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音楽をもっと自由に楽しむためのスピーカー − ケンブリッジ・オーディオ「MINX」レビュー

公開日 2011/08/22 10:05 試聴&レビュー/林 正儀
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「Min10」+「X200」の組み合わせで楽しむ本格オーディオ体験


「Minx212 stereo」のホワイトモデルを試聴した
まずはサテライトスピーカー「Min10」を2本と、サブウーファー「X200」による組み合わせの2.1chシステム「Minx212 stereo」から試聴を始めることにしよう。サブウーファーの内蔵アンプに音声信号の送り出すために、オーディオアンプにはプリアウト出力を搭載するケンブリッジ・オーディオのプリメインアンプ「Azur650A」をセレクト。リファレンスのオーディオプレーヤーには、Blu-rayディスクだけでなく、SACDやCD、DVDオーディオもかかるマルチ再生対応のドライブを搭載した、注目の新製品「Azur751BD」を組み合わせた。


リファレンスのプレーヤーはケンブリッジ・オーディオのBDプレーヤー「Azur751BD」

プリメインアンプはケンブリッジ・オーディオの「Azur650A」を用意した
聴き始める前に、サブウーファー内蔵アンプのクロスオーバー周波数をセットしておく。本体背面に設けられたスイッチには「Min10」と「Min20」のアイコンがマークされているので、それぞれ組み合わせるスピーカーに合わせて140Hz/130Hzにセットできる。手軽に最適な位置に合わせられる“専用ポジション”を設けたことは、入門ユーザーにとっても親切な仕様だと感じた。

アンプのプリアウト出力から音声信号をサブウーファー内蔵のアンプに送り出す

サブウーファーのクロスオーバー周波数は、「Min10」「Min20」それぞれの組み合わせに最適な設定値がアイコンでマークされている

【林氏の試聴タイトル】
・Romance with me/シャンティ
・The Hunter/ジェニファー・ウオーンズ
・マーラー・交響曲第一番「巨人」/秋山和慶指揮 北九州交響楽団
・A day without rain/エンヤ
・Believe/オリアンティ
・Spiral Circle/ヘリゲ・リエン・トリオ
・譚詩曲(バラード)/花井悠希




音元出版試聴室にて取材を行った
サテライトとサブウーファーの“つながり”は見事にスムーズ。音色は爽やかで、スピード感があってキレもよい。そして定位が明快だ。音の芯がしっかりとしていて、遠くまで音圧が届くのも特徴と言えるだろう。リスニングポジションを選ばず音楽に浸れるというのが第一印象だが、「シャンティ」の豊かで透明感に満ちたボーカルを聴くと、小さなユニットのどこにそんな力が潜んでいるのかと圧倒させられる。聴き馴染んだジェニファー・ウォーンズ「THE HUNTER」も力強いバックコーラスが新鮮に思えた。


「Min10」を専用のテーブルスタンドに設置

スタンドの穴からケーブルを通してスッキリと配線できる
ジャズもクラシックもちょっと驚くほどに、本格派だ。濃厚な余韻と、アコースティック感をぐいぐいと引き出してゴキゲンだ。ほどよい音量に設定して、マーラーの「巨人」を聴いたが、ブラスの輝きがキレイで艶やかなハーモニーのうねりに包まれる。このノリでロックやポップスをかけると、バッチリとキマると感じ、オリアンティを聴いてみた。ユニットの反応の良さがビンビンと伝わってきて快演だ。オリアンティの胸のすく速弾き、ピッキングの正確さ、スライドやビブラート演奏のスゴ味を体全体で堪能できた。

「Minx212 stereo」のセットに、Min10を3本足して5.1chホームシアターの「Mnix 215」へと発展させるのも良いだろう。薄型テレビを買ったけれど、音環境をより充実させたいという方々に大満足のサウンドを提供できるだけでなく、将来的には簡単に5.1chホームシアターが実現できることからも、「Minx212 stereo」のコストパフォーマンスは非常に高いと言えそうだ。

