HOME > レビュー > フィリップスのオンイヤー型ヘッドホン“Fidelio”「M1MKII」を中林直樹が聴く − 定番モデルがグレードアップ

ボイスコイルを軽量化してレスポンスを向上

フィリップスのオンイヤー型ヘッドホン“Fidelio”「M1MKII」を中林直樹が聴く − 定番モデルがグレードアップ

公開日 2014/11/21 10:30 中林直樹
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
このヘッドホンで聴くと、アコースティック楽器特有の自然な響きがたっぷりとあることに気づく。しかも、単に余韻成分が多いだけではなく、ギターやチェロ、ピアノなどの楽器の芯をしっかりと感じることができた。音場は広いが音はぼやけない。「サビアー」はジャキスの奥方であるパウラがボーカルを担当する。彼女の声の溌剌とした輝きと、しっとりとした憂いというアンビバレントな両側面を味わうことができた。気鋭のピアニスト、澤渡英一はこのアルバムで持てる才能を思う存分発揮している。主役の2人の後ろで非常にニュアンス豊かな音を繰り出しているのだ。間の取り方、タッチの強弱など音の数は少ない(敢えてそうしているのだろう)が、このヘッドホンでも澤渡の情緒あるプレイは耳に残った。

“BO”カラーは、ケーブルまでオレンジで統一されている

M1MKIIはアナログレコードの魅力も引き出してくれる

沖縄、ブラジルと来て、最後に英国の音楽に耳を傾けてみよう。とは言ってもブリティッシュロックではない。イングランドで古くから歌い継がれている伝承音楽を21世紀的感性で甦らせるサム・リーの作品である。昨年発表された『Ground of Its Own』のアナログ盤をタイミングよく入手できたので、M1MKIIで聴いてみることにした。

サム・リー『Ground of Its Own』(PLANKTON・アナログ盤)

第一に感じたのは、彼のボーカルがCDで聴くよりも濃密になったことだ。コクが出たと言っても良いだろう。ホーンセクションにも厚みがあるが、決して粘つくわけではない。そんなアナログならではのテイストも表現した。ここにはアコースティックギターやフィドル、ドラムス、チェロなど実に多くの音色が息づいている。楽器たちそれぞれの響きはもちろん、音の揺らぎまでもがひとつの音楽を織り上げていることに気づかされた。そして、アーティストの音楽世界にぐいぐいとリスナーを引き込む。

コンパクトで軽量、カジュアルな佇まいながら、M1MKIIはそんなパワーを秘めている。回転するブラックディスクを眺めながら、そんなことを思うに至った。

前へ 1 2 3

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

トピック: