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【特別企画】「まさに家庭にピッタリな調音材」

変幻自在な吸音・拡散 − コスモプロジェクトの調音材「スローピー」実力徹底チェック

2017/03/29 鴻池賢三
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次は、両端2つが反射材で真ん中が吸音材の「SP450K2」。バンド演奏は、ブラスなど高域楽器がマイルドになって音場がスッキリ。S/Nが向上したかのような落ち着きに加え、ヴォーカルが引き締まって定位も安定するなど、鏡像効果がさらに緩和された印象だ。

吸音材の割合がさらに多い「SP450K1」に取り替えると、同様の傾向がさらに明確になり、高域の刺激が低減されて柔和になる。聴感上の良し悪しとは別の話だが、交換によって音に変化が生じるのは明らかだ。

製品を確認する鴻池氏

最後に、3つとも全て吸音材で、反射部の無い「SP450K0」を試す。高域の残響が抑えられて大人しく聞こえるが、音色は最も素直。実の所、吸音材は、薄いほど高域を、厚くなるに従って低い周波数を吸収する性質がある。傾斜を持つスローピーなら、特定の周波数のみを吸収してしまわず、広い帯域をバランス良く吸収する効果が期待でき、こうした特性が、「素直な音色」を維持できる秘訣だろう。

また、総合的な聴感で特筆すべきは、前方スピーカーの鏡像現象が低減されると、リアスピーカーに張り付きがちだった観客の歓声に距離感が生まれ、ホールに居合わせたかのような空気感、立体感をナチュラルに再現できることだ。反射板はそれ自体の響きで包み込まれ感をアップしてくれるのに対し、吸音は、音源に収録されている残響音によって、立体感が向上する印象だ。

今回述べた試聴感は、視聴室の特性に加え、スローピーの設置位置および枚数も含めた結果なので、全てのホームシアターで同じ変化が起こる訳ではないが、似た傾向の結果が得られるはずである。スローピーを用いればDIY感覚で手軽に作業できるので、自宅のリビングやシアター、スピーカーの設置場所、お気に入りのソフト、そして“好み”に応じて、気軽に「調音」にトライしてみて欲しい。

ブルーレイソフトや雑誌(A4変形サイズ)とのサイズ比較

■「スローピーはまさに家庭でピッタリの調音材」

調音材は使いこなしが重要だが、サラウンドの立体効果や音質の改善を狙うなら、1次反射面を重点的に対策すると良いだろう。その点スローピーなら、特性に応じて4種の部材を簡単に交換できるので、比較試聴でベストなタイプ、あるいは組み合わせを見つけるのも現実的だ。特に反射を目的とした拡散板は、縦と横でも効果が異なるが、マグネット貼り付けのスローピーなら、何度でも試行錯誤でき、自在に追い込むことができる。

ほか、家財の入っている一般的な家庭では、高域から低域までの残響時間は適正であることが多く、調音は「拡散」を重点的に行うのが定石。一般的な吸音材を投入し過ぎると、高域のが欠落してアンバランスかつ音質も悪く聞こえるので注意が必要である。その点スローピーなら、拡散材もラインナップし、吸音材も薄手で音を吸収し過ぎない。

総じて、使用枚数できめ細やかに調整することができ、インテリア面でもアクセントに。スローピーは、まさに、家庭でピッタリの調音材と言える。こうした特長は専門家の間でも多いに評価され、VGP2017金賞、HTG2017総合金賞を受賞するに至った。

先ずは数枚からでも使ってみて欲しい好製品である。

(特別企画 協力:コスモプロジェクト)

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