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「CONTOUR 20/30」を試聴

【レビュー】14年ぶりのフルモデルチェンジ、DYNAUDIOの新「CONTOUR」を聴く

2017/01/20 井上千岳
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「20」の音調はそのままに、低域再現に余裕を持たせたCONTER 30

CONTOUR 30は18cmウーファーを2基搭載したフロア型だ。2.5ウェイのスタガーではなく、2ウェイ・ダブルウーファーである。そしてこの音が、フロア型でありながらCONTOUR 20とほとんど違わない。

CONTOUR 30(右)とCONTOUR 20(左)

同じ2ウェイなのだから当たり前といえば当たり前だが、ダブルウーファーだとどうしても低音を欲張りたくなるものなのだ。部屋のサイズに合わせて低域に多少のボリュームを持たせようという意図もあるのだろうし、現に先行機の「S3.4」にもわずかながらその傾向が見られたものである。しかし本機ではそういう無駄な配慮はしなかったらしい。だからブックシェルフでもフロア型でも、驚くほど音は変わらないのだ。これが正しい設計である。

とはいえウーファーが2基であるため、負担は軽くなっている。だからよく聴くと、低域の再現性にいっそう余裕のあるのがわかる。ピアノの低音部はもっと無理がないし、タッチの芯がもうひとつ太くなっている。バロックではあらゆる音が均一だ。チェロが深い。バロックチェロの現代楽器とはやや違う音色が大変魅力的に引き出されているが、結局解像度が高いのである。チェンバロの華やかで瀟洒な軽やかさも、なんとも言えず快い。

オーケストラはエネルギーの乗り方が弾力的である。強弱の起伏が自由自在に伸び縮みするという印象で、どんな細かなトランジェットにも追随しているのが見えるようだ。よほど微小レベルの信号に損失がないのだと想像される。トゥッティの壮麗な響きは、まさにこうあってほしいという次元に達している。

ジャズも実にハイスピードである。トロンボーンが生々しく、ウッドベースやなどの低音は普段の倍ぐらいの音数が出ているようにさえ感じられる。あるいはボーカルは声の当たりが異様なほどリアルだ。表情が豊かに変化するし、肉質感が本当に人の声らしい暖かさと潤いに富んでいる。



ディナウディオの一番新しい音がこれだ。音がいいだけではない。いい音だということを感じさせないくらい、その出方には無理がない。スピーカーがいないのだ。これが本当の「いい音」なのである。その点で上級機をもしのぐ最先端の再現性を、この2機は獲得したと言っていい。底知れぬディナウディオの力である。

(井上千岳)

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