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ミックスの価値観が変わるサウンドのヘッドホン

ミュージシャン/エンジニアが本音で語る、オーディオテクニカ「ATH-R70x」を選んだ理由:MEG(ex.ARTEMA)の場合

公開日 2016/05/24 13:40 MEG(ex.ARTEMA)
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オーディオテクニカが変えたミックスの価値観

私はロック、ヘビィメタルなどのラウドミュージック、EDMなどのクラブミュージックをメインに仕事をしており、特にサウンド面ではアメリカのラウドロックなど、骨太なサウンドが昔から大好きでした。
しかし、どう試行錯誤しても大好きな骨太サウンドに近づけることができず悩んでいた時、とある知人から「アメリカのラウドロックやクラブミュージックをオーディオテクニカのヘッドホンで聴くと、アメリカの人がどういう意図でミックスしているかが良く分かる」と言われました。

音には強いこだわりを持つMEGさんは、これまでにもさまざまな最新機材を導入。その過程で出会ったオーディオテクニカのヘッドフォンはミックスの価値観を変えるほどのものだったという

そこで半信半疑で定番のATH-M50xを聴いてみました(その時の試聴ソースはニッケルバックの「ディス・ミーンズ・ウォー」)。
一聴して私は「いままで何を聴いていたんだろう…」と驚愕しました。いままで聴いてきたヘッドホンと圧倒的に違ったのはグルーヴ感で、いつも聴いていた曲が別曲にすら聴こえたのです。とにかくリズム隊の低音が気持ち良く、ドラムスのキックとベースのリズムの絡み方や音色、帯域の棲み分け方が一目瞭然で、なおかつ迫力もすさまじい。低音はしっかり出ているにもかかわらず膨らみはなく、タイトな低音なので全体もくっきりしている。私はそこで初めて、「この曲はこういう低音の出し方をしていたのか。アメリカの音源の低音はこういうメカニズムだったのか」ということを知りました。

衝撃を受けた私は、その後ATH-M50xを即購入し、ATH-M50xがメインのヘッドホンになりました。
他のヘッドホンからの移行にはもちろん慣れが必要なのですが、一度慣れてしまえばM50x以外のヘッドホンでは満足できないほどしっくりハマったのです。
それからはミックスの手法を一から見直し、その結果自分の作りたい音が作れるようになっていきました。そしてR70xに出会い、さらなる視野の広さを獲得できました。
もちろん好みの問題という前提の話しですが、自分に合ったヘッドホンと出会うというのは本当に大切で重要なことなんだと思い知らされました。

アメリカでオーディオテクニカのシェアが多い考察

よく聞く話ではあるのですが、日本の音楽はメロディを重視し、楽器を沢山重ねハーモニーを構築していく傾向があり、反対にアメリカの音楽はリズムを重視し、無駄をとにかく削ぎ落とししていく傾向があるそうです。
その違いは恐らく音楽教育にあり、日本はクラシック、アメリカはゴスペルがもとになっていることから、沢山の楽器を重ねハーモニーを作り出す日本と、身体でリズムを刻みながらみんなで歌うアメリカというように、同じ音楽でも作り出される音楽の傾向や、トラックの特徴が違うのではないかと思います。
それはヘッドホンも同じで、リズム、グルーヴ感が分かり易いという理由でオーディオテクニカのヘッドホンはアメリカでのシェアも多く、支持されているのだと思います。
音楽ジャンルや、アーティストが音楽制作をしている国など、そういう側面からもヘッドホンをセレクトしてソースによって使い分けると、新しい音楽の聴き方、触れ合い方が楽しめるのではないかと思います。


MEG(ARTEMA)
Profile 2011年1月に結成したラウドロックバンド ARTEMA(アルテマ)のヴォーカリスト。2012年12月に1stアルバム『ARTEMA』(ワーナーミュージックジャパン)でメジャーデビュー。以降、SCREAM OUT FESTや激ロックFESなどの大型イベントにも出演し、シーンの第一線で活躍し続けている。


ARTEMAの最新アルバム『ARTEMATE PARTY』(WPCL-12169/¥2,300)も好評発売中!
レコーディング&ミックスエンジニアとしての顔も持ち、これまでさまざまな作品を音楽制作面からも支えてきた。音楽制作にとって機材にこだわることも重要というポリシーのもと、音楽表現のためのレコーディング&ミックススタイルを日々追求している。

アレンジャーとしても活動し、最近はBABYMETALの最新アルバム『METAL RESISTANCE』に収録されたシンコペーションの編曲とサウンドアレンジの担当をはじめ、アニメやゲーム作品への楽曲提供など幅広い分野で評価を獲得している。なお、ARTEMAは2016年5月20日(金)のClub Asiaでのライヴを最後に解散。今後はクリエイター/エンジニアとして活動していく。




【本レポートで組み合わせた機材】
再生アプリケーション(DAW): AVID ProTools 12.4
オーディオインターフェース:AVID HD I/O、RME Fireface UFX
AD/DAコンバーター:GRACE DESIGN m904 Mastering Edition (I/OとはAESにて接続)
マスタークロック:TASCAM CG-1000

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