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【特別企画】1万字インタビュー+徹底試聴レポート

B&W新600シリーズはCMを超えたのか? D&M澤田氏インタビュー&試聴レポート

公開日 2014/05/22 11:00 レビュー:山之内正 インタビュー:ファイル・ウェブ編集部 小澤貴信
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■革新的なデカップリング技術をトゥイーターに投入

新600シリーズに搭載されたトゥイーターのもう1つの特徴が、「デカップリング」である。B&Wがデカップリングと呼ぶこの技術、馴染みのある言い方をすれば“フローティング”だ。新600シリーズで採用されたデカップリングは、上位モデルのトゥイーター・オン・トップ方式と同様の効果を、エンクロージャーに収めたまま得られるというものだ。

新600シリーズのダブルレイヤー・トゥイーターの構成

トゥイーター・オン・トップとは、ご存じの通り800 series DiamondをはじめB&Wの上級機で採用されている方式で、エンクロージャーの上にトゥイーターが独立して搭載されている。B&Wが最初に始めた方式なのだそうだが、ここには3つの利点があるという。

「1つ目の利点は、トゥイーターがエンクロージャーにマウントされないので、バッフル板によって振動板から出た音が反射したり回折したりせずにきれいに空間に放射されることです。二つ目は、タイムアラインメントが容易に設定できる点です。ウーファーとトゥイーターの位置関係を調整しやすいですから、当然ですよね。3つ目は、トゥイーター側とウーファー側でお互いの振動を伝えないという点です」(澤田氏)。

800 series DiamondなどのB&Wの上位機では、トゥイーターをエンクロージャーから独立して設置する「トゥイーター・オン・トップ」方式が用いられている

デカップリングは、これまではトゥイーター・オン・トップ方式でこそ実現してきたものだ。トゥイーターをバッフル板に固定したら、“フローティング”できないのは当然と言えよう。しかし、B&Wの開発陣は、通常のトゥイーター配置でもデカップリングできないか研究を重ねた。結果、トゥイーター本体とそれを固定しているフランジ部分に、ジェル状のやわらかい素材を挟むことで、トゥイーターをバッフル板に埋め込みながら“フローティング”している状態にすることを実現したのだ。

このデカップリングについて、一般的な考え方とB&Wの意図は異なる、と澤田氏は語る。「たいていの方が、ウーファーの大きな振幅が伝わって微細なトゥイーターの音が変調されてしまうのを防ぐためにデカップリングを行うと考えられています。それもあながち間違いではないですが、B&Wはむしろ、トゥイーターが放射する高域周波数帯の振動がキャビネット側に伝わることの方が罪が重い、と考えているのです」。

トゥイーターのネットを外したところ。ネットはマグネットなどを使えば簡単に外すことができる

なぜならば、空間情報や明快な定位、音のフォーカスは、トゥイーターの受け持つ情報で決まるからなのだという。ウーファーが担当する帯域は波長が長くなるため、距離感などの空間情報にはあまり関係がない。一方でトゥイーターは波長が短く、わずかな距離の差で情報が乱れてしまうのだ。「本来はトゥイーターからのみ空間に放射されるべき音が、バッフル板を通して遅れてキャビネット表面からも放射され、フォーカスが曖昧になってしまうのです。データで見ると差はそれほどないのですが、実際に聴くとサウンドステージやフォーカスがまるでちがいます。これこそデカップリングの効果なのです」(澤田氏)。

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