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さらに画質を上げるテクニックも

画質のプロが困った、「調整するところがない!」 有機EL“REGZA” X920の何が凄いか徹底解説

2018/10/31 秋山真
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『君の名は。』やスタジオジブリ作品など、高画質で名高い名作UHD BD/BDのエンコードを数多く手がけ、現在もパッケージソフトや配信の高画質化を手がける秋山真氏。同氏が今回画質をチェックしたのは、東芝の有機EL“REGZA”「X920」シリーズだ。4Kチューナー内蔵やタイムシフトマシン対応など “全部入り” モデルとしても話題の本機を、秋山氏はどう見たのか?

東芝 有機EL“REGZA”「X920」シリーズ。BS/CS 4Kチューナーを内蔵している。65型は「65X920」、55型は「55X920」

脱帽という他ないだろう。「AV REVIEW」誌や私個人のTwitterでご存知の読者もおられるかも知れないが、筆者は画質調整魔だ。仕事柄、ブラウン管時代から数多くのディスプレイ、プロジェクターに接してきたが、メーカープリセット値のまま使うことはほぼ無い。

“ほぼ”と書いたのは、過去に例外が2機種だけあったからだ。

それが1996年発売のPROFEEL 16×9(KX-32HV50)と、2006年発売のPDP-5000EX(の標準モード)である。一体いつの時代の話をしているのだという感じだが、その後は液晶全盛期に突入したこともあり、長く不毛な時代が続いた。しかし2018年、遂にそれら伝説の名機と肩を並べる製品が登場したのだ。それがREGZA X920シリーズ(関連ニュース)である。

筆者はこの8ヶ月間、REGZA開発チームと何度も意見交換をしながら、自宅で前モデルの55X910を調整してきた。それもあって、正直ウチの子なら、最新パネル&最新エンジン搭載のX920相手でも善戦出来るのでは?という自信もあった。ところがフタを開けてみれば、結果はもう、全く勝負にならなかった。一体何がそんなに違うのか?

【1】65型でも漲るパワー感が凄い!

X910は国内メーカーとして、日本で最初に発売された大画面有機ELテレビである。そのため搭載された有機ELパネルが後発の他社製品よりも世代が古く、ピーク輝度や黒の沈み込みでは後塵を拝していた。

しかし、そこで無理矢理にガンマカーブを立ててコントラスト感を演出したりしないのがREGZA流。愚直に階調表現やS/Nを追い込むことで、初号機でありながら既に耽美的とも言える表現力を身に着けていた。以前の記事で推奨設定を公開したことがあるが、ここでも敢えて明るさを下げることで、中間調を重視したチューニングをしているのがお分かり頂けるだろう。

ところが、これは55型での話。基本的な画調は変わらないものの、65型ではどうしてもパワー不足を感じてしまうケースが散見された。この55型>65型の傾向は、他社の2017年モデルにも言えたことだが、やはりパネルが1世代古いX910はその差が最も顕著だったように思う。

では現時点において、最新パネルを搭載した唯一の製品であるX920はどうか。今回は65型のみの視聴となったが、パワー不足どころか「まだまだ行けるよ!」と言わんばかりに、大画面の隅々までチカラが漲る圧巻のパフォーマンス!

65X920を視聴する秋山真氏

パネルのピーク輝度が800nitから1,000nitに伸びたことで、高輝度方向への鋭さが増したことは言うまでもないが、瞠目すべきは平均輝度領域内のエネルギッシュな変貌ぶり。ここまでドラスティックだと、X910の美点であった階調性とS/Nが後退してしまうのではないかと危惧してしまうが、実際にはこちらもさらに進化しており、パワフルな映像と見事に両立しているのである。これぞ新開発「レグザエンジン Evolution PRO」の処理能力と、修錬されたチューニング術の賜物であろう。キリリと引き締まった暗部の表現力も申し分ない。

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