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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第159回】パナソニックお洒落ヘッドホンの新旧“ 神7!”を対決させてみた

公開日 2016/06/29 10:00 高橋 敦
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■音質チェック

では音のチェック。両モデルとも、スマホ直結で使われることも多いモデルとは思うが、今回は限界性能を探るためにあえてハイエンドポータブル「AK320」からの送り出しを基本とした。とはいえ現実的なところの判断のため、iPhone 6でも確認した。

▼RP-HD7の印象の概要

RP-HD7は音も軽やかだ。薄っぺらい音なわけではなく、もさっとしがちな低音成分は綺麗にシェイプしてあるといった印象。一方で中高域は適度にシャープでクリア。例えばアップテンポのロックやポップスでも、その激しさよりはスピード感や爽快感の方をより強く届けてくれるタイプだ。どちらかといえばロックよりもポップスに合う、と言ってもよいだろう。音場にもさっと漂いがちな低音がすっきりと処理されているので、空間性も余白の確保されたすっきりとしたものとなっている。

▼RP-HTX7の印象の概要

…いやこれ全然いけるよね?見た目の通りにクラシカルな部分、例えば音場の左右の狭さとかはあるが、この価格帯のヘッドホンとしては当然程度のこと。音のこもり具合もクラシカルな密閉型っぽくて、これはこれで悪くない。中高域はクリアにすっと伸びるタイプではなく、少し荒めのアクセントが付く。中低域も底の方まで伸びはしないが、ベースの芯は太めにゴリッと出してゴツゴツとした迫力を出してくれる。ポップかロックかで言えばロックの方が得意そうだ。

概要はそんなところで、以下からは各モデルの具体的なポイントを説明していこう。

▼RP-HD7

まずはRP-HD7から。このモデルの音作りの巧みさは低音の処理だ。フラット志向ではなく低音を意図的に充実させる場合には、低音域の中のどの帯域を押すのかが極めて大切。クラブサウンドの重低音やウッドベースの空気感を出したいなら、低域の中でも特に低い帯域を強め、ロックやポップスのエレクトリックベースの存在感を出したいならミッドロー、中域に近い部分を強めてベースの基音をしっかり主張させる…のような話だ。

そして逆に軽やかさを出したい場合にも、「では低音をどう処理するのか?」がポイントになる。このモデルはミッドローまでは特にいじらず素直に出し、それより下は不自然にならない程度に控えめにしてあるといった印象だ。それによってベースライン自体は明瞭に届けつつ、ぼわんとした膨らみやもさっとした重みを回避し、軽やかな聴き心地を得ている。それでいて、空間がすっきりとしたことで細かな響きも見えやすいので、ウッドベースの空気感とかもそちらの意味では豊か。

中高域については、例えばシリコンファズフェイス期のジミ・ヘンドリクス氏のギターの硬質な抜け感の表現が見事だったり、しっとり系よりはややドライな音色、雰囲気との相性がよいと感じる。

▼RP-HTX7

軽やかな最新機HD7に対してRP-HTX7は、音の芯やアタックを強めに出してガツンとした迫力で攻めてくる。

先ほどの低音の話でいうとこちらはこれこそ、「ロックやポップスのエレクトリックベースの存在感を出したいならミッドロー、中域に近い部分を強めてベースの基音をしっかり主張させる」という音作り。一般的な4弦エレクトリックベースの4弦開放までの低さの音であれば、その音の芯をくっきりとそして太く押し出してきてくれる。

例えばベース主導のファンキーな曲にはぴったりだ。空気感を出すようなディープなローエンドは薄いが、そこを無理に欲張らないことでミッドローによるベースのくっきり感やゴツさはむしろ際立ち、全体としてのまとまりも確保されていると感じる。

中高域は、女性ボーカルの繊細さを堪能するには少し荒い。一方でジミヘン氏のギターのファズのエッジ感を楽しむにはよい感じだ。ファズの音色については抜け感よりも密度感が強まる印象もあり、ここにもHD7との個性の違いがある。なんにせよこれ、10年前のモデルで現在実売4200円なわけで、それを考えると十分すぎる実力だ。

なお、iPhone 6との組み合わせとAK320との組み合わせでより大きな違い、後者の方での向上をより大きく感じられたのはHTX7の方だった。潜在能力の絶対値としては時代的にも価格帯的にも不利であるし、そこが逆転するわけではないが、伸び率としてはそう感じた。

考えられる理由としては、最新機であるHD7は当然スマホを想定して設計されているのに対して、10年前のHTX7はCDにせよMDにせよiPodにせよ、音楽専用機との組み合わせが当然の前提。その違いかもしれない。

■まとめ

…ということで今回は「RP」の「7」、RP-HD7とRP-HTX7というパナソニックヘッドホン最新モデルとロングセラーモデルを紹介させていただいた。どちらもその時代や価格帯という条件下でファッション性とサウンドを見事に両立。好感触だ。

その上で改めて特に評価したいのは定番HTX7。長年の基準となるハイエンドフラグシップでもなく、それどころか流行り廃りのど真ん中にいるファッション系ヘッドホンが、10年もモデルチェンジなしで作られ、続け売れ続けているのだ。

昔も今もこのモデルを選ぶユーザーは絶えず、それを受けてメーカーも、「今もこのモデルを選んでくれている人が少なくないのならいたずらに廃番にしたりモデルチェンジしたりするべきではない」という賢明な判断をしてくれていたのだろう。

その継続性、変わらない魅力、変えないからこその魅力を讃えたい。とはいえ10周年なので、10周年記念限定カラバリとかくらいは出してくれてもいいんだからね!

高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi
趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。


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