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TD510を大橋伸太郎が聴く

いま「リアリズム」に最も近いスピーカー − 3D/4K映像時代に輝くECLIPSE TD

公開日 2011/12/21 09:59 大橋伸太郎
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サラウンドの経験厚いNHKだけに、ワイドレンジで本格的なハイファイによる音の実景表現である。SLの通過音は重量感豊か、汽笛の大音量の一声も鮮明に歪みなく収録されている。

音元出版視聴室でTD510をテストする大橋氏

TD510で再生すると、SLの巨体がゆったりとしたマッスでそのままリアに移動していく素晴らしいリアリズムがある。スクリーンの中を悠然と移動するC11と、チャンネルからチャンネルへの音の移動が正確に一致し、動線が途中で途切れたり映像と別の方向へ音が飛んでいったりしない。映像であれだけうるさく追求しているのに、音がチャンネル間でクロストークしていたら、片手落ちもいい所ではないか。

ECLIPSE TD はシステム展開した時のチャンネル間の位相ズレが極小である。その精度の高さがこのシャープな音場表現をもたらし、大画面で鉄道映像を見る醍醐味を味わわせてくれる。

原野を渡る風や方々から聞こえる野鳥のさえずりも定位の甘さがなく、フォーカスをマニュアルで精密に合わせたようで、その結果音場の行き止まり感のない広々とした音のランドスケープが生まれ、試聴室の四囲の壁が消えてなくなったようだ。

「リアリズムに最も近いスピーカーだ」と大橋氏

■いま「リアリズム」に最も近いスピーカーシステム

映画ソフトはどうだろう。『ハウルの動く城』の久石譲の華麗なスコアがTD510の音場の遠近表現の正確さでスクリーン手前に浮き上がるように定位し、生命を吹き込まれたメロディーが豊かな情感を発散してしなやか。SEの質感も的確。これはフルレンジならではだが、帯域の断層と重なりがないために、倍賞千恵子のセリフの発声が鈍らず生々しく、日本語の口跡の美しさがある。

セリフといえば、次に見た『英国王のスピーチ』の英語のディクションの鮮明さ、発音のキレも素晴らしい。本作の場合、会話シーンでは声の響きをセンターチャンネルに固定せずLRに拡げ、サラウンドにも反響をこぼす場合があるが、チャンネル間の音色と音量バランス、ディレイの再現が正確無比だから、声による演技がくっきりと立体的に描写され演劇的な迫力がある。モーツァルトやベートーヴェンの管弦楽や交響曲が巧みに使われているが、背景音楽がサラウンドチャンネルに広がった時も上手なオケを聴いているように響きが揃って、一糸乱れない落ち着いた音場である。



映像の世界では、昨年来の3Dが一段落し、4Kが代わって主役になりつつある。しかし3Dも4Kも、目指すものはリアリズムという同じ峰なのである。音もそれに寄り添い、支え、掛け算の効果を作り出していかねばならない。その水先案内人に出会った気がする。

ステレオなら演奏に込められた精神の集中まで見え、サラウンドならサウンドデザインの全体像を正確無比に、歪みなく伝えきるECLIPSE TD。いま「リアリズム」に最も近いスピーカーシステムといえるだろう。

(大橋伸太郎)

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