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音に有害な高周波ノイズを吸い上げる

【AAEx2020 グランプリ受賞】音に有害な高周波ノイズを吸い上げる ―The Chord Company「Ground ARAY」

公開日 2019/11/21 15:04 林 正儀
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審査委員が語る「グラウンドアレイ」の魅力

■暗闇のような静寂感に覆われる、体験したことのない絶大な効果 TEXT/井上千岳

井上千岳

アンプなどの空き端子に挿入するショートピンやターミネーターなどはこれまでにも存在するが、そこからノイズだけを吸収するというのは初めてだ。アース側にだけ接触しているということだから、アースに生じる微弱な電位を信号として扱うのかもしれないが、回路や動作原理は詳らかではない。

しかし効果があるのは間違いなく、それ以上のことを詮索する必要はなさそうである。実際電源ノイズではなくアース・ノイズだけを解消するフィルターも実用化されているから、こういう装置があってもおかしくはない。

アースであれラインであれノイズ解消の効果は大体共通していて、まず背景が静かになりディテールから汚れっぽさがなくなり、ピントがよく合うようになる。本機もまさにそうで、音の外側がデッドブラック(暗闇)のような静寂感に覆われる。

この感覚はちょっと独特なもので、本当にノイズが鎮まってしまわないと実感できないものである。音だけが宙に浮いているような感触である。それが本機では実現できる。ごくコンパクトな装置だが、利き目は絶大である。

■LANルーターでも効果が絶大。にじみない低域の描写力を再現 TEXT/生形三郎

生形三郎

機器のグラウンドからノイズを吸い出すノイズ・ポンプと名付けられたこのアクセサリーは、ユニークなコンセプトを持っていると言える。通常、この手のアクセサリーは、機器に対してホットとグラウンドの両方が繋がるものが一般的だが、本機は、グラウンドに接続するのみとなっている。

しかしながら、その効果は大きなものであった。実際に、いくつかのコンポーネントにテストしてみたが、プリアンプ、DAC、チャンネルデバイダーなどに使用したところ、S/N感の向上や、雑味感を抑制して滑らかな聴き心地が得られるという、大きな効果を聴き取ることができた。なかでも、特に筆者が良好だと感じたのは、RJ45コネクタ搭載タイプのGround ARAYを、無線LANルーターの空きポートに使用したときであった。

無線LANルーターからはオーディオグレードのスイッチングHUBを接続し、そこからさらに、DACをUSB接続したNASへと接続していたが、その状態での使用では、再生音の背景ノイズが抑えられ、低域側の描写がよりいっそう滲みのないものとなった。

効果が明白で、変化も絶大。背景が決定的に静かになる TEXT/鈴木 裕

鈴木 裕

映像にせよオーディオにせよ、アンプやプレーヤー内部のノイズをポンプのように吸い取ってしまうオーディオアクセサリーだ。使い方はコンポーネントの使用していない端子に差すだけ。内部で発生し、渦巻くノイズ成分を吸収し、熱エネルギーに変換・発散する、電気的にパッシブなデバイスだ。

そもそもはケーブル用の技術であるスーパー・アレイやチューンド・アレイの技術(アンダンテラルゴのウェブサイトを参照されたい)からの応用とも言える。電磁気的な作用だけでなく、振動コントロールもしているという。

効果は非常に明白で、音の変化も大きい。アンプやCDプレーヤーの空き端子に差すと音の背景が決定的に静かになり、音場空間の透明度が飛躍的に高くなる。やわらかさやしなやかさが出るし、重い音はさらに重くなる。音の色彩感の発色が良くなったり、音像の輪郭が明確に、あるいはナチュラルになるのも印象的だ。

映像でも効果も高い。コンポーネント自体のノイズに対して注目、対策しているが長い開発期間を伺わせる完成度の高いアクセサリーだ。

最高峰ケーブルに近い効果。S/Nの向上が明確にわかる TEXT/炭山アキラ

炭山アキラ

私が聴いたのはいまだ量産へ至る前段階の製品で、あまり詳細を認識しているわけではないのだが、RCAやXLR、LAN、USB端子などに挿入することで、広帯域の高周波ノイズを効率よく吸い上げるというので、これまでにないタイプのアイテムであることは間違いない。

使い方は、空き端子へ差してやるだけだから非常に簡単だ。それほど簡易なものだから、効果もそれなりかと思えばさにあらず、差した瞬間はっきりと聴感上のS/Nが向上し、音像の彫りが深く、丹念に磨き上げられたような渋い艶をまとうようになったではないか。面白いものだが、この効果はケーブルをコードカンパニーの最高峰である「コードミュージック」に交換した時と傾向がよく似ている。やはり同じエンジニアが開発しているからということなのであろうが、「正しい道筋を突き詰めると、自ずと似た位置に到達する」ということでもあろう。

デジタルでもアナログでも様々な機器に使えるラインアップが揃っているから、まずは空き端子に1本、まずは導入してみられるとよいのではないかと思う。きっと他のコンポーネンツにもあてがってやりたくなるはずだ。

SN比やコントラストを高まり中低音と低音の分解力も改善 TEXT/福田雅光

福田雅光

英国コードカンパニーがオーディオ機器の端子用に開発した一種の終端装置である。機器の空き端子に装置して使う。XLR用とRCA用を主にプリアンプで試用してみる。

この内部構造はアース側端子側のみに作用することが不思議である。すると、これは一種の小型バーチャルアースのような作用を狙った設計であるのか。企業秘密につつまれており十分に動作は理解できない。

まず、プリのXLR端子に装置するタイプをテスト。この効果は、SN比やコントラストを高め、音の輪郭がはっきりする。使用前後を比較すると、もやもやとした曖昧な雰囲気が排除され解像度がしっかりする。中低音と低音の表現も締まりを効かせ、分解力が改善されてくる。5種類程度の素子が内蔵されているようだが、ホット、コールド間で使われているわけではない。電磁波ノイズがアース経路に作用する影響を改善するように考えられているようだ。

回路動作の基準となるアース経路のノイズを吸収させる目的と聞く。中音高音の繊細な情報もすっきり冴えている。RCA用も試すと、ほぼ同様な傾向の効果がある。


<Specification>
【GroundARAY】
●サイズ:全長約87mm×直径約20 mm (プロトタイプの数値・端子部分を除く)●質量:60g(プロトタイプ)●アンダンテラルゴ(株)
※「グラウンドアレイ」をはじめ、アンダンテラルゴの製品の無料貸し出しサービスも実施中
本記事は季刊・オーディオアクセサリーvol.175 Winterからの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから。

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