HOME > レビュー > 【レビュー】ソニーのDSD録音対応レコードプレーヤー「PS-HX500」使い勝手と音質を検証

DSDアーカイブの使い勝手もチェック

【レビュー】ソニーのDSD録音対応レコードプレーヤー「PS-HX500」使い勝手と音質を検証

2016/04/05 山之内 正
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
ティツィアーティ指揮スコットランド室内管が演奏したハイドンの交響曲第101番は、リンレコーズが昨年発売した特別仕様のレコードだ。45回転盤なので片面に15分程度しか入らないが、音の鮮度の高さは折り紙つき。最新のデジタル録音のメリットを活かせば、レコードでもここまで立体的な音場が再現できることを実証した優秀盤だ。PS-HX500で聴くメヌエットは、かなり速めのテンポで弾むような動きを引き出しつつ、弦の音色はあくまで柔らかく、空気をたっぷり含んだ豊かな響きを実感することができた。

ソニーの試聴室に設置されたPS-HX500

もう一度旧録音に戻って、フォーレのレクイエムを聴く。クリュイタンス指揮パリ音楽院管弦楽団の演奏で、「ピエ・イエズ」の独唱はアンヘレス、1962年にパリの教会で録音された名盤だ。これも何度となく聴いた録音だが、教会の奥行きの深さを引き出す本機の音は、かなり水準が高い。そして、ピンポイントに浮かぶ声のイメージがリアルで、高音の澄んだ音色に思わず引き込まれる。50年以上前の録音だが、その時間の隔たりを忘れさせるほど、声は瑞々しさをたたえている。ブレのない音像定位と純度の高い音色は、ストレートアームの長所だろうか。

レコードのDSDアーカイブを試す。絞り込まれた編集機能でシンプルな操作

次に、レコード音源のデジタル化を実際に試してみよう。本機のUSB出力をパソコンにつなぎ、専用の録音&編集ソフト「Hi-Res Audio Recorder」を起動。本機のフォノイコ出力をA/D変換してUSBで伝送し、パソコンで保存する仕組みだが、あらかじめPCMまたはDSDから録音形式とサンプリング周波数を選ぶこと以外に面倒な設定はいらず、操作のハードルは低い。

「Hi-Res Audio Recorder」を起動して、まずは録音する際のフォーマットを選択

機能は非常にシンプルで、まとめてキャプチャーした後にトラックを分割したり、不要な部分をカットする操作はすべて波形を表示しながら手動で行う。波形の表示スケールは2段階のみだが、拡大モードを選べば、トラック分割用マーカーをきめ細かく設定でき、針を落とした箇所から曲が始まるまでの部分だけをカットするなど、細かい編集作業もストレスとは無縁だ。

レコードを録音しているときの画面

こちらは録音済み音源のトラックを分割しているところ。波形を表示して手動で行う

トラックごとにファイルを分割したら、次に曲名やアーティスト名などのタグ情報を手動で入力する。そこで一つ感心したのは、タグ情報として指定した曲名をそのままファイル名として保存できる機能が使えることだ。パソコンで音楽データを管理するときはファイル名だけで曲の中味が判断できたほうが便利なので、この一括変換機能は実用性が高い。なお、録音中のモニターは本機のライン出力のほか、PC側でも行える。DSDを選んだ場合もモニター音はPCM変換して再生するが、もちろん実際のファイルはDSDで録音される。

曲ごとに分割したファイルに曲名を入力

CDのリッピングとは異なり、レコードの場合は録音中にスピーカーから音を出すことで音が変わる可能性がある。スピーカーの音圧でアームやターンテーブルが共振し、その影響がカートリッジを介して音楽信号に影響を及ぼすことがあるためだ。再生環境の影響があるかどうか、条件を変えて録音した音を実際に聴き比べてみると、たしかに違いが聴き取れる。ただし、予想に反して、スピーカーから普通の音量で音を出しながら録音したときのほうが、むしろ音の鮮度や実在感が上回っているように感じた。

次ページ再生時の環境がDSD録音の音質に敏感に反映される

前へ 1 2 3 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE