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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第122回】ハイレゾ全曲レビュー:TM NETWORKの名盤「CAROL」の聴きどころ徹底解剖

公開日 2015/04/13 11:54 高橋敦
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当時の彼らの真意はさておき、推測できることはある。アナログからデジタルへの過渡期ということは、アナログ録音のノウハウは最大に充実しており、対してデジタル録音のノウハウはまだまだ不足していたはずだ。アナログ録音での制作技術は当時まさに最盛期であり、デジタル録音での制作技術はまだ黎明期。そこでアナログを選ぶことは、作品のクオリティを追求するならば当然だったのかもしれない。

また彼らがその判断をできたのは、彼らが最新の音楽技術に常に積極的だったからこそなのではないだろうか。だからこそ逆に、最新のデジタル録音がその時点ではまだ総合的な環境としては未熟であることも察知できた。そんな推測もできる。

なお1982年においてデジタル制作され音質的にも高い評価を受けているドナルド・フェイゲン氏「The Nightfly」等の存在もあるが、それらは「何事にも例外的な化け物は存在する」という扱いでよいだろう。

ともあれ彼らは本作においてはアナログ録音環境を選び、ロンドンの名門Air Recording Studiosに一流ミュージシャンを集めての制作を行い、この作品を完成させた。そしてそのことが現在の僕らにも大きな幸運をもたらしてくれたのだ。

まずアナログ制作環境の最盛期、そのクオリティが当時の日本のポップスの最先端であったTM NETWORKの音源としてここに残されたということ。

そしてもうひとつ、それがアナログで制作されアナログマスターテープとして完成され残されていたことで、文句なしのハイレゾ化が実現したことだ。本作がデジタル録音で制作されていたら、そうであったらいまあるものとは別の作品になっていただろうし、当時のデジタルテープレコーダーの仕様である44.1kHz or 48kHz/16bitのフォーマットでしか残されていなかったことになる。それはハイレゾ化において大きな不利になっていたことだろう。

moraの「CAROL -A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991-」ハイレゾ配信ページ

必然だったのか幸運だったのか、1988年の名作「CAROL -A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991-」は、2014年に最高のハイレゾ作品として再びの衝撃を与えてくれることになったのだ。結果その音質においては、僕所有のCD盤との比較では(他のバージョン、他のマスタリングがどうなのかはわからないが)、どこがどうではなくて何もかもが向上している。

では以降はまず、収録曲順に沿っての全曲レビューをお届けしていこう。なお本作の曲順はLP盤のみ異なり、このハイレゾ版はCDやカセットと同じ曲順となっている。

次ページいよいよ本題! CAROL全曲レビュー

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