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注目のハイエンドDAPの実力

Lotoo「PAW Gold TOUCH」、その駆動力は? ― さまざまな環境に耐えうる、単体プレーヤーの理想が結実

公開日 2018/10/26 18:33 岩井 喬
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■平面駆動型の持ち味を鳴らし切る駆動力

基本的な音質傾向としては平面駆動型らしい素直で伸び良い、スムーズなサウンドをそのまま引き出している印象だ。緻密な質感表現と爽やかで広がり良い音場再現性を持っており、オーケストラの旋律はていねいかつスッキリとした楽器のニュアンスを拾い上げてくれる。低域方向のダンピングの良さも手伝い、音場はクリアで見通しが深い。ハーモニーの響きもさえわたっている。ジャズピアノは軽やかなタッチで、ホーンセクションと共に高域の倍音成分を艶良く爽快に表現。ウッドベースの弾力も滑らかで、シンバルワークも涼やかで優しくていねいに描いてくれる。ヴォーカルの口元はハリ感を付帯感なく引き出し、ボトムの太さも自然だ。

試聴中の筆者。鳴らしにくいと言われるAbyss「Diana」をPAW Gold TOUCHはしっかりと鳴らし切る

DSD 11.2MHz音源を聴いてみると、そのS/Nの高さと品の良い緻密なサウンド性が際立ち、しなやかな描写を楽しめた。ピアノの響きは豊潤で、硬質なアタックがリヴァーブの清々しさを一層引き立てている。ギターは弦の爪弾きを煌きよく響かせ、ヴォーカルは口元を滑らかに描く。声の肉付きもナチュラルで、抑揚良いストレートな音色を味わうことができる。平面駆動型で鳴らしにくいヘッドフォンと言われるDianaを、きめ細やかかつ制動良く鳴らし切ったことは、PAW Gold TOUCHの持つ実力の高さを示していると言えるだろう。

ここでもうひとつ、一般的なダイナミック型ヘッドホンの代表として、ソニー「MDR-Z1R」もバランス駆動で試してみた。MDR-Z1Rはダイナミック型とはいえ、70mmの大型ドライバーを積んだモデルであり、ポータブル機では鳴りにくい印象がある。同じシグネチャーシリーズのハイレゾ対応ウォークマン「NW-WM1Z」(おそらくLotooとしてもPAW Gold TOUCHのライバルとみなしている筆頭モデルであろう)でMDR-Z1Rを鳴らしてみても十分バランスは良いのだが、果たして、そのサウンドにはどのような違いがでるのか、興味は付きないところである。


今回の組み合わせでは、SONY「MDR-Z1R」も組み合わせる
NW-WM1ZにてMDR-Z1Rをバランス駆動で鳴らす場合、ハイゲイン設定でボリューム数値が“110”あたりがちょうどよいと感じる音量感なのだが、PAW Gold TOUCHで鳴らす場合、ハイゲイン設定とするとボリューム数値はゲージの半分程度である“57”程度で結構な音量となる。駆動力の不足感は一切なく、まさにパワフルで押し出し良いサウンドを楽しむことができる。

次ページコシが太く安定的なPAW Gold TOUCH×MDR-Z1Rのサウンド

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