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B&O PLAYのBluetoothスピーカー「A1」レビュー。新しい音楽の聴き方を見つけさせてくれるモデル

2016/07/22 中林直樹
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日常のさまざまなシーンに寄り添い
尽きせぬ音楽の楽しみを与えてくれるスピーカー



iPhoneやBluetooth機能を搭載したポータブルプレーヤーと接続。プレーヤー側のBluetooth機能をオンにし、A1のペアリングボタンを長押しすれば完了。まずは常にリファレンスとしている、オルタナティブカントリーバンド、パンチ・ブラザーズの『The Phosphorescent Blues』(8月の来日公演に合わせてようやく日本盤がリリースされる。邦題は『燐光ブルース』!)。

『The Phosphorescent Blues』パンチ・ブラザーズ

最初に聴こえてきたのは、勢いのある低域だ。ウッドベースが弾むように鳴り響き、その輪郭もぼやけない。ボーカルは伸びやかだが、歪んだり荒れたりすることもなかった。この印象はボリュームを絞っても変わらないから、たとえばベッドサイドに置いてリラックスしたいときにも重宝しそうだ。ポストクラシカルシーンの中心人物、マックス・リヒターの、その名も『スリープ』がおすすめだ。穏やかかつ緻密なストリングスが、ひたすらフラットな旋律を奏でる。聴くたびに心地よい眠りに誘われ、実際、最後まで目を開けて聴くことは困難……。

『スリープ』マックス・リヒター

また、付属のストラップを使えば、壁面のフックやドアノブなどに吊るして設置することもできる。家中のさまざまな場所に持ち運んで、さまざまな音楽を再生すると、それまで気づかなかった音楽の魅力や音楽との過ごし方を見いだすことができるかもしれない。

本体には革製のストラップが付いており、さまざまなところに吊して音楽を楽しむこともできる

僕が試して面白かったのは、ダイニングテーブルの対面する椅子の背もたれに掛けたとき。アルコールを飲みながら、肴をつまみながら、手元のiPhoneでささっと音楽をチョイス。すると、テーブルの周囲に柔らかな音場が現れた。食事の内容や時間帯に合わせて、音楽を変えてゆくもの楽しい。また、iTunesだけでなく、Apple MusicやGoogle Play MUSICなどのストリーミングサービスも利用すれば、再生コンテンツは無限に広がるだろう。

また、リビングの窓を開け放って、バルコニーに近い場所にセッティング(ただし本機は防水、防塵には非対応)。試聴したのは、気温が真夏日になろうかというお昼ごろ。ゆえに、なるべく涼しげな音楽を、ということでボサノヴァを選ぶ。最近アナログ盤も登場した、ヴィニシウス・カントゥアリアの『Vinicius canta Antonio Carlos Jobim~ヴィニシウス、ジョビンを歌う』。「SONG X JAZZ」という気骨溢れる日本のレーベルが企画した一枚だ。ビル・フリゼールや坂本龍一も参加。

『Vinicius canta Antonio Carlos Jobim~ヴィニシウス、ジョビンを歌う』ヴィニシウス・カントゥアリア

やはり、ここでもとろけるようなボーカルと軽快なギター、深みのある低音が聴ける。暖かい風が時折窓から入り込むのだが、サウンドがそれによって揺らぐことはなかった。音楽の骨格が乱れず、音場も淡くならない。続いて、モノラル録音のサンバやショーロなども聴き進める。そんなレトロな音楽もまた味わい深く、洗練されたイメージさえ漂い出した。次に、ロベルタ・サーの新譜『Delirio』も聴いてみよう。微笑みかけるような歌声が耳に心地よい。バックの演奏もブリリアントだ…。そんなふうに、あれこれと興に入っているといつの間にか夕陽が差し込みはじめていた。

『Delirio』ロベルタ・サー

いまや多くのBluetooth対応小型スピーカーが存在する。しかし、このように何時間にもわたって飽きずに一緒に過ごせるモデルは、果たしてどれくらいあるだろうか。華美な主張のない小さな筐体にも関わらず、そこからは音楽の面白さが次々と湧き出てくる。それは、A1に関わったエンジニアやデザイナーたちが、きっと彼ら一流のマジックを注入したからに違いない。そんなふうにも思わせる印象深いプロダクトである。

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