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【特別企画】1万字インタビュー+徹底試聴レポート

B&W新600シリーズはCMを超えたのか? D&M澤田氏インタビュー&試聴レポート

公開日 2014/05/22 11:00 レビュー:山之内正 インタビュー:ファイル・ウェブ編集部 小澤貴信
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集中試聴レポート
新600シリーズのステレオスピーカー4機種を
山之内正が集中レビュー


山之内正氏が、新600シリーズにラインナップされたフロア型スピーカー「683S2」「684S2」、ブックシェルフ型スピーカー「685S2」「686S2」の合計4機種をステレオシステムで集中試聴。各モデルの音質的特徴をレポートする。

取材・執筆:山之内 正

■明確に浮かび上がった新600シリーズの音質改善の方向性

B&Wは幅広いレンジの製品を揃えながら設計思想の一貫性が高いことで知られる。技術的先進性でもスピーカーを手がける著名ブランドのなかで際立つ存在だ。

ハイファイモデルのエントリーに位置する600シリーズもその例外ではない。CMシリーズ以上に導入しやすいレンジながら、ノーチラスチューブやケブラーコーンユニットなど、B&Wのコア技術を投入して音質の改善を重ね、現行の第4世代機は高い人気を維持してきた。

新600シリーズ「685S2」

今回はさらなる飛躍を目指し、トゥイーターにフローティング構造を採用して上位機種の設計思想を巧みに継承。ウーファーのセンターキャップの改良など、一見すると地味だが確実な効果を狙っている点も見逃せない。トゥイーターの振動を遮断するデカップリング技術はトゥイーター用ハウジングを独立させる手法に迫る効果が期待でき、センターキャップの素材変更がもたらすメリットはPM1で実証済みだ。モノ作りの流れとしてコスト削減への邁進が目立つなか、独自技術を普及モデルにも積極的に展開するB&Wの姿勢は注目に値する。

山之内 正氏

■各モデルで音像の鮮度と音色の純度が同時に高まった

フロア型の683S2と684S2、ブックシェルフ型の685S2と686S2をまとめて聴くと、今回の音質改善が目指した方向性が鮮明に浮かび上がってくる。要点は2つ、音像の鮮鋭度と音色の純度を同時に高めることだ。前者は主にトゥイーターのデカップリングがもたらす効果で、後者はミッドレンジ/ウーファー側の改良による。その2つの音質改善は4機種に共通して聴き取ることができるが、もちろん製品ごとに固有の音調を持っているので、そこにも注目しながら紹介していこう。

最もコンパクトな686S2は新シリーズのフォーカスの良い音像再現を象徴するスピーカーだ。パット・メセニーの『KIN』はパーカッションとギターのにじみのないシャープな粒立ちが聴きどころで、ベースの帯域からキーボードの高音域まで、余分なものを削ぎ落とした爽快なサウンドを味わうことができる。

「686S2」

ボーカルとベースのデュエットは空間に広がる余韻が澄み切っていて、声と楽器それぞれが鮮鋭で研ぎ澄まされた質感をたたえている。CM1が得意とするふっくらと柔らかい感触とは対照的な傾向だが、突き刺さるような硬質感はなく、ボーカルの肉声感や中低域の密度感もそなわる。

オーケストラやオルガン伴奏の合唱など編成の大きな曲では、低音域の量感に過度な期待はできない。ウーファーのサイズがミニマムだし、キャビネット設計で無理に量感を伸ばすこともしていない。ただし、フロントポート構造を活かしたくせのない低音は従来機より確実に質感が向上していて、ピアノやベースは期待以上に反応が俊敏だ。

ひとまわり大きなウーファーを積む685S2も前作に比べるとやや縦長になった。形状のバランスの良さと同様、再生音も安定した帯域バランスを確保していて、686S2ではスリム傾向だった低音域に自然な厚みが加わり、オーケストラの近代作品を聴いても薄味感はない。グランドピアノの響板が低音域でも十分に響いて厚みのある音を出し、バスドラムの音色も基音帯域の下側が厚く、空気が動く絶対量も大きく感じる。

「685S2」

ボーカルは自然に収束した音像と、それにまとわりつかない澄んだ余韻の対比は686S2とよく似ていて、ベースやギターも立体的な音像が鮮明に浮かび上がる。女性ボーカルの低い音域は本機の方が温もり感を伝えるが、音色で深みを引き出しているので不自然な重さや太いだけのボディ感とは一線を画している。微妙なチューニングだが、しっかりツボを押さえているのはさすがだ。

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