【特別企画】山之内正が徹底レビュー

クリプシュの代表的スピーカー「Referenceシリーズ」の実力に迫る

山之内 正
2012年11月29日

長年培ってきた高音質技術のノウハウをつぎ込んだKLPSCH(クリプシュ)「Referenceシリーズ」。独自のホーン技術を採用し、高いコストパフォーマンスも魅力。本稿では同シリーズの代表モデル2機種の徹底視聴を行った。

独自ホーンの採用が特徴的 − 世界シェアの高いシリーズ

1946年の創業以来70年近くにわたって家庭用と劇場用スピーカーの世界で特別な存在感を発揮してきたクリプシュは、日本のオーディオファンにとってもおなじみのブランドである。オーディオ歴の長い読者なら「クリプシュホーン」の名を聞いたことがあるはずである。創業者のポール・W・クリプシュの卓越した発想が生んだオールホーン型システムの記憶は、今日まで広く語り継がれている。

創業者 ポール・W・クリプシュ

現在のクリプシュは北米市場をはじめとする広い地域に浸透したオーディオ専業ブランドとして知られ、スピーカーだけでなく、ヘッドホンやイヤホンの分野でも高い評価を獲得している。

特に北米では劇場用スピーカーだけでなく家庭用でも圧倒的なシェアを誇っており、小型のブックシェルフスピーカーから大型のフロア型モデルまで、製品のレンジも非常に広いのが特徴的だ。北米・南米の劇場用スピーカーでは55%のシェアを実現していると言われており、その数字からも、クリプシュ製スピーカーの評価の高さをうかがうことができる。

現在の家庭用スピーカーのラインナップは「Reference(リファレンス)」「Synergy(シナジー)」「Gallery(ギャラリー)」の3シリーズで構成され、いずれもクリプシュ独自の「トラクトリクス(Tractrix)ホーン」を採用していることが大きな特徴である。トラクトリクスホーンは能率の高さと素直な指向性を実現したコンプレッションドライバー+ホーン型のユニットで、現代のクリプシュ製スピーカーの代名詞と言える存在だ。

Synergyシリーズは今回取り上げるReferenceに次ぐモデル

Galleryシリーズはサウンドバーやフラットパネルスピーカーをラインナップ

今回試聴したリファレンスシリーズには3つのラインの頂点に位置する上位モデルが揃っており、選択肢の広さは他に例を見ない。サイズの異なる複数のセンタースピーカーに加え、ダイポール型のサラウンドスピーカーも豊富に揃えており、ステレオ再生だけでなく、サラウンドシステムにも自在に展開できるラインナップになっている。

ユニットはセラメタリック製ウーファーとチタン製振動板のトゥイーターにトラクトリクスホーンを組み合わせた構成を各機種に採用し、ウーファーの振動板が放つ半光沢の輝きがトレードマークになっている。今回は同シリーズのなかから取り扱いやすいサイズのブックシェルフ型モデル「RB-61II」と、スケール感豊かな再生音が期待できるフロア型「RF-82II」の2機種を試聴した。

高能率のブックシェルフ型 − 量感と質感の再現力が魅力

16.5cmウーファーと1インチコンプレッションドライバーを組み合わせたシンプルな2ウェイ構成の「RB-61II」は、アンプに負荷をかけない高能率のブックシェルフ型モデルで、導入しやすく扱いやすいスピーカーの代表格。クリプシュの製品を初めて使う人にもお薦めの製品である。

RB-61II

カラーバリエーションとしてチェリーモデルも用意

ユニット口径に比べてキャビネットのサイズに余裕があることに加え、フロントバッフルにバスレフポートを設けていることから、リビングルームなど設置条件に制約のある環境でも量感と質感が両立しやすい良さがある。

