ゲーミングヘッドホンの常識を覆す！ AUDEZE「Mobius」は高音質と3D技術の集大成だ

Waves NX Technologyとは、ヘッドホンを装着した人の頭の向きを記憶した上で、部屋の音響をシミュレート。3Dポジションとして再生する技術だ。

最先端の人体解剖学に基づいて、耳の中での音の到達時間とレベル差分、そして部屋と人の肩や首、顔からの反射音までシミュレートすることでサラウンド空間を生成。同時に装着した人の頭の向きを1秒間に1,000回のタイミングで6軸トラッキングする。このサラウンド空間上に頭の向きを反映させた上で音を再生する。

実際にMobiusを装着して “3Dサラウンド” をオンにしてステレオ音源を聴いてみると、まず真正面から音楽が流れているように聴こえる。そのまま首を左に振ると、音の位置は正面に固定されているので右耳側から聴こえてくるわけだ。なお、頭の向きを確定するセンタリングの操作も3Dボタンを長押しするだけと簡単だ。

AVファンなら “バーチャルサラウンドの一種か” と想像するかもしれない。確かにその一種とも呼べるが、既存のバーチャルサラウンド効果とはまったく別モノだ。

と言うのも、MobiusのWaves NX Technologyは、基本的に音源の音場を意図的に広げる事はせず、ルームシミュレーションをした上で、音源の持つ情報通りにレイアウトするのだ。ステレオ音源ならシンプルに正面方向から鳴るだけ。しかもその処理精度が高く、音質的にはほぼ加工が感じられないレベルで自然なのだ。

加えて前述の通り、PC接続の際にはサラウンド入力も可能なので、5.1ch、7.1chなどの映画やゲームの音源はサラウンド音響となる。そして、そこからさらに自分を取り巻く音空間がヘッドトラッキングで移動するのだ。こんな体験、今までのゲーミングヘッドホンでは聴いたことがない。非常に驚かされ、素直に感心してしまった独自技術だ。

●Mobiusの実力をワイヤレス、ハイレゾ、映像配信、PCゲームで体験

このようにヘッドホンとして異例なほど多機能を誇るMobiusだが、気になるのは音楽再生でのサウンドがどの程度の実力なのか、ということだ。

まずはiPhoneとBluetooth接続してチェックしてみた。RADWIMPSの「前前前世（movie ver.）」は、エレキギターの音の響きもダイレクト感があり、付帯音がなくクリアなサウンド。特に音のアタックの急峻さ、中域の音の淀みのなさは、「やはりAUDEZEの平面磁界駆動型だ」と惚れ惚れする水準だ。宇多田ヒカルの「あなた」を聴いてみても、女性ボーカルを丁寧なニュアンスで再現している。

続いて再生機器をAndroidスマホへ変更してみると、やはりLDACによるハイレゾ伝送の効果は大きく、音の密度感をストレートに向上させる。「前前前世（movie ver.）」はギターの音の余韻まで見通せる澄み渡るようなクリアネスで、アタック音の個々の情報を純度高く伝えてくれる。「あなた」は多層的な音の立体感を、誇張なくすべての音にセパレートして描き出す。オーケストラの見通しまで見事だ。

GRANBEATを用いて有線接続も試してみた。アナログ入力らしい音の厚みと共に、やはり平面駆動らしい澄み切ったサウンドに魅了される。音楽リスニング用にこの音質だけを目当てに購入しても、Mobiusは実力十分と言えるヘッドホンだ。

なお、音楽リスニングをしながら “3Dサラウンド” を有効すればその効果を感じられるが、音の変化はルームシミュレーションの空間表現が加わる以外、ほとんどない。スピーカーで音楽を聴くイメージで使ってみるのも面白いだろう。

Mobiusは映像鑑賞にも活用できる。PCとのUSB接続でNetflixの『ダンケルク』を試聴すると、平面磁界駆動型ヘッドホンならではの表現力と3Dが融合することのメリットを存分に発揮。音の一つ一つの位置を正確に見通せるような体験を味わう事ができた。

またゲーム『オーバーウォッチ』をプレイすると、弾丸の行き交う戦場を “3Dサラウンド” の方向感付きで体験できる。空中をホバリングしながら移動し、ロケットランチャーを発射、音が動いていく様など、まさに臨場感抜群だ。

AUDEZE初のゲーミングヘッドホンとして登場したMobiusの魅力は、高音質だけでなく、ワイヤレス対応やPC接続、3Dトラッキングと実に多彩で、ひと言では語り尽くせない。逆に、Mobius一台を購入すればそのすべてを体験できると考えると、とてもお得感のあるモデルと言って良いだろう。

（特別企画　協力：株式会社アスク）