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出力管に「EL156」を採用

CAVの真空管プリメイン「T-50」を藤岡誠がレビュー − 濃密な中域の新ハイエンド

公開日 2011/10/11 10:29 藤岡誠
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CAVではこれまでに、初段が真空管で出力段をMOS・FETで構成したハイブリッド方式「A10(¥315,000)」、KT88プッシュプルの「T88(¥168,000)」、EL34(6CA7)プッシュプルの「T6(¥152,250)」の3機種のプリメインアンプを展開しているが、今回それらにEL156プッシュプル(UL接続)の本機「T-50(関連ニュース)」が新しく加わることになった。


T-50

T-50のサイド/リア(写真はクリックで拡大)
CAVに詳しいマニアなら、同社のプリメインアンプの外観がすべて異なっていることをご承知だろうが、本機も例外ではない。しかし、機能面では前述の先行3機種と同様にフォノEQ(MM対応)機能を持たせて根強いアナログレコードファンの要求に応えている。

なお、本機に採用している「EL156」はドイツのシーメンス社が開発した5極出力管。一般のオーディオ市場では馴染みが薄いが、かつてのノイマン社のカッティングマシンのカッターヘッドのドライブアンプに使われていた高信頼電力増幅管だ。

今回は別項に紹介している新型3ウェイ・スピーカーシステム「DX-8(関連レビュー)」に接続して試聴した。

なお試聴の際、本機について「実はこの時点で最終の調整・音決めはしていない」というクレジットがあったので、ここで断定的な音質・音調などの評価は控えることにし、もっぱら“速報性”にポイントを置かせて頂くことにする。しかしだからといって、音質・音調にまったく触れないというわけにはいかないから、今回の試聴時点の印象と私の本機に対する期待を述べることにしよう。

DX-8に接続すると、DX-8の卓越した低域伸張とその音圧感はかなり制限されてくる。高域方向も同様で、ヴァイオリンの高弦の響きはなだらかに下降した聴こえになっている。こうした聴こえは本機の際立った特徴というわけではなく、出力トランスが介在する真空管方式に共通する傾向であり、たまたま超ワイドバンドなDX-8と組み合わせた結果、それが顕著に現れたと捉えて間違いはない。

半面、中域周辺は濃密で充実した音調を聴かせている。最終局面で一層の透明度と分解能が加味されることを期待したい。真空管アンプで特に留意したい残留雑音は、十二分に抑え込まれているから安心されたい。


<藤岡 誠>
大学在学中からオーディオ専門誌への執筆をはじめ、40年を越える執筆歴を持つ大ベテラン。低周波から高周波まで、管球アンプからデジタルまで、まさに博覧強記。海外のオーディオショーに毎年足を運び、最新情報をいち早く集めるオーディオ界の「百科事典」的存在である。歯に衣を着せず、見識あふれる評論に多くの支持者を得ている。各種の蘭の他、山野草の栽培も長年に亘る。

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