背面端子部

スピーカー端子はバイワイヤリングに対応して いる。フロア型は筺体背面の下部、ブックシェ ルフ型では背面中心に端子を配置

ジャズ・ボーカルは小型スピーカーとは思えないほど声の実在感が高く、口元の大きさが目に浮かぶと同時に、身体全体に声が響いていることが実感できる生々しさがある。伴奏のベースはアタックが明快で一つひとつの音に勢いがあり、ボーカルと拮抗する力強さに感心した。

両機とも25mmトゥイー ターを搭載。チタニウム・ダイアフラム・コンプレッション・ドライバーを採用している

軽量で丈夫なセラメタリック・コーン・ウーファーを搭載することで、湿度や温度などの影響を抑え、歪みの低減も実現した

アリス・紗良・オットが弾く「《展覧会の絵》」は厚みのある低音に輝きのある高音が乗り、色彩感豊かなピアノの響きを堪能した。小型スピーカーらしからぬ低音の厚みは本機を選ぶ大きな理由になりそうだ。

オンキヨー「CR-N755」で再生したDSD音源(CojokのLemonDrops)は、アコースティックギターのクリアなサウンドと柔らかみのあるボーカルが絶妙のバランスで溶け合い、澄んだ質感が心地良い。シンプルでコンパクトな再生システムにも関わらず、DSD音源のメリットをしっかり引き出していることに注目したい。

PCM形式のハイレゾ音源からもレンジの余裕と階調豊かな音色を引き出してくる。村治佳織が演奏したアランフェス協奏曲はギターのニュアンスが緻密で、明るいオーケストラとの対比が聴きどころ。リー・リトナーのハイレゾ音源はリズム楽器のストレートな音色とスピード感に耳を傾けたい。

スケール感豊かな再生音 − 圧倒的な鳴りの良さを実現

20cmウーファーをツイン構成で搭載する「RF-82II」は98dBという高能率を誇る本格派のフロア型スピーカーで、外見から受ける印象と同様、スケール感豊かな再生音を聴かせる。

RF-82II

チェリーモデルもラインナップしている

大編成のオーケストラはステージいっぱいにゆったり広がり、余韻が響き渡る空間のスケールの大きさにまずは驚かされる。弦楽器と金管楽器の位置関係など、奥行き方向の立体感を正確に引き出す点にも本機の長所を聴き取ることができ、プリメインアンプ(マランツ「PM-15S2」)のパワーの余裕が生み出すダイナミックな音圧感にも圧倒された。低音の響きはとてもオープンで伸びやか、過剰に重くなるようなキャラクターはまったくなく、キャビネットの共振もほとんど気にならない。

背面端子部

フロア型RF-82 IIでは、背面部にバスレフポートを配置。ブックシェルフ型RB-61 IIでは、前面の下部にバスレフポートを配置している

リー・リトナーのアコースティックギターは楽器のイメージが一歩前に出て鮮鋭感を際立たせ、ホーン型ユニットならではの爽快な抜けの良さを味わうことができた。パーカッションの音の粒子がストレートに飛んでくるようなイメージも通常のドーム型ユニットではなかなか体験できない感覚で、特にある程度大きめの音量で鳴らすと耳を心地よく刺激してくれる。明快な粒立ち感は、専用フットとスパイクの組み合わせによる効果もありそうだ。

ジャズ・ボーカルではベースのボディの鳴りっぷりの良さが、本機よりもひと回り大型のフロア型スピーカーを連想させ、ボーカルの身体の響きもブックシェルフ型以上の重量感が乗ってくる。声の音像ににじみがなく、イメージがクリアに浮かび上がる。鮮明な音像はクラシックの室内楽やピアノ独奏からも聴き取ることができ、主張のはっきりした明快なサウンドだ。ジャズとロックを最も得意とするスピーカーだが、アクティブな音が好きなクラシックファンにもお薦めしたい。


<クリプシュスピーカー設置店>
こちらでご試聴いただけます
http://www.klipsch.jp/shop/retail.html

【製品に関する問い合わせ先】
イーフロンティア
http://www.klipsch.jp/

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