K3003/N30/N40」とのサウンドの違いは?

AKG「N5005」を従来モデルと比較、新フラグシップが切り開いた新境地

鴻池賢三

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2018年03月29日
ついに日本での発売が開始されたAKGブランドの最新最上位イヤホン「N5005」。フラグシップと呼ぶに相応しい仕様と音質への期待から大きな話題を呼んでいる。

この記事では、AKGイヤホンの系譜とN5005の位置付けを探るべく、「N30」「N40」と従前のフラグシップモデル「K3003」を一斉に比較試聴した。これまでのラインナップに対し、N5005はどのようなサウンドを聴かせてくれるのだろうか?


フラグシップならではの仕様に加え、豊富なオプションでユーザービリティに優れる

N5005は、Nシリーズの流れを汲む、同ブランドの新フラグシップイヤホン。AKGはプロオーディオブランドとして名を馳せ、70年を超える実績を持つが、その中でNシリーズの登場は2015年と比較的新しい。AKGが培ってきた音響技術を活かしつつ、音楽ファンに最適なデザインや装着感および音質を追求するシリーズと解釈すれば良いだろう。機能面でも、スマホとの組み合わせを前提としたリモコン付属モデルもラインナップしてきた。型番の4桁数字は、K3003と同じく「リファレンスクラス」であることを示す。

音質の基本と言えるドライバー構成は、N30とN40の両機がバランスド・アーマチュア・ドライバー(BAドライバー)1基と低域を担う8mm径ダイナミック・ドライバー1基、K3003が高域と中域にそれぞれバランスド・アーマチュア・ドライバー1基と低域用にダイナミックドライバー1基の3ウェイ構成であるのに対し、N5005は、BAドライバー4基と直径9.2mmのダイナミックドライバー1基、合計5基構成。いずれも、BAとダイナミックドライバーを組み合わせたハイブリッド型であるのは共通だが、物量の違いが音質面でどのような違いを生み出すかは気になるポイントだ。

その他の違いで目立つのは、ノズル部に装着し、交換によって音質傾向をチューニングするフィルターの数。N30は、標準装着されている「REFERENCE」と「BASS BOOST」の2種類、N40とK3003では「HIGH BOOST」を加えた3種類だが、N5005はさらに「MID BOOST」が追加され4種類から選択できる。

「K3003」に同梱のチューニングノズルは3種類

「N5005」には「MID HIGH BOOST」が加わった4種類

ケーブルは引き続きMMCX端子で着脱可能な設計だが、標準的なφ3.5mmのステレオミニプラグタイプと、φ2.5mmのバランスケーブルが付属し、ツイスト仕様であることからも、トレンドを意識していることが窺える。φ3.5mmケーブルに搭載されたリモコンがAndroid/iOS両対応であることも利便性が高い。ほか、Bluetoothレシーバー機能を備える「Bluetoothケーブル」が付属するのもユニーク。さらには日本独自でAKG純正リケーブル「CN120-3.5」がバンドルされるなど、リファレンスクラスで新フラグシップという位置付けながらも、ユーザー本位で最新トレンドをフォローしている点に、「Nシリーズ」の柔軟性を感じる。

N5005はMMCX端子を採用するため、リケーブルにも対応。付属ケーブルも豊富だ

「N30」「N40」「K3003」、そして「N5005」それぞれのサウンド

N30、N40、K3003」と本機N5005を取り揃え、コンディションが変わらない短時間で一気に連続試聴を行った。N30、N40、K3003についてはあらためてそれぞれの印象を確かめ、N5005については、それを踏まえて試聴を行った。本機そのものの音質を確認するとともに、従前モデルに対してどのような違いがあるのかを留意して分析した。楽曲はSusan Wongの「How Deep Is Your Love」(192kHz/24bit)で、繰り返し丹念に聴き込んだ。

まずはN30だ。装着時、小型軽量でピタッとフィットするのが心地良く、音質面でも期待できる。近年のハイレゾ対応イヤホンに比べると、やや解像度が低く感じるが、逆に、神経質にならず、ゆったりと楽しめるのは好印象。ウォームなサウンドだ。

