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最新DACアーキテクチャー搭載機で実現

DSDに対応したLINN「KLIMAX DS」を聴く。登場10年を経て進化を続けるネットワークプレーヤー

公開日 2017/12/20 11:03 山之内 正
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深みのある遠近感はKLIMAX DS/3の得意とする表現だが、DSD音源を再生するとその長所がいっそう際立つ印象を受けた。ステージだけでなくホール全体の深々とした奥行きが伝わり、オーケストラの楽器配置が本来の立体感を伴って展開。打楽器の距離感やホルンと低弦が同期するフレーズの空間的な共鳴の様子が非常にリアルで、アンサンブルの精度の高さや演奏の高揚感を余さず再現している。

DSDを再生中のKLIMAX DS/3。本体ディスプレイには5.6MHz/1bitの音源を再生中であることが示されている

欧州のPENTATONEやRCO Live、日本のEXTONなど、大編成のオーケストラ作品にも積極的にDSD録音を採用しているレーベルの音源が手に入るようになった。それらの音源の一部はPCMでも販売されているが、やはりDSD音源を入手してネイティブ再生で聴くのが理にかなっている。

シュタインバッハが独奏を弾くブリテン&ヒンデミットのヴァイオリン協奏曲(PENTATONE)を、WAV 96kHz/24bitとDSF 2.8MHzで実際に聴き比べてみると、一体感のあるオーケストラの響きのなかに独奏ヴァイオリンが溶け込む描写は明らかにDSD再生の方が自然に感じられ、このレーベルの録音の特徴である立体的な空間描写と温かみのあるホールトーンを実感することができた。柔らかいブレンド感はSACDのステレオ再生と感触が似ていて、弱音で演奏される独奏ヴァイオリンの音色の豊かさからもDSD再生の長所が伝わってくる。

LINNの操作アプリ「KAZOO」の画面。DSDの再生は、ファイル形式を意識することなくPCMファイルとシームレスに行える

ガッティ指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団のマーラー交響曲第2番はPCMとDSDそれぞれ複数の形式から選べる貴重な音源だ(RCO Live)。今回はDSD 5.6MHzの音源を選び、KLIMAX DS/3で再生。豊かなホールトーンや弦楽器の柔らかい音色など、コンセルトヘボウならではの美しい響きに加えて、作品が内包する広大な空間観と世界観が伝わり、終楽章の高揚感も格別だ。ライヴを演奏会場で聴いているような臨場感を味わえるのもDSD音源の長所であり、最新のDACアーキテクチャを積むDSはそのメリットも余さず引き出すことができる。



これまでDSD音源を聴くために別途USB-DACを用意しなければならず、再生機器が変わることによる音調の違いに悩まされたり、録音の特徴をいまひとつ把握しにくいなど、いくつか不満を感じていた。KLIMAX DSがDSD再生に対応したことで、今後は共通の再生環境でさまざまな音源を聴き比べられるようになる。録音のレビューでは、各録音の特徴だけでなく、録音方式による違いを検証することも重要なテーマの一つだ。最新仕様に生まれ変わったKLIMAX DSはそこでも威力を発揮してくれるに違いない。

(山之内正)

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