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DAP界の「帝王」、その誕生背景に迫る

Lotoo「PAW Gold TOUCH」キーマンインタビュー ― 独自OSの進化がさらなる性能をもたらした

公開日 2018/10/17 17:37 季刊・ネットオーディオ編集部
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昨今注目を集めるハイエンドDAPの中でも、組み込みOSを搭載し圧倒的な起動安定性を実現したPAW Gold。さらには、スイスの名門録音機ブランドのODMを手がけるなど、その圧倒的な技術力からなるサウンドで「最高峰のDAP」として多くのポータブルオーディオファンから垂涎の眼差しを向けられた。

Lotoo「PAW Gold TOUCH」(¥450,000/税別)※2018年10月25日発売

そんなLotooは、その後PAW 5000、PAW Picoとゼネラルな方向へ技術を落としこんで来たが、今年、音にこだわる層へ向けた最高峰モデル「PAW Gold TOUCH」を発表した。最大DSD512/PCM768kHz対応という文字通り最高スペックを誇るPAW Gold TOUCHだが、いよいよその発売が間近と迫ったいま、Lotooブランドを擁するインフォメディア社Tony Wang氏、Hang Xu氏、Xiaoge Huang氏の3名にその登場背景をうかがう機会に恵まれた。

PAW Gold TOUCHの開発におけるキーパーソン達。写真左よりCo-FounderのXiaoge Huang氏、ゼネラルマネージャーのTony Wan氏、プロダクトマネージャーのHang Xu氏

そもそもLotooのDAPは、多くのブランドがAndoroid OSを採用するなかで、あえて自社で開発を進めた組み込みOSを採用することが特徴だ。その一方で他のDAPのようなファイルブラウズはできず、プロオーディオ機さながらのフォルダ単位かつファイル名で楽曲を探すという独特な使い勝手は賛否が分かれるところにあったのも事実だろう。

LotooではPAW Goldを発売した段階で、この操作性に対する課題に対して研究開発を行ってきたという。

PAW Gold TOUCHにはその名のとおり、3.77インチの大型のタッチパネルを搭載。独自OS「Lotoo OS」によって、高い視認性による動作を実現した

Wang氏「PAW Goldから今回のPAW Gold TOUCHに至るまでは4年という年月を経ていますが、その間も毎年、新しい製品の開発を行ってきました。もちろん、タッチパネルによる操作性を実現する製品についても研究を進めていて、このタイミングでようやくサウンドクオリティに対して満足の行くものができました。それが、今回のPAW Gold TOUCHということです」

PAW Gold TOUCHが発表された際に放たれたキーワードのひとつが、「No Android、No LINUX」という言葉だ。これはつまり、現在のDAP市場においてメインとなるものはいずれも採用していないということ、、自社開発による組み込みOS「Lotoo OS」に対して圧倒的な自信を象徴する言葉となった。

Lotooブランドを擁するインフォメディア社がDAPの開発に着手した20年前の現状を話すHuang氏

Huang氏 「そもそも、PAW Goldを始めLotooの製品が独自のリアルタイムOSを採用した背景には、私達がDAPという商品を構想したいまから20年ほど前の段階で使えるOS自体が存在しなかったことにあります。ですから私達には自分たちで開発を進めるしか選択肢がなかったんです」

いまから20年前といえば、WindowsであれMacであれまだまだ発展途上の段階。また世界の音楽シーンを変えたと言われるiPodが登場する前の話だ。音楽そのものがようやくデータとして扱われ始めたその段階で、Lotooは次なる世代へ向けた音楽プレーヤーの開発を進めていたということである。

ここで大きなアドバンテージとなったのが、世界有数の録音機ブランドの製品を手がけたことによる実績だった。音がデータで扱われるという未来予想図をいち早く描くことができたLotooだが、独自OSの搭載にこだわった理由は、なによりも優れたサウンドを実現するという目的からのものだった。

Lotoo OSのロゴ

Xu氏「オーディオ用のOSは、特別に性能が高いものでなければなりません。だからこそ一般的に使われているものと同じものを、というわけにはいきませんでした。私達のOSは世界でもそのピュアな再現力や音としての完成度の高さでご評価いただいてきましたが、目をつぶってでも操作できるという使い勝手でもご支持いただきました。単なるタッチパネルだけでは、それは不可能ですからね」

「オーディオ用のOSは特別に性能が高いものでなければならない」と話すXu氏

そんな音質面とシンプルな操作性で評価を得たLotooの組み込みOSは、今回のPAW Gold TOUCHでAndroid搭載機にも匹敵するブラウジング性能を備えることになった。当然、OSそのものにも大きな手が加えられているが、果たしてどのようなことに主眼をおいて設計されたのか。

Xu氏「まずはシステムの処理がとにかく速いということを最優先にしています。それに加えて、私達のメインの事業のひとつであるプロオーディオの分野でも使える信頼性を持ったもの、というところも大事でしたね。例えば、ボリュームノブや再生/停止などの基本操作ボタンはあえて残していることからも分かるとおり、目で見て操作する部分と目をつぶっても操作できる部分を同居させています。もちろん、GUIや筐体そのもののデザイン面についてもこだわっています。

本体上部にはボリュームノブを搭載。「目をつぶってでも操作できる」というLotooならでは特徴も踏襲している

本体側面には、再生/停止などの基本操作ボタンを実装。これまでのLotooで評価された部分も残した

また、PAW Gold TOUCHが起動に要する時間はわずか2秒です。これは独自のLotoo OSを搭載したことによってローディングのコントロールが可能となったことで実現したものです。あと、内部に3つのプロセッサーを搭載して内部処理をセパレートしたことも、Lotoo OSの速さに繋がっています」

PAW Gold TOUCHの動作概念図。3つのプロセッサーにそれぞれOSが割り当てられ、各機能に特化した処理が行われる

PAW Gold TOUCHには実に多くの機能が盛り込まれている。SBC/LDACに対応したBluetooth送信機能と、SBCに対応するBluetooth DACとして機能するBluetooh 受信機能、そして今後の対応が予定されているWi-Fi機能、USB DAC機能やUSBトランスポート機能など、現時点で考えられる再生方法のほぼ全てを網羅していることも特徴だ。

こうした豊富な機能を最適に動作させるために採用されたのが、この3つのプロセッサーだ。その内約は、内部にコントロールを司るARM、オーディオ処理を行うDSP、そしてPAW Gold TOUCHに搭載されたワイヤレス機能を動作させるMIPS。さらには、これらそれぞれにOSを搭載し、さらには電源供給からセパレートすることで驚異的な動作の早さと理想的な音声処理を実現した。

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