低域は質感よりも量感が勝り、例えばウッドベースの輪郭が緩め。全体がやや混濁し、ボーカルもやや不明瞭にしてしまう。一方、音楽を支えるロー成分がグーンと厚く、好ましく感じるユーザーも多いだろう。傾向として、厚みのあるリッチな音調が持ち味で、パワフルな低域を求める用途に相応しい。

続いてN40を聴く。レンジ感がナチュラルで、穏やかな音調。抑揚の表現が丁寧で、奥行きのある立体的な音場が印象的だ。総じて上品で、優しく包み込まれるような音調が、試聴曲と馴染んで好相性に感じた。

N30とはドライバー構成が同じだが、ダイナミックドライバーはN40用にチューニングされているとのことで、適度にタイトで質感を重視していることが分かる。バランスの良い音調で、さまざまなジャンルの音楽を長時間リラックスして聴くならN40は良い選択と言える。

そして、従来のフラグシップであるK3003。プロダクトの見た目と出てくる音は似るもの。光沢の美しいステンレス筐体が醸し出す雰囲気の通り、煌びやかかつ華やかな音調で、Nシリーズとはキャラクターが異なる。高域にはステンレス製筐体の端麗な響きがうっすらと加わり、爽やかな広がり感も特徴。原音に忠実という基本を守りつつも、日常のリスニングを楽しくしてくれる美音だ。

低域はニュートラルで、適度な質感と量感のバランスが絶妙。N30やN40よりもドライバー数が多くワイドレンジを達成しつつ、音のまとまりを維持した完成度の高さは「リファレンスクラス」を名乗るフラグシップモデルたる所以である。ジャンルを選ばず、音楽の本質を愉しめるだろう。

さて、いよいよN5005だ。比較のため、ケーブルはφ3.5mmのステレオミニを選択した。装着時、付属のイヤーチップは傘部分が薄手で位置合わせが難しいので、フィッティングは時間を掛けて丁寧に行いたい。今回試聴した他モデルに比べると、浅めの装着で音のバランスが整った。低音の量感を頼りに微調整を行おう。少し扱いが難しいが、ツボにハマると、驚異的なパフォーマンスを発揮する。チューニングフィルターは「REFERENCE」を使用。

低域は豊かな響きを持ちつつもスッキリと後を濁さず、質感のストレートな表現が心地良い。この点は、N30で不満を覚え、N40で進化を感じた部分だが、本機では大口径のダイナミックドライバーを、余裕を持たせる方向で使いこなしているようで、ストレスを感じさせず、格の違いは明らかだ。

K3003と比べると、リファレンス的な「ニュートラル」という観点では一歩譲るが、気持ち良く聴かせてくれるという趣味性に長け、本機は実に味わい深い。ハイレゾ時代に生まれ、豊富な音源をベースにチューニングしたと思われる、新モデルならではの良さといったところだろう。

また、N5005の美点は雑味の無さ。セラミック製筐体の恩恵を最も感じる部分だ。N30やN40では、「筐体固有の音」も含めて上手くチューニングされているが、言い換えると妥協とも言えなくも無い。本機では強固なセラミックをベースに、ドライバーの真価を余すことなく引き出しているのだ。

中高域を濁さないので、音源に含まれる空気感が醸し出され、また、ボーカルのテクスチャーを引き出し、クリアなままダイレクトに鼓膜に届くのも、N5005の新境地と言える。ドライバー数の増加が、表情豊かで聴く度に新発見のある奥深いサウンドに繋がっている。K3003と比較すると、ハイレゾに限れば、N5005に分を感じる。

K3003は金属筐体で、出発点がN30やN40に対してハイレベルで、金属の美しい響きが微かに乗って余韻が美麗。一方、良質なハイレゾ音源では、音源自体に余韻がきちんと収録され、再生側は何も加えなくても潤いが感じられるケースが多い。そう考えると、ハイレゾオンリーならN5005がベスト、CD音源も含めて美しい音色で聴きたいならK3003の包容力に頼る手もある。

N5005だけで音質の変化を楽しむ

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