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同時代を歩んだ評論家がテクニクスを改めて解説

<IFA>4年の中断、ハンデではなくプラスへ ー テクニクス復活への大きな期待

公開日 2014/09/05 12:46 山之内 正
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念のために書いておくが、当時はいまほど再生機器が多様化しておらず、ここまでポピュラーな存在ではなかったので、音楽を聴く機会といえばコンサートか家庭のステレオに限られていた。そして、コンサートに出かけるよりもステレオで聴く機会の方がはるかに多かったのである。

もちろん感性を左右するほどの重要な役割を演じたブランドはテクニクスだけではない。日本ではダイヤトーンのスピーカーやソニーのレコーダーをはじめとして、たくさんの製品が私たちの耳を育てる役割を担った。それらの機器の多くはすでに入手できないし、なかにはブランド自体がなくなったり、方向が大きく変化した例も少なくない。

歴史と影響力のあるブランドほど、そのブランドを維持するために大変な努力が必要になる場合がある。テクニクスが2010年にいったん消滅してしまった背景にもいろいろな事情があったのだろう。聴き手の耳を育て、感性を左右するという意味で、オーディオ製品はたんなる再生装置の枠を超えた価値を持っているわけだから、本当は可能な限りブランドを維持して欲しかったと思う。

先進機能に対応しつつ、一目でテクニクスと分かるテイストを継承

しかし、最後の製品がカタログから消えてから僅か4年で復活を遂げたことは、長い歴史のなかで考えれば大きな欠落ではない。幸いなことにパナソニックの社内にはテクニクス製品の開発や販売を担ったメンバーが大勢残っていて、今回のプロジェクトを機に再結集したのだという。

テクニクスの復活を目指したメンバーにはいろいろな思いがあるに違いない。若い世代への技術やノウハウの継承、ブランドを象徴するデザイン価値の継続、そして脈々と受け継がれてきた音の継承など、課題は無数にある。しかしここは4年の中断をハンディキャップととらえず、むしろ不利な部分をプラスに転じることを期待したい。

発表した製品群を見る限り、今回はその期待通りの方向に向かっているという印象を受けた。ネットワークオーディオとデジタル伝送に大きく舵を切るなど、今回の製品群は最先端の領域に踏み込んでいるが、デザインはひと目でテクニクスとわかるテイストを受け継いでいる。

それでは肝心の音はどうだろうか。テクニクスの伝統をどう継承し、進化しているのか、興味は尽きない。


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