コンパクトなサブウーファー「X200」

165mm(6.5インチ)のウーファーユニットを搭載


サテライトをダブルユニット搭載「Min20」に変更 ー 2.1chオーディオを聴いた

サブウーファーは「X200」のままで、今度はサテライトスピーカーをダブルユニットの「Min20」に変更してみた。容積は「Min10」の2倍、能率やパワーハンドリングも少しアップさせた兄貴分の貫禄を見せつけるスピーカーだ。


サテライトスピーカーを「Min20」に変更

Min10を2つ重ねたようなデザイン。やはりコンパクトなスピーカーだ
カットオフが下がり、さらにレンジ感やニュアンスの厚みが豊かになる。同じ充実感のサウンドでも、本機はさらに全体のスケール感とパワーが増す雰囲気だ。「シャンティ」は歌声がハスキーになり過ぎず、クリアな伸び方と肉声感のバランスが上々。「J・ウオーンズ」や「エンヤ」も同じ傾向だが、伴奏やコーラスにぐっとボリューム感がでて、空間がリッチになった手応えがある。とはいえ音像が膨らむのではなく、定位は実にシャープ。BMRユニットの美味しいところを味わわせたうえでのリッチさであると受け取って欲しい。


Min20のスピーカー端子

Min20とX200の組み合わせを聴いた
サブウーファーはむしろ締まって、タイトな低音域の支え方だ。ジャズベースのバツンとくる弾け方や、芯のあるドラムスのアタック感も痛快。管弦楽は雄大な裾野の広がり、ピーク音量の伸びやかさなど、大型システムが鳴っているかと錯覚するほどの表現力だ。スピード、キレ味、弱音域のしなやかなレスポンスなど、オーディオのエッセンスを余裕で楽しませる感じ。その意味で「Min10」の兄貴格といえるのだ。

特に好ましいのが、ヴァイオリンの胴の響きとその音色の色っぽさだろう。花井悠希が弾くショスタコーヴィッチのワルツ第2番は、しっとりと濡れた音色で、陰影のある中音域に思わずクラっときた。ポップ感覚とシンプルさなら「Min10」、あとひと味のパワーと表現力なら「Min20」を推挙したいと思う。


どんなジャンルの作品も軽々と鳴らす − Minx 5.1ch再生の実力に迫る

5.1chホームシアターはMinxシリーズのフラグシップ「Minx525」を試聴した。サブウーファー「X500」は10インチのパッシブユニットを底面に配置した。サテライトは「Min20」で、今回の試聴の際にはフロントはテレビの位置に高さを合わせて設置した。センターは横置きにして、みた目にもハイセンスな雰囲気でレイアウトできた。リファレンスの機材はプレーヤーがケンブリッジ・オーディオのBDプレーヤー「Azur 751BD」、AVアンプはデノンの「AVR-1912」。テレビは東芝“REGZA”の「47Z2」だ。

Minxシリーズの5.1chセットシステムのフラグシップ「Minx525」

アンプにはデノンの「AVR-1912」を用意した


センタースピーカーはテレビの前に横置きで設置してちょうど良い高さに収まった

5.1ch試聴を行う林氏
Minxのサテライトスピーカーらしく、素晴らしいディスパーションと、ヌケのよい表現力を備えている。実際は5本のスピーカーだけでも、7ch分を設置したかのように、各チャンネルどうしのスムーズなつながりに驚かされる。サブウーファーはタイトな押し出しだ。パワーとスピード感のバランスがよく、風のように軽やかな反応が素晴らしい。ベストマッチなコンビである。

まずは音楽BDから聴いた。7.1ch収録の「クリス・ボッティ イン・ボストン」は抜群の音色のみずみすしさで、サイ・スミスの力強いハイトーンとトランペットのからみが絶妙。エコーがきれいだ。ホール感をたっぷりと楽しませ、観客とのかけあいも上々。思わず体が動いてしまう。


サブウーファーのフラグシップモデル「X500」

底面に254mm(10インチ)のABRパッシブラジエーターを搭載する
「トロン・レガシー」も7.1chの作品だが、音声フォーマットはDTS-HD Master Audio。クールで目のまわるようなスピード感がこの作品の聴かせどころだ。とにかく追従がよい。シャープで定位や方向が明快だ。バイクレースのシーンではぶ厚いLFEがズンズンとつきあげる大歓声の中でバトルが展開される。360度全包囲からビシバシと飛び込んでくる立体音響!これはMinxにぴたりとハマってくれた。

