独自開発のディスクリートDACを搭載

マランツ「SA-10」レビュー - 音の正確さとエモーショナルな表現力を兼備した旗艦SACD

山之内 正

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2016年10月26日
オリジナルDAC開発という難題に、マランツはあえて挑戦した

狙い通りの音に到達するための決定打となるのが、D/A変換処理をDSD信号とローパスフィルターの組み合わせというシンプルな構成に集約したことである。CDや外部入力のPCM信号はすべて前段でDSDに変換し、ディスクリートで構成した後段のFIRフィルターに受け渡す。後段のフィルターは基本的にアナログ処理となるため、変換プロセスが簡潔で音質劣化が起こりにくいうえ、ディスクリート構成なら、統合チップとは比較にならない大型の素子を使うなど、パーツを思い通りに厳選できるメリットも大きい。

アップサンプリングやDSD変換を行う前段の「MMM-Stream」は、デジタルボード内に配置されている

前段を構成するオーバーサンプリングとデジタルフィルターは2基のDSPで構成しており、こちらも設計の自由度は高い。DSDへの変換を11.2MHzまたは12.3MHzという高いサンプリング周波数で行うのは、もちろん音質を重視した結果だ。PCM信号に対して、デジタルフィルターの特性など4種類の変数を手動で切り替え、計24通りの組み合わせから好みの設定を選べることにも特徴がある。ちなみにDSD信号再生時は前段の回路をすべてパスし、後段のFIRフィルターに直接受け渡すので、信号処理のプロセスを最小に抑えることができる。

DSD信号をアナログ変換する後段の「MMM-Conversion」は、アナログボードに配置。DACの前後段の間には、デジタルアイソレーションを備えてノイズを排除する

良いことづくめに見えるディスクリートDACだが、あえて欠点を指摘するとすれば、回路規模が大きく、開発コストがかさむことに尽きるだろう。DAC後段以降のアナログ基板は汎用DACを採用した従来モデルに比べてかなり部品点数が増え、面積も大きくなる。一方その欠点を補って余りある音質が期待できるので、低価格機はともかく、フラグシップや上位機種ならメリットの方がはるかに大きいだろう。

開発に時間がかかるのはたしかだが、今回のプロジェクトは欧州マランツの経験豊富なエンジニアの発案に基づいて社内で独自に進められたもので、外部の企業には頼っていない。むしろ将来にわたって重要な資産となる技術を実用化することで、大きなアドバンテージを獲得したことに大きな意味がある。

そもそもDACの開発を自社で進められるメーカーは少数派だし、たとえ技術的には可能だとしても実際にはそこまで踏み込めない企業がほとんだと思う。そんななか、あえて難題に挑戦したマランツの姿勢は高く評価すべきだろう。

■マランツが目指す音の集大成。SA-10のサウンドをチェックする

入口から出口まですべてオリジナル技術で完成させたSA-10は、これまでマランツが目指してきた音の集大成ともいうべき完成度の高い再生音を獲得している。「SA-7S1」を置き換える新たな基準機というマランツの目標は、果たして狙い通りに達成することができたのか、実際の音を紹介しながら検証していこう。

“マランツ製”SA-10のサウンドをチェックする

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