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【特別企画】NOS-DAC搭載のハイレゾ対応ワイヤレススピーカー

ECLIPSE「TD-M1」はいかにして“正確な音”を追求したのか − 開発陣に訊く

公開日 2014/02/28 11:00 鴻池賢三
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■驚異的な空間再現と定位が魅力のサウンド

iMacの両サイドにTD-M1を設置してデスクトップ仕様で試聴してみたが、その空間の再現能力と定位の良さに、音が出た瞬間に思わず声が出てしまうほど驚いた。1音1音が精密に空間にプロットされる様は未体験ゾーンである。これは一般的なオーディオの延長上に進化したものではなく、良い意味で異質である。この鮮明な3D感覚は、映像に例えると、良くできた2D映像からじんわりと受ける立体感ではなく、3Dメガネを掛ければ誰もが明確に知覚できる3Dとたとえても良いかもしれない。

TD-M1のサウンドに耳を傾ける鴻池氏

空間へのプロット的立体感に加え、その1音1音にも立体感が伴う。楽器の音色がリアルで、木琴を鳴らす様は、木の質感やアタックの繊細なタッチが感じ取れ、それが連続して左右に滑らかに移動する様子が目の前に広がる。もはやそこには、スピーカーの存在が微塵もない。演奏現場の空気が蘇るのである。これが、インパルス応答に着目した「正確な音」の究極の姿なのだろう。

一方、録音状態の悪い音源は、その悪さもそのままに伝えてくれるという側面もある。安価なBluetoothスピーカーやコンポではそれなりに聴けるソースでも、TD-M1では聴くに堪えないケースも多々ありそうだ。しかし、マイクのセッティングが悪いもの、コンプレッションが過剰なもの、ダビングステージでビット落ちしてしまったであろうものなど、悪さの原因が聴き分けられてしまうであろう点はむしろ面白い。「良い音」について再考する機会にもなるだろう。

また試聴を通じて感じたのは、ハイレゾ再生においては、音の密度が高まる分、インパルス応答という考え方がますます重要になるということだ。ビジュアルに例えれば、4K映像ほどシビアなフォーカス感が求められるのと同様である。

ちなみに、TD-M1はハイレゾ再生を目指して開発されたのではなく、あくまで「多様化するソースへの対応」という観点で音作りがなされたという。スペックでなく、音の本質に迫ろうとするECLIPSEの姿勢には大いに共感する。

■システム全体から「正確な音」を追求した革新的なホームオーディオ

TD-M1は、単なるオールインワンのお手軽機ではなく、DAC、アンプ、スピーカー部の全てのステージでインパルス応答を追求し、一体設計のメリットを究極の体現に繋げた点で評価に値する。また、結果としての音にも、試聴を通じて、「正確な音」の再現が高レベルであることを確認できた。良い録音は、鋭くエネルギッシュでありながら精密に音程を捉えるアーティストの技量や、録音現場の位置関係および空気感までも掴める。

使いやすさを追求したのはもちろん、「正確な音」を実現するためにDAC、アンプ、スピーカーを一貫して設計し内蔵したところににTD-M1の本質はある

反面、悪い録音はそのまま聞こえる。「正確な音」とは、聴いて心地良い音やユーザーが好む音とは違うし、また、質の悪いソースもそれなりに聴かせる味付けとも異なる性質のものである。どちらを好むかは、ユーザーの判断で良いと思うが、両者が異なる事を理解しておくのは、オーディオを楽しむ上で非常に重要だ。

筆者の考えとしては、映像も音も、まず制作者の意図をそのまま受け取るのが礼儀だと思う。批評には一定の基準が必要だからだ。TD-M1の「正確な音」は、言わば基準器のような存在であり、プロアマ問わず、クリエイターにはぜひ使って欲しいと思う。また、アンプやDACが一体化することにより、組み合わせのノウハウや試行錯誤が不要になった点では、オートマッチク車のように誰にでも扱い易い。演奏家や演奏を大切に思う音楽愛好家にも好適だろう。

富士通テンの試聴室には、TD-M1と同時に発表されたサブウーファーの新モデル3機種も勢揃いした

TD-M1開発陣と鴻池賢三氏(左)

「正確な音」に着目したECLIPSEが、一体型モデル「TD-M1」の登場でさらなる高みに到達しつつ、身近にもなった。手にしたハイレゾ音源の素性を探るのも面白いだろう。従来コンセプトのオーディオでは聞こえない音が聞こえてくるはずだ。また、ハイレゾか否かというスペックよりも、オーディオの楽しみにおいてアーティストの技量、録音やマスタリングなどエンジニアリングのクオリティーがどれほど大切かを教えてくれるだろう。もちろん、演奏も録音も素晴らしいハイレゾ音源を本機で再現すれば、それは最高であるに違いない。

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