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「CONTOUR 20/30」を試聴

【レビュー】14年ぶりのフルモデルチェンジ、DYNAUDIOの新「CONTOUR」を聴く

公開日 2017/01/20 10:03 井上千岳
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ウーファーもこれまでのMSPコーンとは違う。コーンの厚さを外周部から内周部へ徐々に変化させ、均一ではなくしているのだ。強度を保ちながら質量を軽減し、レスポンスの速度を高めるのが目的で、Vari-MSPと呼ばれている。磁気回路はフェライトのデュアル・マグネット。ピュアアルミのボイスコイルをグライスファイバーのボビンに巻き、ピストン動作の範囲が格別に広い超ロングスローの設計としている。

ウーファーユニットにも改良が加えられ、新たにVari-MSPウーファーが採用された

以上は全機種に共通した特徴である。ラインナップはフロア型が3ウェイ・4スピーカーの「CONTOUR 60」、2ウェイ・3スピーカー「CONTOUR 30」の2機種、ブックシェルフ型が2ウェイの「CONTOUR 20」を用意する。

今回の記事では、取材時点(編集部注:昨年12月の正式発表直前)で実際に試聴することができたCONTOUR 30とCONTOUR 20を取りあげる。3ウェイのCONTOUR 60についてはミッドレンジが装着されていて多少仕様が異なっているが、CONTOUR20とCONTOUR30はいずれも18cmウーファーを搭載しており、使用ユニットに違いはない。

CONTOUR 20を聴いてあらためて実感した、ディナウディオの特別な存在意義

さてまずCONTOUR 20である。ブックシェルフ型としてはやや大きめのサイズだが、ウーファーが18cmなので容積を考えれば妥当である。かつてベストセラーとなった「Special25」に通じるイメージがある。

ブックシェルフ型のCONTOUR 20

この音を聴くと、あらためてディナウディオの特別な存在意義を感じる。ニュートラルで正確なスピーカーは今日それほど珍しくないが、ディナウディオの場合はそれだけではない。音楽そのものがそのまま再現されているような、自然な生命力といったものに気づかずにはいられないのである。鳴っている音楽が生き生きしている。正確で誇張や不自然さはなくても、その先にこれだけの表現力を備えたスピーカーはそうたくさんはない。そうした生命力を実感させる点で、ディナウディオはやはり最右翼と言えるように思う。

ピアノはタッチも余韻も実に澄んでいる。それが少しも無理ではなく、何でもないように楽々と出てくるところがツボである。ことに低音部の厚みと解像度が、これまでになく抜けきっている。ウーファーのスピードが利いているのだ。Esotar2という最上級のトゥイーターを搭載した以上、それに負けないだけの低域のスピードと情報量が必要だったのであろう。それを見事に実現した。だからこんなに全てが人工的でない、つまりスピーカーから音が出ているという感触ではない生きた音が出せるのである。

バロックもあらゆる音が生きている。純度が高い。ヴァイオリンやチェロなどのピリオド楽器は特有の艶と粘り、軽い輝かしさが現代楽器との違いと言っていいが、それがそのまま再現されている。濁りも棘もなく、生の演奏で聴いたのと同じ手触りでさっくりと描かれる。普段は目立たないリュートのような楽器でも、その音色がどうしてこうもいいのだろうとつくづく思ってしまうのだ。

オーケストラでもチェロやコントラバスなどの低音弦やティンパニーのタッチが、厚手でしかもきめ細かい。解像度が異例と言えるほど高いのだ。だから低音に量感があっても重苦しくならず、べったり塗り潰されてしまうこともなく、軽くきめ細かいのである。

次ページスピーカーの存在が消える、本当のいい音

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