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4名の評論家が週替わりでオーディオを語る

角田郁雄のオーディオSUPREME【第2回】PS AUDIOがレコード再生とハイレゾ再生を融合する

公開日 2014/08/21 10:48 角田郁雄
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■NPCとDSDDACで“Hi-Res Vinyl Playback”を行う

ここまで来ると、NPCとDSDACを使ってシステムを構築したくなる。そこで今回、自宅で、ポール氏の提案するNPCとDSDDACを直結したアナログのリアルタイムDSD再生にもチャレンジした。

プレーヤーは独トランスローター社のロンディーノを使用。トーンアームはSMEのsieres Xストレートショートアームを組み合わせている

カートリッジには、LyraのMC型カートリッジであるAtlusを使用した

再生した曲は、Blue Noteのハービー・ハンコック『Maiden Voyage』である(NPCを5.6MHz DSDに設定)。最初に聴けるシンバルの音は、力強いアタック感とともに、金属の粉を巻き散らすかのような倍音が広がり、フレディー・ハバードのトランペットやジョージ・コールマンのテナー・サックスの響きが濃密と言えるほど、シャープで鮮やかな倍音を放ち、ハンコックのピアノの打鍵する力加減が実にリアル。ダイナミックで厚みのある響きが部屋を埋め尽くした。しかも、音量を上げても歪み感が少なく、繊細な音もクローズアップされ、解像度の高さも実感できた。まさにこれが、PS Audioが提案するレコードとハイレゾ再生を融合した、新しいレコード再生なのである。

再生装置はプリアンプにAyre「KX-R」、パワーアンプに「MX-R」、スピーカーシステムにMagico「S-1」を用いた

私流に言えば、「Hi-Res Vinyl Playback(ハイレゾ・ヴァイナル・プレイバック)」である。私はこのワイドレンジな音が好きになった。そのDirect Stream DACの内部も実に魅力的なので紹介しよう。本機はHDMI入力(I2S)、バランス入力、同軸/光TOS入力、オプションのネットワーク再生用“Network Bridge”デジタル入力が選択でき、その他にミュート、バランス、音量調整、位相切換えがリモコンや本体のタッチパネルで行える。

まさに「Hi-Res Vinyl Playback」を体現しているシステムだ

前述のように2.8/5.6MHz DSDに対応し、44.1kHz〜192kHz/24bitまでのPCMも、全てFPGAにより、何と5.6MHz DSDの10倍の56MHz DSDにアップサンプリングされる。その後FPGA内部で1bitΔΣのDSD信号に置き換えられ、DACチップの変わりに、ハイスピードなA級ビデオアンプをDACとして使用し、大型出力トランスを使ったパッシブローパスフィルターでアナログ出力される仕組みになっている。

PWDSDのディスプレイ。INPUTが「DSD」になっていることがわかる。上の写真では「DSD64」と表示されているが、取材時はDSD128で試聴を行った

またビットパーフェクトの音量とバランスコントロールができるボリュームを搭載。内部クロックには、Crystek社の低ジッターで位相特性に優れたマスタークロックを採用している。嬉しいことに、Perfect Wave DACMk2の愛用者なら、本機へのアップグレードが可能とのことで、私のPWDもアップグレードしようと決断した。

Direct Stream DACは、ネットオーディオファンにとっても一聴の価値のあるモデルだ。またレコードとネットオーディオを楽しむ愛好家には、ぜひ、NuWave Phono ConverterとDirect Stream DACの組合せによるDSDハイレゾ・ヴァイナル再生を体験して欲しい。




【筆者プロフィール】
角田郁雄
北海道札幌市生まれ。父の影響を受け、オーディオに興味を持つ。セールスエンジニア的な仕事を経験したので、物の原理や技術を追求してしまうタイプ。オーディオブランドの音、背景にある技術、デザインの魅力を若い世代にも伝えたいと執筆活動を始める。



〜編集部より〜
なぜ、アナログレコードをわざわざリアルタイムでDSD化する必要があるのか。アナログをA/D変換して、さらにD/A変換したら、アナログの良さが消えてしまうのではないか。正直、最初は今回のシステムの意図が今ひとつピンとこなかったのだが、実際に聴いて腑に落ちた。リアルタイムで56MHz DSDに変換されたアナログレコードのサウンドは、レコードならではの柔らかさや実在感を持ちながら、なおかつとても見通しがよく整然としているという、ちょっと他では聴いたことのないサウンドだった。ハイレゾとアナログがこういう形で融合していくことで、ネットオーディオはもっと面白くなっていくと素直に感じた。(編集部 小澤)

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