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ヘッドホン・イヤホン特集 Part2

【レビュー】「絶妙なサウンドバランスを持つロングセラー機」 − オーディオテクニカ「ATH-AD1000」を聴く

2012/04/17 野村ケンジ
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■現在も色あせない魅力を保ち続けるロングセラー機


オーディオテクニカのヘッドホンには、大きく分けて3つのキャラクターがある。ひとつは多くの人に広く「高音質」を提供する、コストパフォーマンスモデル。2つめが、音質を最優先して追い求めたハイクオリティモデル。そしてもうひとつが、プロやハイアマチュアをメインターゲットとした、モニター系の製品だ。

なかでもモニター系の製品は、プロはもちろん、音楽好きのユーザーに根強い人気を持つ製品がいくつかある。その代表格といえるのが、この「ATH-AD1000」である。

ATH-AD1000

開放型のフランジを持ち、オープンエア型などとも呼ばれるスタイルの「ATH-AD1000」だが、その発売は、何を隠そう2004年11月。実は、発売以来7年半以上にわたって継続販売されている、ロングセラーモデルなのだ。

クルマだったらまだしも(クルマだってここまで変わらず作り続けられるものは滅多にない)、ヘッドホンでここまで長期にわたり作り続けられている製品はそうそうない。これまでディスコンにならず作り続けられてきたのは、ひとえに根強い人気があったからこそ。事実、そのスタイルもサウンドも、あまたの製品が登場した現在においても決して色あせない魅力を保ち続けている。

同時発売された上位機「ATH-AD2000」も販売が継続されている

普及機「ATH-AD900」。本機も上位2機種同様に3D方式ウイングサポートを搭載

それでは「ATH-AD1000」の詳細をみていこう。まずは外観から。そのスタイルは、プロ用モニターヘッドホン然としたイメージが漂うもの。アルミニウム製のパンチングメッシュフランジや、マグネシウム製のフレームなど、随所にプロっぽさを感じさせるマテリアルがちりばめられているが、実はこれ、270gという軽量さを実現するための質実剛健さを求めた結果でもある。そう、「ATH-AD1000」は、どこをみてもいっさい華美な装飾がない「本物」であり、機能美そのものなのだ。

イヤーカップ部

ヘッドバンド部

また、アルミニウムハウジングφ53mmドライバーや、7NグレードのOFCボイスコイル、専用開発された特殊素材の振動板など、サウンドクオリティに関してもかなりの追求がなされていることが随所からうかがえる。

また、3D方式ウイングサポートやエクセーヌ素材のイヤーパッドなど、最新機種にも採用されている快適装備がすでに搭載されていることも、「ATH-AD1000」がいまだ古くならず、現在でも充分に通用する魅力的な製品に見えるポイントとなっているのは確かだ。

可動式にすることで頭部へフィットする「3D方式ウィングサポート」を採用

イヤーパッドにはエクセーヌ素材を採用

■絶妙なサウンドバランスを持つ製品


実際のサウンドを聴くと、さらにその印象は高まる。自然な帯域バランスと開放的な鳴りっぷり、空間的な広がりのスムーズなサウンドは、まるでオープンエア型ヘッドホンのお手本のよう。音楽が、録音されたとおりのまま感じ取ることができるのだ。

今となっては多少解像度感に不満を覚えるものの、それがまったく気にならないほど、自然でリアルなサウンドは、オープンエア型ならでは、いや、この場合は“オーディオテクニカ製のオープンエア型ならでは”というべきだろう。そういう表現をしたくなるくらい、奇をてらわない、ヘッドホンのもつ本来の役割を実直に果たしてくれる、いい意味で影の役割に徹し音楽を主役として盛り立ててくれる、絶妙なサウンドバランスを持つ製品といえる。

製品パッケージ

また装着感もよく、いつまでも演奏を聴き続けていたい気分にさせられる点もありがたい。実際のところ、ロングセラーモデルゆえにこれまで何度も試聴する機会があったが、そのたびに聴き心地のよさ、音楽表現の素直さには、そうと分かっていても感心させられた。

オーディオテクニカは、以前からオープンエア型ヘッドホンには力を入れてきたが、もしかすると、7年半前の時点でひとつの完成形に達していたのかもしれない。そう思える、優秀機であることは断言しよう。

【筆者プロフィール】
野村ケンジ Kenji Nomura
ホームシアターやヘッドホン、音楽関連、カーAVなどの記事を中心に執筆活動を展開している。100インチスクリーン+TADスピーカーで6畳間極小ホームシアターを実践。さらに現在はステレオと7.1chの同居計画が進行中。好きなクルマはアルファ・ロメオなどのイタフラ系。


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