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<連続レポート>3名のオーディオ評論家がDCD-SX1のサウンドに迫る

デノン「DCD-SX1」に貝山知弘が感じた“由緒正しき血統” とは?

2014/02/10 貝山知弘
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■技術の進歩が、これだけの内容をこの価格で可能にしてしまった

2013年秋に登場したDCD-SX1は同社がデジタルプレーヤーを商品化してから30周年の記念モデルと言っていいが、型番が示すように、DCD-SXの後継機でもある。このモデルのポイントは近年登場した新しい「超定位相雑音クリスタル」を軸にしたマスタークロックモジュールの開発にあった。このモジュールの特徴はジッターの極小化にあり、その効果はデジタルプレーヤーのメカドライヴ、D/Aコンバーター、Advanced AL32などの回路すべてに現れている。

メカエンジンを置くベースはDP-S1と同じく頑強な砂型アルミベースを採用している。これはメカ部の低重心化と高剛性化に役立っており、よく伸びた力感あふれる安定した低音を生む台座となっている。DACは32ビット192KHzのモジュールを左右1個づつを配置したデュアル駆動だ。本機がDCD-SXから継承したのは制振に優れた鋳物製の脚、遮蔽で生きる銅メッキシャーシ。新たな機能としてはバランス出力の2ピン/3ピンを切り換えるスイッチが設けられた。

「超定位相雑音クリスタル」を軸にしたマスタークロックモジュールをはじめ、同社のデジタル技術が本機に結集された

DCD-SX1のために新開発されたメカエンジン。ベース部に砂型アルミを採用するなどさらなる低重心化も進めた

マスタークロックは44.1/88.2/176.4kHz系と48/96/192kHz系の両方が装備され、入力されたデジタルオーディオ信号により最適のクロックで動作する。USB-B入力によるUSB-DAC機能も充実している。DSDでは2.8/5.6MHzに対応し、DoP/ASIO2.0ドライバーによるネイティブ再生も可能だ。PCMは192KHz/24ビット再生に対応している。

ネットオーディオを始めとする新しい再生に対応した本機を軍艦に例えれば、無人偵察機を飛ばして偵察を行い、その標的にミサイルを打ち込む能力を持つ最新型の巡洋艦ということになろだろう。私は思想の伝承と技術の進化と言う視点でデノン製品を信頼している。技術の進化の度合いは世代により差があるが、根本の設計思想には同社のモットーが色濃く反映している。それは先にも書いたとおり「音源の製作者の意図を忠実に再現するため、繊細さと力強さを両立させている」のだ。

細部にまで追い込まれたDCD-SX1の筐体内部。デノンの思想の伝承と技術の進化がここに現れているといって過言ではない

当然のことながらフラグシップモデルの代変わりはそう度々あるわけではなく、世代替わりした時の後継機の性能と音質が確実に前作を上回っていることを確かめた上での決断となる。この時前作の技術は次位モデルに継承されていくことが多く、そのため次位モデルは極めてハイCPのモデルとなっていく。

ユーザーにとって嬉しいことは、これだけ最新の技術と機能を投入したフラグシップモデルが55万円で買えるということ。前身であるDCD-SXの価格が80万円であったことを考えると、信じがたいほどの価格付けだ。これだけの価格が実現したのも、本機のポイントである水晶発振回路をモジュール化できたことが最大の原因だ。技術の進歩が価格の低減に繋がった好例といっていいだろう。

DCD-SX1の背面端子部。バランス出力の2ピン/3ピンを切り換えるスイッチが設けられたのは嬉しい

本機の試聴は前年にすましていた。だが原稿執筆前に体調を壊し何度も入院を繰り返す破目になってしまった。この試聴記は当時のメモを頼りに年が明けてから改めて執筆したものであることをお断りしておく。

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