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アップデートで使い勝手がさらに向上。ECLIPSE「TD-M1」“現在の実力”を検証

公開日 2015/02/04 11:41 高橋敦/折原一也
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■正確な音を再現するECLIPSEの思想とは?

TD-M1のサウンドは、細部に至るまで高い完成度を誇っているが、その設計思想の根本には「タイムドメイン理論」がある。詳しく説明するととても長くなるので、そのポイントを手短に説明しよう。


ECLIPSEのスピーカーにおけるインパルス応答の再現のイメージ図
多くのスピーカーやオーディオ機器は音の周波数特性、つまり低音から高音まで幅広い高さの音をより均一に再生することを指標に設計されているという。対してタイムドメイン理論でいちばんの指標となるのはインパルス応答だ。

インパルスを理論上で言えば、音が出た瞬間にマックスまで立ち上がった音が、消える時もスパッと瞬間的にゼロに立ち下がる信号のこと。ざっくりと言えば「究極に速いアタック」を持つ信号だ(前述のように立ち下がりも究極に速い)。一般的なスピーカーシステムではこのインパルス応答を正確に再生することは難しい。つまりインパルス応答が悪いのだという。アタックがブレてだぶったり遅れたりして、波形が崩れるのだ。


富士通テン本社内の試聴室にて、TD510ZMK2やTD725SWMK2の視聴も行った
インパルス信号というのは実に極端な波形で、オーディオ試聴において実際に再生する機会はまずないだろう。しかしインパルス信号という「究極に速いアタック」の忠実再生を実現できたならば、他のあらゆる信号のアタックにも余裕で対応できるわけだ。つまりインパルス応答を高めれば、どんな信号も、どんな音声情報も忠実に再生できることになる。それがタイムドメイン理論だ。

TD-M1を含めたECLIPSEのスピーカーはそのタイムドメイン理論に則り、インパルス応答を高めることに特化している。特徴的な卵型のハウジングも、その内部に設置された頑強な土台にドライバーをがっちりと固定する手法も、ドライバーを極限まで速くぶれなく動かすことを最重要視してのことだ。その成果は、先ほど述べたような空間と音色の再現性として実際に体感できる。このあたりはTD-M1に限らずECLIPSEスピーカー共通の設計思想であり音の特長だ。今回の取材ではECLIPSEのパッシブタイプ・スピーカー「TD510ZMK2」も試聴したが、より大型の本機でもこの空間と音色の再現は同じく体感することができた。

■NOS-DACの採用で“正確な音”をさらに追求する

TD-M1の場合はDACも搭載しているが、ここにもインパルス応答重視の姿勢が表れている。「NOS(Non Over Sampling)-DAC」という回路構成だ。


右チャンネルのスタンド部にデジタルアンプやDAC、Wi-Fiモジュールを搭載している

TD-M1のデジタル基盤。NOS-DACもここに配置されている
デジタル音声信号をアナログ音声信号に復元する処理の際、その最終段付近では折り返し歪みや相互変調歪といったノイズ成分が、超高域に生まれてしまう。超高域なので人間の耳にはほぼ感知されないものなのだが、多くのDACでは念には念を入れ、フィルターでこのノイズをカットする。具体的には「オーバーサンプリング」処理によってその超高域ノイズをさらに超々高域に追いやった上で、その部分をカットする「フィルター」を通してノイズ成分を除去している。一般的にはこの方法で問題ないとされている。

しかしインパルス応答の観点から見ると、オーバーサンプリングとフィルタリングは波形の立ち上がりを鈍らせる要因となり得るという大問題がある。ほとんど感知されないノイズの除去と波形の立ち上がりの最大限の確保。そのどちらを取るかとなったとき、TD-M1の設計思想からすれば後者となるのは当然だ。そこでTD-M1はオーバーサンプリングを廃したNOS-DACを採用している。ちなみにスマホアプリからはオーバーサンプリングをあえてオンにする設定も可能。その効果、意味合いを実際に体感してみることもできる。

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