一転して「ロビン・フッド」はサラウンドの王道をゆく、緻密で堂々とした音の作り込みが特徴だ。5.1chの作品だが、森の静寂と激しい肉弾戦のダイナミックな対比をどこまで再現しきれるのか。MinxはS/N感が見事で、小鳥や風音など、忍び込むような自然音のサラウンドを生々しく表現してくれた。大群の激突はスケールが大きく、空間が広がりサブウーファーも大活躍だ。

「バーレスク」も筆者がお気に入りの一枚だ。歌って踊るエンターテインメントなシーンがテンコ盛りだが、ここは歌姫クリスティーナ・アギレラの初舞台を鑑賞する。これも音のヌケが実に良い。ビート感と音圧感があって、抜群の歌唱力と突出したダンスの才能がパワー全開で迫り来る。ハイパワーな鳴りにもMinxのスピーカーはビクともせず、気持ちの良いステージ音響が楽しめた。映像に吸い込まれるようで、音楽BDとはまた違う、作り込まれたサウンドの面白さをMinxシリーズは“120%”楽しませてくれたのだ。カバーするジャンルが広く、マルチチャンネル環境をつくる際にも、セッティングが非常に手軽な点もメリットだ。


使う人の感性を刺激するMinxシリーズのサウンドと、スタイリッシュなデザイン

最初にMinxシリーズをカタログだけで見た時には、デザイン重視のパッケージオーディオかと思っていたが、実際の製品に触れてみて、その考えを改めざるを得なかった。ケンブリッジ・オーディオが本腰で取り組み、コンパクトサイズな製品の中に、同社のあらゆるノウハウを凝縮して完成させた、見事にハイクオリティかつ音楽性の豊かな次世代スピーカーだったのだ。

海外では高音質なライスタイル型オーディオが広がりつつあるようだが、キュートでコンパクトなMinxシリーズは、リビンクなどの生活環境に導入がしやすく、これからのオーディオ&ホームシアターのあるべき方向を提示しているのではないだろうかと思う。

2.1chから5.1chシアターへの発展も容易だし、そのための豊富なラインナップや、また設置用のアクセサリーが充実していることも見逃せない。アクセサリーもスマートでお洒落なアイテム揃いだ。美しい仕上げのテーブルスタンドはMin10/Min20に共通して使うことができ、センタースピーカーであれば横向きでの装着もOKだ。またピボット式のウォールマウントは角度調整が自由で、スタイリッシュなアジャスタブルスピーカースタンドも用意されている。こちらはケーブルをポール内に通してすっきりと収納できるので、リビング設置の際などにも真価を発揮する。

高さ調整が可能なポールタイプのスタンドはペア18,900円(税込)。カラーはブラックとホワイトが揃う

角度調整が可能なピボット式のウォールマウントユニットは3,675円(ペア・税込)


角にアールをつけた、スピーカーのキューブデザインはチャーミングで、PCオーディオ用としてデスクトップに置いてもぴったりとマッチアップするだろう。手のひらサイズのスピーカーの中に夢が詰まっているのだ。プライス面でもこれまでになく手軽であることもメリットだと言えるし、カジュアルにオーディオを楽しみたい女性の音楽ファンにもオススメしたい。Minxシリーズはあなたのオーディオライフに新たな彩りを添えてくれるはずだ。


【問い合わせ先】
(株)ナスペック
TEL/0120-932-455 またはTEL/03-5313-3831


レビュー:林 正儀
福岡県出身。工学院大学で電子工学を専攻。その後、電機メーカー勤務を経て、技術 系高校の教師というキャリアを持つ。現在、日本工学院専門学校の講師で、音響・ホー ムシアターの授業を受け持つ。教鞭をとっている経験から、初心者向けに難しい話題 をやさしく説明するテクニックには特に定評がある。

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