HOME > レビュー > デノン「DCD-SX1」に貝山知弘が感じた“由緒正しき血統” とは?

<連続レポート>3名のオーディオ評論家がDCD-SX1のサウンドに迫る

デノン「DCD-SX1」に貝山知弘が感じた“由緒正しき血統” とは?

公開日 2014/02/10 10:30 貝山知弘
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
■細部の表現は緻密で美しく、楽曲が要求する音の美を満たしてくれる

試聴を行ったのは、川崎にあるデノンの試聴室と、鎌倉の試聴室《ボア・ノワール》の2度である。デノンで使用した機材はB&Wのフラグシッフ機と、デノンのプリメインアンプのプラグシッフモデル「PMA-SX」。鎌倉での試聴ではスピーカー/フォステックス「G2000a」、アンプ/アキュフェーズ「C-3800」(プリ)、A-200(パワー×2)である。

試聴は貝山氏の自宅試聴室「ボワ・ノワール」にて行われた。スピーカーはFOSTEXの「G2000a」だ

貝山氏はお気に入りのディスクを次々とDCD-SX1で再生していった。本機の核心に迫るべく、試聴は数日かけて行われた

聴いたディスクの数は多かったが、まず最初に聴いたのはわたしが機器の試聴でリファレンスにしているディスク、『ショスタコーヴィチ/交響曲第5番』(EXTON OVGL00017)である。このディスクは〈シングル・レイヤー〉のSACD。ニコライ・アレクセーエフ指揮アーネム・フィルハーモニー管弦楽団の演奏だ。

ニコライ・アレクセーエフ指揮アーネム・フィルハーモニー管弦楽団『ショスタコーヴィチ/交響曲第5番』(EXTON OVGL00017

このディスクでチェックするのは大編成オーケストラのスケール感がどこまで表出されるかということ。そのためにはプレーヤーの周波数特性とダイナミックレンジ特性がともに広大である必要がある。このディスクにはそれが判定できるポイントが随所にある。ローエンドの低音の伸びと力感、そして締まりをチェックするには、第4楽章のティンパニーの連打とグランカッサ(大太鼓)の強打を聴くとよく、ハイエンド方向への伸びとテンションの高さをチェックするには、第1楽章の冒頭部分を聴くといい。

周波数帯域の広いDCD-SX1の音の伸びは、ローエン、ハンエンドとも申し分がない。単に広い帯域に適合するだけではなく、低音端、高音端でも充分なエネルギー量と力感をもっているのだ。低音域では量感と力感のバランスがきちっととれている点も高く評価できる。電源容量が充分に得られている本機の低音は決して痩せることなく、量感だけが豊かなブーミーな音になることもないのだ。低音域の締まりは充分にあり、音の芯が強い低音が聴ける。低音の適度な量感と力感は、中音域、高音域のバランスにも好影響を与えている。本機の中・高域の音は決して細くなったり痩せたりすることがなく、実に適度な肉付きが得られているのだ。

『ファンタジー』(ユニバーサル UCCG-1574)はユジャ・ワンの魅惑的なピアノ演奏が聴けるCDだ。このディスクは細部の緻密な表現能力と解像度をチェックするのに適したソースだ。わたしがこのために聴くのは3曲目のラフマニノフ『エレジー作品3の1』と6曲目のグルック作曲、ズガンバーティ編曲の《妖精の踊り》だ。どちらも遅いテンポで弾かれる静かで美しい曲だが、その繊細な美をくまなく再現するには再生システム細部の解像度が高いことが条件となる。ことにグルックの曲の最後はピアニッシモから無音になる弱音のニュアンスがどこまで表出できるかが鍵となる。DCD-SX1の細部の表現は緻密で美しくこの曲が要求する音の美を充分に満たしてくれた。

ユジャ・ワン『ファンタジー』(ユニバーサルUCCG-1574)

このディスクは多彩な音色のチェックにも役に立つ。そのために聞くのは5曲目のスカルラッティのピアノ・ソナタK455。速いテンポでガラス球を転がすようなこの曲では、一音一音がくっきりと表出され、無限に変化する音色の変化がくっきり浮かび上がる。総じてユジャ・ワンの演奏は天衣無縫。よい意味での弾きまくりだが、再生システムの解像度の高さがその変化においつくか否かが勝負となるがDCD-SX1は見事にこの要求に応えてくれた。

次ページ開発の苦労が見えてくる、紛れもなく練り上げを重ねた音

前へ 1 2 3 4 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE