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PCUHD導体採用のスピーカーケーブル

ゾノトーンの新フラグシップ「Shupreme X」ケーブルを評論家6人がレポート

公開日 2017/11/28 09:30 貝山知弘
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ゾノトーン独創のケーブル技術を結集した、新たな最高峰スピーカーケーブル「7NSP-Shupreme X」が遂に登場した。2010年に発売し生産完了となっていた前作「7NSP-Shupreme 1」の単なる後継ではなく、新生トップエンドにふさわしい進化を盛り込んで結実。ここでは貝山知弘氏による入念な試聴レポートと、5人の評論家が語るその魅力をお届けする。

「7NSP-Shupreme X」(¥300,000・税別/2.0mペア、Y-B端子つき、¥43,000/m・税別 切り売り)

PCUHD導体採用の新フラグシップを聴く

ゾノトーンから新しいトップエンドのスピーカーケーブル「7NSP-Shupreme X」が登場した。非常にクリアネスの高く貴重な素材である超高純度7NクラスCuを筆頭に、5種類の芯線を独自の黄金比で巧みにハイブリッドし、各々を緻密に撚り込み絶縁するという同社が得意とする入念な構成が目を惹く。

生産終了したPCOCCに替えて、同社製品ですでに評価を得るPCUHDを投入し新たに設計したのが前作からの大きな変更点で、端末など細部の進化も加えられ、長い経験と実績からも信頼できる製品という印象である。

7NSP-Shupreme Xのケーブル断面図(片チャンネル分)。独自のケーブル構造「DMHC」や、多種の線材/線径を組み合わせ、絶縁してひとつの芯線とするだけでなく、プラスマイナス各4芯からなる導体をポリエチレンの中空パイプをコアとして周囲に配置するエアー制振構造など、最高峰スピーカーケーブルにふさわしい入念さが見て取れる

今回、私の試聴室「ボワ・ノアール」のシステムでその音を聴くことにした。私の再生システムは最近、信号ケーブルを全て新しい高級なケーブルに入れ替えた。クオリティを自慢する訳ではないがその効果は非常に良く、いままでよりもさらに上の再生ができると感じている。そのなかでどのように7NSP-Shupreme Xが表出してくれるのか、大いに楽しみにしていた。

結論を先に言えば、その楽しみは十分に活かされたと言っていい。システム自身が持つ質の高さが非常に素直に出て、さらにそこに力が備わっていることが感じ取れた。

試聴ケーブルはスピーカー側を2つに分岐したバイワイヤ仕様で、作りは非常に頑丈、さすが高級ケーブルというような手に取っただけで分かる良質な質感を備える。SACDを主体になるべく録音の良いソースを用意して聴いたが、どれも確実に狙いどおりの結果が得られたと思う。

7NSP-Shupreme Xの端子部。スピーカー側のバナナプラグ部(写真奥)は先端交換式とし、オリジナル端子部を新開発してねじ込むだけで交換が可能になった(アンプ側のオリジナルYラグ部については固定式、写真手前)。別売オプションの端子先端部は、ロジウムメッキまたは24K純金メッキの、バナナ、Yラグ、ヴィンテージプラグから選択できる

田部京子の『モーツァルト/ピアノ協奏曲第23番』を聴いた。私はこのメロディが大変好きで、心に染みる演奏を楽しんでいる。鳴り出した瞬間、非常に良くなったと感じた。これはおそらくシステムの向上と、このケーブルの相性が非常に良かったのだと思う。

素直にそれが出ている感触で、いままでオーケストラの部分で多少歪みのようなものを感じていたが、それがスッと取れてまったく歪みと聴こえなかった。その部分が非常に素晴らしい。美しい曲なので、その美しさがさらに心に染みてくるような演奏、ここが特に注目したところで、実にいい出来映えだったと思う。

宮田大の『木洩れ日』は演奏と録音が大変よく、サン・サーンスの「白鳥」は曲に含まれる情景や、音楽が持つニュアンスが非常に美しく大好きな曲である。それが、これ以上巧みには出て来ないのではないかというぐらいの印象をもって聴くことができた。

こうした曲では低い音と高い音の全体のエネルギーバランスがしっかり取れていることが必須の条件だが、音域が広くなるほどバランスは難しい。その良さを非常に端的に味わえた。心や身体に染みるチェロの音も深々と感じさせてくれた。

オーケストラの楽器の音も、ごく自然にバランスが取れている。ヴェルディのオペラ前奏曲にもあるように、ごく小さい音で吹かれる木管楽器のソロの美しさにも言える。か細いとか小さいという印象を与えず、美しさがそれに変わって存在する。

オペラの前奏曲らしいドラマティックな曲の構成で、強い楽器のあとに管楽器が柔らかく小さな音で吹かれる美しい曲があったり、その変化が非常に激しく、強く心を打つ訳で、その感触が非常によく出ている。このあたりを十分に聴かせてくれた。

この7NSP-Shupreme Xは、小型機でももちろん使えるが、私がレファレンスに使うフォステクス「G-2000A」のような大型スピーカーと組んで、一番華開くケーブルだと思う。G-2000Aは鳴らすのが難しいと言われるが、ここでは楽々と駆動できる良さが表れている。

もちろんアキュフェーズの大出力Aクラスアンプ「A-200」を2台で駆動していることもあるが、非常にダイナミックな音で、低音から最高音に至るまで余すことなく表出してくれる。ケーブルの質が落ちればそれがどこかで欠けてくるが、そうしたことは全くなく、見事に演奏を伝えきってくれたのである。

バッティストーニ指揮、東京フィルの『「展覧会の絵」「運命の力」序曲』は、日本のオーケストラがここまできたかという好例で、演奏が非常に素晴らしい。この2曲には、低音域の非常に締まった力感が必要になる箇所がある。それは低音楽器のティンパニやグランカッサなどの響きが重要であり、最近のオーケストラ演奏の常識になりつつある。強打する音を締まりよく、しかも力感も求められる演奏が多く、その代表例と言ってよい。

この指揮者はデビュー時からこれをかなり重視している。今回、そのタイミングと出す音の強さがはっきりと感じとれた。締まりのある力強い音が、大変明快に出せることを改めて実感するとともに、この新たな最高峰スピーカーケーブルは見事にそれを表出してくれたのだ。

次ページ5人の評論家が語った「7NSP-Shupreme X」

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