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連載:藤岡誠のオーディオワンショット

【第7回】MCカートリッジ出力のバランス伝送・昇圧方式への誘い<4>対応昇圧トランスのお薦め製品

公開日 2015/03/30 14:14 藤岡 誠
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■私のお薦め製品

お薦め<1>TECHNICAL BRAIN「TMC-Zero」

さて、バランス伝送対応昇圧トランスの製品数は極めて少ない。私の知る限り民生用というか、ハイエンドオーディオ用として世界的で初めて登場したのがテクニカルブレーンの「TMC-Zero」(¥548,000・税別)ではないだろうか?

TECHNICAL BRAIN「TMC-Zero」

これはバランス伝送対応昇圧トランスの、まさにハイエンド用として自信を持ってお薦めだが、価格を考慮すると広く皆さんにお薦めすることに躊躇はある。しかし、“金に糸目をつけずバランス伝送対応昇圧トランスの最高峰を使う”という人にはお薦めだ。現時点でこれを超えるポテンシャルを持つ製品はないと思っている。

入出力はすべてXLR端子(2番HOT)だが、XLR-RCA変換コネクター(XLR部は1番と3番をショート)が付属するからアンバランス伝送・昇圧・出力も可能。

背面端子部

価格が高い理由は明解で同社のカタログには次のようなポイントが書かれている。「大型スーパーパーマロイコアの一次巻線に極太(0.8mm 平角線)を採用」「トランス自体を筒型のスーパーパーマロイ製ケースに密封し高SN比を確保」「外部振動遮断のためトランスをシールドケースごとフローティング」、さらに「アルミブロックから削り出した重量級ケースを採用」とある。なお、本機TMC-Zero EXは次回に紹介する同社のフォノEQアンプとの組合せが理想だ。

お薦め<2>Phasemation「T-500」

次に、私が『MCカートリッジ出力のバランス伝送・昇圧(増幅)方式』を推進するきっかけとなったフェーズメーションの「T-500」(¥90,000・税別)を当然お薦めする。テクニカルブレーンと比べればぐんと身近な価格だから推薦する私にも何となく安堵感がある。

Phasemation「T-500」

トランスは78%スーパーパーマロイのコア材(0.2mm厚)のEI型で、一次側0.32φ、二次側0.12φという十分に太い銅線を特殊な分割巻きで巻き上げて挿入損失の低減に成功している。一次側(入力側)には中点を設けて二次側(出力側)のマイナス側を接続。これによってMCカートリッジの発電コイルから見ると完全バランス接続・昇圧となる。

内部にセットされた左右2個のトランスは1mm厚の遮蔽板でシールド。トランス自体は緻密な発泡ポリエチレン素材でケースから電気的にも機械的にもフローティングされている。

背面端子部

入力はXLRとRCA端子を装備。出力はRCA端子だ。直近に位置するアース端子はXLR入力端子の1番とケース内部で直接コンタクトされ、それは同時にシャーシアースでもある。出力がRCA端子だから普通のフォノEQ、EQ機能内蔵プリメインアンプなどとの組合せが自在。


そしてこの5月頃にはオルトフォンが「ST-90」というバランス伝送・昇圧対応の製品を発売予定している。そのプロトタイプを先日に試聴したがこれもお薦めである。発表前なので詳細は避けるが、外観はこれまでの「ST-80」のイメージに共通。価格は10万円前後を予定しているようだ。

お薦め<3>MY Sonic「Stage 1030」

以上のバランス伝送対応昇圧トランスは入力側にXLR端子を装備するタイプだが、最後にRCA入出力専用型を簡単に紹介しておこう。それは超低インピーダンスのMC型カートリッジで有名なMY Sonic(マイソニック)の「Stage 1030」(¥300,000・税別)である。

MY Sonic「Stage 1030」

ご存じの方も居られようが、これは前作「Stage 302」の後継モデル。一次側(入力側)に配された“フローティングセレクター”と呼ぶ専用スイッチでアースラインの接続をOFFすることができ発電コイルの出力は完全にフローティングされバランス伝送・昇圧機能を持つ。プレーヤーシステムからのフォノケーブルがRCAプラグで出力される、例えば、かつてのヤマハのプレーヤーなどでは手間を掛けることなく使用することができる。

ただ、Stage 1030は2009年の発売。最近のバランス伝送対応フォノケーブルの品種の増加や、ここでいうところのコンセプトからいえば、これまでのRCA端子に加え、入力(一次側)と出力(二次側)にXLR端子を装備するべき時代になったように私は思うがどうだろうか? そうすることによってStage 1030のポテンシャルは拡張され、バランス伝送対応フォノEQアンプ、プリアンプなどへの対応範囲が拡大されることになる。




【筆者プロフィール】
<藤岡 誠>
大学在学中からオーディオ専門誌への執筆をはじめ、40年を越える執筆歴を持つ大ベテラン。低周波から高周波まで、管球アンプからデジタルまで、まさに博覧強記。海外のオーディオショーに毎年足を運び、最新情報をいち早く集めるオーディオ界の「百科事典」的存在である。歯に衣を着せず、見識あふれる評論に多くの支持者を得ている。各種の蘭の他、山野草の栽培も長年に亘る。

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