくりとした、それでいて重心の低い音が物語の不穏さを暗示しているようでドキドキさせられた。

チャプター4、キルゴア中佐が仕切るベトコン村に主人公らが上陸するシーン。B52の爆撃音がクリアーかつ重々しく響いたかと思うと、岸から上陸した戦車の砲撃音のパワフルさにも驚かされた。キルゴア大佐のヘリが着陸するシーンでは、砲撃の爆音が轟く中、頭上から降下するヘリの大きさと重さが映像を伴ってどっしりと響く。その音がいたずらに尾を引かないところも、高橋氏が思い描いたAVC-A110の設計コンセプトがきっちり反映された証といってよい。

私は自宅で本機のベース機であるAVC-X8500Hを使用しているが、今回、AVC-A110の視聴を通じて、あれほど完成度が高い同機にまだ手を入れる余地があったということに少なからず驚いた次第だ。

本機の背面図。最先端のホームシアター環境に必須の8K/60p、4K/120pのHDMI入出力も完備している



AVセンターのグローバル市場を見渡した時、内装を含めたインストールビジネスを除き、いわゆるホームシアター市場は成熟してしまったと言われている。しかしその一方では、世界的なコロナ禍の影響で巣ごもり需要が高まり、家の中でエンタテインメントを楽しもうという気運が著しく進捗している。

そうした渦中において、デノンが市場で担う役割は非常に大きいように私は思う。それが冒頭に書き記した同社の意志であり、そのポリシーを高い次元で具現化したものが、このAVC-A110に他ならないのである。


(協力:D&Mホールディングス)

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