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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第99回】にわかに活気づく “平面駆動ヘッドホン” 注目3機種聴き比べ!

公開日 2014/09/26 16:23 高橋敦
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■“満を持して感”を漂わせて登場した、フォステクスの新モデル「TH500RP」

1974年に日本初の平面駆動型ヘッドホンを発売したというフォステクスから「満を持して!」感を漂わせて登場の新モデルだ。ポリイミドフィルムをベースに銅箔エッチングした「RP(Regular Phase)振動板」を搭載し、その特性を引き出すべく全体をチューニングしたとのこと。

その他の概要は正式発表時の以下の記事でチェックしてほしい(ただし発売時期は当時の予定より延期されている)。

フォステクス、平面駆動ヘッドホン「TH500RP」を8月下旬に発売
http://www.phileweb.com/news/d-av/201407/29/35339.html

本記事では実機の写真を中心に説明していこう。

デザイン性よりも本質的な機能性を優先したと思われる、無骨な外観

発表会の模様。モデルさんの美人度の高さからもフォステクスの本気が伝わってくる


どう見ても完全なる開放型。開放型を採用した理由も今回の平面駆動型ドライバーとの相性を考慮してとのこと

イヤーパッド表面はソフトレザー調素材。厚みがあり形状も工夫されており、大型ヘッドホンでありながらふわっとした装着感


バンドの長さ調整およびヒンジ部。ここの精密なカッチリ感が円形のハウジングに対してのアクセントになっている

ケーブルは着脱式ではなく直付け。太いが柔軟性は確保されている

音を聴いての印象をまずは簡単にまとめると、何というかこれが実に「呆気ない」ことに驚かされた。もちろん悪い意味での呆気なさではない。極度に自然というかさりげないというか、癖や力みがなく「さらり」としていて「すっ」としている。強いて硬軟と剛柔で言うならば柔軟系ではあるが、やわすぎることはない。何というか合気道の達人のような印象だ。こちらが気負って聴き始めたらさっと受け流されて転ばされて、肘やら手首やらを極められた気分。力みや澱みがない。

まあ楽しみはあとにとっておくとして、まずは強いて言えばの弱いところを挙げておこう。重厚さや濃密さや硬質さは際立たせないので、ハードタッチやヘヴィグルーヴの表現は、特段に得意ではないかもしれない。ぐいぐいゴツゴツ推進するベースとか、ぎゅっと密でエッジの立ったディストーションギターとかは、ハイエンドヘッドホンに求められるものを満たす高水準ではあるが、最高水準ではない。そこ重視ならそれをもっと得意とするヘッドホンは他にある。

しかし、一方で細やかな表現や空間の広がりの良さは、「これが平面型で開放型な強みだ!」という説得力に満ち溢れている。例えばポップスで刻まれるハイハットシンバルは、刺さるような鋭さではなくほぐれた鈴鳴りを感じさせる。女性ボーカルもほぐしつつ、それでいて刺す成分も十分にしっかりと生かす。主要パートの演奏の背景に散りばめられたシンセサイザー等での細かな装飾の描き出し方等も巧み。矛盾しているような気もするが、「ソフトフォーカスなんだけれど高解像度」とでも言いたくなる雰囲気だ。

また音の感触は柔らか傾向だが、しかしもっさりとはしておらずリズムは軽やか。前述した「重厚さを強くは感じさせない」というのも、低音まで含めて全体がフラットに整っていること、そして広がりが豊かであるため相対的に、厚みは強調はされないということだろう。

次ページ“初めてのヘッドホン製品が平面型”という先鋭感。OPPO「PM-1」

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