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【PR】触れられそうな立体空間が出現

驚くほど大きい4dBの差。MUTEC新クロック「REF10 SE120」が拓くハイエンドデジタルオーディオ

2020/07/20 角田郁雄
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■ジッター成分を低減する近傍位相ノイズの値で、世界最高クラスのスペックを実現

スタジオ機器を開発する独MUTECは、オーディオファイルも注目するUSBオーディオ向けクロックジェネレーターを多数開発している。中でも人気なのが、USBオーディオに追加できるマスタークロックジェネレーター「MC-3+USB」、そして10MHzリファレンスクロックジェネレーター「REF10」である。そのREF10に、近傍位相ノイズの性能をさらに追い込んだ最新モデル「REF10 SE120」が登場した。

「REF10 SE120」¥OPEN(予想実売価格625,000円前後)。フロントパネル右上の型番名以外はREF10とほぼ同じ

本機は50Ω出力を2系統、75Ω出力を6系統装備し、フロントのスイッチで、使用する出力のみを選択可能。MC-3+USBなどのマスタークロックジェネレーターや10MHzクロック入力可能なSACDプレーヤーやDACなどに接続できる。

MUTECのサウンドとポリシーを高く評価する角田郁雄氏が、「REF10 SE120」を最速レビュー! 「MC-3+USB」も自宅で愛用している

その内部回路の大きな特徴と魅力は、ドイツ国内でハンドメイドされた超低位相ノイズOCXO(恒温槽制御水晶発信器)を搭載したことで、10MHzから1Hz離れた近傍位相ノイズは、何と-120dB/c @1Hzを実現した。

REF10の近傍位相ノイズは-116dB/c @1Hz、これも優れた性能であったが、REF10 SE120ではパーツを厳選し、さらにその上をいく製品を生み出してきたのだ。120という型番も、この値から取られたものであろう。

REF10 SE120の背面。50Ωの出力を2系統、75Ωの出力を6系統搭載。クロックケーブルにはサエクのDIG-T50を使用している

REF10の発売当時、詳しい技術者に質問したところ、この近傍位相ノイズが少ないほどジッター成分が少なくなり、DAC内部で発生するジッターも低減できるとのことであった。高品位な10MHzマスタークロックを外部から供給するという意味では、近傍位相ノイズの低さと周波数安定性が重要だと力説していた。

このREF10を自宅のdCS Vivaldiデジタルプレイバック・システムで試した時は、S/Nが向上し、ダイナミックレンジが拡張したかのような感覚と、解像度が高まったことに、いたく感激した。

内部回路を観察してみると、OCXOの性能を発揮させる高品位アナログ電源回路に感心した。また回路面では、クロックを最短で出力する構造になっており、その出力素子には、クロックの立ち上がり時間(波形のエッジの急峻さ)を重視し、高スルーレートで、最小幅のリップル短形波信号を実現する素子を採用したのである。

REF10 SE120の内部

そして今回、驚愕の-120dB/c @1Hzを実現するOCXOを搭載したREF10 SE120を試したわけだ。特性グラフを見ると10Hz離れた特性は、約-150dB/cを示し、100Hzでは、約-162dB/cを実現している。私はこれほどの特性値を過去に見たことがない。

REF10 SE120の近傍位相ノイズのグラフ

しかも位相ノイズの少なさだけではなく、周波数精度や長期安定性も重視している。それゆえ、量産不可能な特別生産のOCXOを搭載しているのである。なお、基板構成や電源部はREF10と変更はない。

■4dB差は驚くほど大きい。空間が拡張され、奥行きが深くなる

今回、最初にエソテリックのSACDプレーヤー「K-03XD」を使用し、REF10とREF10 SE120を比較した。

音源には、アラベラ・美歩・シュタインバッハーによる『ヴィヴァルディ:四季&ピアソラ:ブエノスアイレスの四季』、ホフ・アンサンブルの『Quiet Winter Night』、バーンスタイン指揮、ウィーン・フィルによる『ベートーヴェン:交響曲全集』を使用している。

『ヴィヴァルディ:四季&ピアソラ:ブエノスアイレスの四季』(PTC-5186746)

SACDハイブリッド/MQA-CD仕様の『Quiet Winter Night』(KKC-10009)

K-03XDは内部クロックが高品位で、ディスクリート高精度のDACの威力が十分発揮できていると思っているが、REF10を接続すると、さらに音像が解像度高く空間描写され、S/Nが向上した印象を受けた。特に静寂な音階は魅力で、音楽に深みを感じさせてくれた。

エソテリックのK-03XDと組み合わせ。左がREF10、中央がREF10 SE120。フロントパネルはいずれもアルミニウムとブラックを用意している

次にREF10 SE120を接続すると、さらに空間が拡張され、特に奥行きが深くなり、演奏の様子が、一層リアルに浮かび上がる。音の立ち上がりも変化し、再生レンジ、スケール感が拡張されたかのように思えた。しかも静寂感が一層増し、倍音成分も増えた印象を受けた。この-116dBと-120dBの4dB差は、驚くほどに大きいことを体験したのである。

次にREF10 SE120をトライオードのMQA-CD対応CDプレーヤー「TRV-CD6SE」に接続した。この音にも感激した。CDを再生しても、5.6MHzDSDやDXDアップサンプリング機能により、ハイレゾではないかと思うほど音が高密度化され、CD再生とは思えない解像度の高いワイドレンジな音質を体験した。

続けてトライオードのCDプレーヤー「TRV-CD6SE」でも比較。CD再生とは思えない高解像度の世界が出現

特に真空管出力を使用したMQA-CD再生では、倍音が豊潤で、中低域に量感を感じさせ、アナログサウンドを彷彿とさせる音を鳴らす。また、REF10 SE120自体は実にナチュラルで、特定の周波数帯域を強調したり、音をシャープにするなどの色付けをほとんど感じさせないことも理解できた。まさにデジタル機器の性能を発揮させるスタジオ仕様なのである。

クロック入力がある機器をお持ちの方は多いことであろう。ぜひ一度、REF10 SE120との接続を専門店で試して欲しい。

■手で触れられるような立体空間がスピーカーの間に出現

最後に愛用のdCS Vivaldiデジタルプレイバック・システムのVivaldi Clockに接続し、SACDやハイレゾを再生した。感激したのは、エソテリックやトライオードで試したときと同様に音が高密度化され、手で触れることができるような立体空間が再現され、静寂感が増したことである。

dCSデジタルシステムにREF10を導入し試聴

アナログ再生に迫るほど倍音が豊かで、透明度の高い音質も体験できた。本機はオープンプライスで、想定価格は税別62万5000円とのこと。だが、超高品位なOCXO、搭載している技術、高音質への効果を考えると、その価格を遥かに超えていると実感している。私自身も今回の取材を終えてから、自宅に招こうかと予算を考え始めてしまったほどである。

まさに驚愕の特性値を備えた、ハイエンド10MHzリファレンスクロック・ジェネレーターの登場である。

(協力:ヒビノインターサウンド(株))

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