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ゼンハイザー「CXシリーズ」を聴く(2)

ゼンハイザー「CX 5.00」レビュー。CXシリーズ最上位モデルの実力とは?

公開日 2016/05/17 11:52 高橋 敦
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では音の印象を述べていこう。まずは今回一斉に試聴した各モデルの特徴をざっくり一言ずつ紹介した上で、このモデルの印象について詳しく書いていこうと思う。

●CX 5.00|目立つ主張をあえてしない本当に上質な音
●CX 3.00|鋭さや太さをしっかり届ける明快な高音質
●CX 1.00|低域控えめだが高域の綺麗さは上位に肉薄

他のモデルのレビューでも述べているが、そもそもこのシリーズ全体が、名門ゼンハイザーの入り口となるエントリークラスにふさわしい正統派の音色やバランスを基調としている。他のモデルの個性もあくまでも、その正統派の音色やバランスを崩さない範囲での話だ。そしてこのシリーズのトップモデルとなれば、これはもう「正統派の音色やバランス」そのものだ。

さっと聴いた感じでは、「これ3.00よりベース太いのでは?」のように感じるかもしれない。たしかにベースの存在感もかなりしっかりしている。だが、「3.00」はベースの太さを感じさせる帯域を少し強調することでその太さを感じさせている。対してこの「5.00」はベースという楽器の音色の広がり、その帯域のより深く低いところまでを、そして上までをバランスよくフラットに再現することで、太さだけではない総合的な存在感を濃くしている。そういった違いがある。

もちろん、できるのであればこの「5.00」のような中低域の表現がベターだ。ただ「限られたコスト」で「わかりやすい太さ」を得るという観点からは「3.00」の音作りもまたベター。そして再現性ということにこだわらないのであれば、どちらの表現が好きかはまさに好み次第だ。ここはシリーズ内での役割分担、個性の住み分けがうまくできているとも言えるだろう。

花澤香菜『こきゅうとす』

相対性理論「たまたまニュータウン (2DK session)」や花澤香菜さん「こきゅうとす」を聴くと、女性ボーカルやシンバルの高域、そのシャープな成分はこのモデルもシュッとキレよく、それでいて耳障りな刺さり方などはしない、まさに上質な感触だ。その感触自体は「3.00」と同じ方向性だ。ただ中低域の充実のおかげか、全体のバランスとしてはその高域をあまり際立たせない。それが「目立つ主張をあえてしない」という印象や中低域、ベースなどの方が少し強い印象につながるのかもしれない。

というと微妙な印象?と思ってしまった方もいるかもしれないが、つまりこれ、オーディオの世界で伝統的に理想のひとつとして言われている「どっしりとしたピラミッド型の帯域バランス(▲)」ということだ。これぞまさに「正統派の音色やバランス」なのだ。

エントリーシリーズの頂点である本機の音作りを正統派にしていること。そこにゼンハイザーの伝統、その意思表示を感じるのは、考えすぎだろうか。

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