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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第132回】高橋敦の“オーディオ金属”大全 − 音と密接に関わる「金属」を知る

2015/08/28 高橋 敦
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■音質と密接な関わりを持つ素材「金属」を高橋敦が1万7千字くらいで語る

以前に「オーディオ木材大全」という大袈裟なタイトルの記事を書かせていただいた。

"オーディオ木材"大全〜音と木の関係をまるごと紹介
 →記事はこちら

その表向きの目的は「木材はオーディオ機器でも多用されるのに、その樹種や製材方法といった基礎知識のオーディオ向けまとめ情報が見当たらないので自作してみた」というものだったのだが(表向きでない本当の目的は単に僕の趣味)、今回取り上げる「金属」は、木材と比べればオーディオファンからの関心もすでに高い気がする。

とはいえ、それを「ケーブルの導体として」とかに限定せずに、もっと広い観点からまとめて説明している情報はやっぱりあんまり見かけない。「勝てない土俵には上がらない。誰にも勝てないから、誰もいない土俵にしか上がりたくない」という強気な姿勢を心がけている僕としては、この極めて安全そうな土俵には上がっておくべきだろう。やってみよう、「オーディオ金属大全」を!

というわけで、今回は音質とも密接な関係を持つ“金属”の世界を探求

木材大全において「一口に木材と言ってもその種類は膨大で、それぞれ異なった特性を持つ」と述べたが、金属の場合も種類は膨大だ。木材と違って自然素材ではないので、生育環境やら個体差やらは考慮しなくてよい。しかし例えば「合金」の存在などによって、その種類、可能性は木材と同等以上に広く深い。今回もその全てを網羅することは不可能だが、とりあえず押さえておきたい基礎知識をできるかぎりまとめていきたいと思う。

なお木材の際には楽器、建築、家具等の本やサイトを参考にさせていただいたが、今回も楽器、電気一般、自転車等、幅広い分野を情報源とさせていただいた。感謝。

<もくじ>
■オーディオ素材としての金属の決定的な特徴
■金属素材でポイントになる主な特性
■純度と合金
■オーディオで使われている主な金属
■メッキ/アルマイト加工
■加工方法


■オーディオ素材としての金属の決定的な特徴

さて最初に、オーディオ機器の素材として考えた場合、金属には木材とも樹脂とも他の何とも決定的に異なる特徴がある。それは金属(の一部)はオーディオにおいてアコースティックとエレクトロニックのどちらにも利用可能であり実際に利用されているということだ。アコースティックというのは「物理的な」「フィジカルな」みたいなことで、エレクトロニックはそのまんま「電気的な」だ。例えば、

●金属のアコースティックな採用例
・各種機器の筐体 これは電気的な意味も持つ場合がある
・スピーカーやヘッドホンの振動板


●金属のエレクトロニックな採用例
・ケーブルや端子、基板上の配線等の導体
・各種機器の筐体 グラウンドやシールドの意味合い


といった感じ。木材や樹脂は特殊なものを除いては導電性を持たないので電気回路等にはほとんど利用されない(絶縁体としては普通に利用される)。電気回路において主な素材として利用され電気的な特性が重視される場面も多いことは、金属ならではのポイントと言えるだろう。

次ページ金属素材でポイントになる主な特性

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