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あらゆる可能性を探り“美”を追求

ハンドメイドで最高の音を再現するレコード再生ブランド、AUDIO NOTEを聴く

公開日 2017/09/01 10:41 鈴木 裕
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代表モデルのサウンド
■音楽の深い滋味を愛し、耽溺できるラインアップ


音の入り口であるアナログプレーヤーの「GINGA」。総合で62sという重量級だ。ただし、単純に重くしたわけではなく、たとえば本体のベース部はアルミ、ステンレス、真鍮、砲金、クロム銅、アクリルの6つを採用。プラッターはメインにアルミを使いつつ、ステンレスとガラス製のターンテーブルシートにより固有音を排除。トーンアームは、と続けて紹介したいところだが紙数がないので、ごくごく簡単にその代表的な機種を挙げてみよう。

やはり重量級のモノラルパワーアンプ「Kagura」。大型出力管211をパラレルシングルで使用している

フォノイコライザー「GE-1」はモジュール化により手配線の良さを継承しつつ、理想的な部品配置、配線ルート、グランドレイアウトを目指している。回路的には2段NF+カソードフォロアの直結回路を構成し、出力インピーダンスを低くし、音の鮮度とダイレクト感を確保。

プリの「G-1000」は本体と電源部を別筐体にしているが、中でも特徴的なのは、新開発の高品質50接点アッテネーターだ。使用している真空管としては6072(4本)、6CA4(2本)。

「Kagura」は大型出力管211をパラレルシングルで使ったモノラルのパワーアンプだ。詳細は省くが「音楽の深い滋味を愛し耽溺してきた方にこそ聴いていただきたい」という重量級の存在だ。

AUDIO NOTEは、他にもプリアンプやプリメインアンプ、MC昇圧トランスなどをラインナップする


■濃密な空気感に驚かされる、体験したことのない透明感

ここまで紹介したアナログプレーヤー、フォノイコライザー、プリ、パワー、そしてそれぞれを接続するケーブル類まですべてオーディオ・ノートの製品で構築したシステムによりYGアコースティックのソーニャ1.2を鳴らすシステムを聴いたことがあるが、圧倒的な世界が展開していた。そのトータルの音の印象を記しておこう。

ある高い水準を越えたオーディオでは、一般的にはトレードオフの関係にある要素、たとえば温かみと怜悧さとか、マッシブな感じとすっきりとした見通しの良さが同居するものだが、まさにそういうものを聴けるオーディオだ。スピーカーの周囲に展開する音場空間の空気感のまず濃密なことに驚かされた。と同時にその透明感や見通しの良さもちょっと聴いたことがないレベルに到達している。

音の色彩感は油絵のように濃密でありつつ、それは各楽器のリアルな音色であると同時に、ミュージシャンたちがイメージしているものを正しく伝える音になっている。と同時に分解能が異様に高く、音場空間が広いので、通常隣接して定位する音像が(特に前後方向において)唖然とするくらいきれいに分離して定位していたのも忘れがたい。

また、音としての特徴のひとつとしては、高域のエネルギーがきわめて高かったことで、一般的に銀線の音というのはきらびやかだったり、繊細感を強調したものになりがちだが、トータルで純度の高い銀を使うことによって、太い高域が表現されていたことを特筆しておきたい。語弊を恐れず言えば、生の音楽を聴くよりも音の訴求力が強く、音楽が展開するのに合わせて自分の何かが鷲掴みにされてしまう感覚があった。

(鈴木 裕)


開発者が語るレコード再生フィロソフィー

株式会社オーディオ・ノート代表取締役 
芦澤 雅基氏

芦澤 雅基氏

目指すは音楽をいかに美しくうたわせるか。1976年の創業間もない時期、銀線巻きのMC昇圧トランス「SILVERED FORMER」をいち早く商品化しました。以来“銀”という素材に着目し、その美しい響きを最大限に引き出すため様々な試験を繰り返し、商品を開発してまいりました。特にアナログ再生に置いてフォノカートリッジ、昇圧トランス、プリアンプからパワーアンプ、さらには接続ケーブルを含めてトータルな音作りを目指しております。

2009年、念願であったターンテーブルシステム「GINGA」を商品ラインに加え、スピーカを除いたトータルシステムが完成しました。休止符までもうたわせる、そんな静寂とダイナミズムを生々しく表現するため日々惜しみない努力を重ねております。銀箔コンデンサーをはじめ銀線巻き出力トランスや多岐にわたるオリジナル部品の開発、採用も、我々が目指す音楽再生を妥協することなく突き詰めた結果です。


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