高橋敦が実力をチェック

あらゆる要素がハイレベル − JVC×ビクタースタジオのモニターヘッドホン「HA-MX100-Z」

高橋 敦

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2016年07月04日
ハイレゾ対応を果たしたスタジオモニター・ヘッドホン

ビクターとビクタースタジオの共同開発によって生まれたスタジオモニターヘッドホン「HA-MX10」は2011年2月に登場した。それから5年を経てJVCから登場したアップデート機が、この「HA-MX100-Z」だ。

HA-MX100-Z

外観からもわかるように、アウトラインというかフォーマットは初代「MX10」から順当に継承されている。「ビクタースタジオのトップエンジニアたちにスタジオのラージモニター・スピーカーと併用して違和感ないヘッドホンと納得してもらえる音を」という基本コンセプトにも変わりはない。

では今回のアップデートのテーマは何なのかというと、ご想像の通り「ハイレゾ対応」だ。

ビクターはグループにレコード会社もあり、自身でハイレゾ配信サイトも運営しているという、大手オーディオメーカーとしてはハイレゾに特に近しいメーカーのひとつ。その最上流が録音現場であるビクタースタジオだ。ならば、そこで使うモニターヘッドホンのハイレゾ対応が彼らにとって絶対のテーマとなることは当然と言える。

しかしだからこそ、彼らの求める「ハイレゾ対応」は「再生周波数帯域上限が40kHzを超えること」などではない。それはそれとして当然クリアするとしてその上でスタジオ側から求められたのは、

「豊かな高域の表現力」
「安定感のある中低域」
「高い解像力と忠実な再現力」

だったという。

ただ高域を伸ばしただけではバランスも崩れるし、ハイレゾの意義は高域側にだけあるものではない。結局簡単に言えば、求められたのは「全面アップグレード」だったということだ。

初代ドライバーをベースにボイスコイルを変更。サウンド・ディフューザーも最適化

ではそれに対してオーディオ側のエンジニアからの「回答」技術を見ていこう。

ドライバーユニットは初代の「モニタードライバーユニット」をベースに、ボイスコイルを「日本製高純度CCAWボイスコイル」に変更し、磁気回路は成型後に熱処理を加えることで成型時のストレスによる歪みを解消。それらによって全体的な解像感を向上させた。

ドライバーと耳の間に配置され空気=音の流れを調整する「サウンド・ディフューザー」は中心孔径を最適化。高域側の再生帯域の拡大のみならず、解像感の向上と音声の拡大という効果も得ているとのこと。

低域の量感を維持しつつこもりは解消しつつ抜けやキレは高めるという「クリアバスポート構造」は、「デュアル・クリアバスポート構造」に進化。ダクトを追加し、振動板前後の空気圧の制御をさらに最適化。低音再生能力をより向上させている。

ケーブルは直付けで着脱不可で、長さは想定用途に合わせて2.5mと長め。一方プラグは意外にもステレオ"ミニ"だ。

なお、本モデルは全数がビクタースタジオ指定の音源による72時間のエージングを経た後に出荷されるとのこと。

歌声が精細なホログラムのように、頭内の中心に立体的に浮かび上がる

聴き始めてまず強烈に印象的だったのはセンター定位のボーカルの音像のフォーカスの決まりっぷり! ボーカルがセンターに定位する。実に当たり前のことだ。それをできていないヘッドホンなんて滅多にない。

滅多にないのだが、当たり前のことだからこそ、当たり前ではないレベルのそれを見せられたときのインパクトは強い。頭内の中心に歌声が異様に精細なホログラムのように立体的に浮かび上がる。これはヘッドホンを構成するあらゆる要素がハイレベルな場合にのみ起きる現象、というか起こされる感覚だと思う。

実際、他の楽器や全体に意識を移してみると「あらゆる要素がハイレベル」なことを確認できる。

例えば高域側の解像感は、スネアドラムは裏面のスナッピー、共鳴弦のバズ感までの生々しさや、シンバルのざらつく質感などに顕著に表れている。中高域のキレはビンテージなリズムマシンのクラップ、手拍子を模した独特なサウンドの明るい抜けで実感する。

低音側の描写はモニター系として実に妥当だ。エレクトリックベースは膨らまずタイト。そして実にクリアでナチュラル。そしてこのベースもセンター定位だが、ボーカルと同じようにフォーカスが綺麗に決まっている。

ハイレゾ対応の意味を録音とオーディオの2つの立場から突き詰めた

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