HOME > レビュー > 【レビュー】ヤマハ「ハイレゾ時代」のマルチchスピーカー新“Soavo”に大橋伸太郎が迫る

7年ぶりに登場した“Soavo”シリーズ

【レビュー】ヤマハ「ハイレゾ時代」のマルチchスピーカー新“Soavo”に大橋伸太郎が迫る

公開日 2013/11/22 11:06 大橋伸太郎
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

■C901、B901、SE901が加わると、アグレッシブで密度の高いサラウンドが出現

次に、NS-B901、NS-C901、NS-SW901を含むフルシステムでサラウンドを再生してみる。すぐに分かることは非常にバランスのいい5.1chシステムであることだ。センタースピーカーNS-C901の出来がいい。こちらはNS-F901のミッド用ドライバーと同じ13cmのA-PMDコーンを2基搭載する。F901の場合もこのミッドが声の帯域を受け持つが、両者をシステムアップしたときのフロントセクション音場のLRとセンターのつながりのバランスが非常にいいのだ。『レミゼラブル』(DTS-HD Master Audio 7.1ch)は、センターchが中心だが音場の奥行きが深く立体的で、声の質感が高くアンサンブルも解れる。量感があり密度の高い歌声だ。

新“Soavo”の低域は「やや硬い低域」から、「俊敏で解像感の高い低域」へ変わったわけだが、映像音響の場合、分厚い低音が必要な場合が多い。アクティブ型バスレフNS-SW901は30Hz前後で十分な音圧が取れる。これはF901でロールオフしていく限界値で同時にNS-SW901の帯域なので、映像視聴時には充実した隙のない低音効果を生み出す。そしてNS-B901がそこに加わり、密度の高いサラウンド音場が生まれる。

ポリティカルアクション『ゼロ・ダーク・サーティ』(DTS-HD Master Audio5.1ch)では、ヘリの軌跡が太く実在感がありch間のつながりに断絶がない。F901、B901共にレスポンスに優れ低域の質感描写力が高く、SEの質感が具体的で、ヘリのエンジンの温度感も描き分ける。上昇するヘリ機関音の高まりも、試聴室の限界を感じさせない豪放さだ。SEを中心的に担うNS-F901の開放的な音の出方もあって、アグレッシブに音が聴き手に押し寄せてくる。ステレオ再生の軽やかな躍動感と、サラウンドでの積極性。F901シリーズはその二面性を楽しめるのである。

ヤマハの新“Soavo”シリーズは、7年の月日のオーディオの変化が反映され、しなやかに変貌を遂げた。下世話な表現をすると、「品行方正な箱入り娘が恋を語れる大人のイイ女にブレイクした」印象。この冬何を措いても聴くべき、最注目のスピーカーシステムといえよう。

◆大橋伸太郎 プロフィール
1956年神奈川県鎌倉市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。フジサンケイグループにて美術書、児童書を企画編集後、(株)音元出版に入社、1990年『AV REVIEW』編集長、1998年には日本初にして現在も唯一の定期刊行ホームシアター専門誌『ホームシアターファイル』を刊行した。2006年に評論家に転身。西洋美術、クラシックからロック、ジャズにいたる音楽、近・現代文学、高校時代からの趣味であるオーディオといった多分野にわたる知識を生かした評論を行っている。

前へ 1 2 3 4

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE