HOME > レビュー > プラズマと好マッチ『バーレスク』の艶やかさをWoooで引き出す

話題のソフトをWoooで見る

プラズマと好マッチ『バーレスク』の艶やかさをWoooで引き出す

公開日 2011/06/22 10:59 大橋伸太郎
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

■プラズマ向きの映像が満載の『バーレスク』


P50-XP05
『バーレスク』のBDを最初にLCOS方式のプロジェクターで見て、二度目に日立Woooのプラズマテレビ「P50-XP05」で見た。私の自宅には液晶方式のテレビもあるが、薄型テレビで見るのは最初からプラズマで、と決めていた。それくらい、本作はプラズマ方式向きの映像である。

本作はロサンゼルスの街頭や日常生活の描写は普通のカラーバランス、解像感だが、バーレスクラウンジのシーンでやや変わる。

バーレスクラウンジは女主人テスの<聖域>である。生き馬の目を抜く現代ビジネスに対峙する<夢の砦>なのである。だから、ソフトフォーカスで鮮鋭感を抑えたレトロティックな画質である。色彩設計上も赤、マゼンタ系を中心に一定の色数の中で色相を豊かにし、その甘い艶、ニュアンスが作り物のパラダイスの毀れやすさ、儚さを表現している。

色域の広さ、ニュアンスの豊かさという点で、RGBのサブピクセルを自発光させて階調と組み合わせで色彩を構成するプラズマ方式は、バックライト透過光とカラーフィルターで色彩を作る液晶方式に比べそもそも有利である。

◇  ◇  ◇


液晶方式はこの数年、色域の広さを競っており、パネルメーカーも改善に努めているが、プラズマ方式は最初から広色域パネルである。その差がもっとも現れるのが赤、マゼンタ系の色のバリエーションで、これをちゃんと映像として表現し分けられるかが現代のテレビの一つの試金石だが、P50-XP05はバーレスクラウンジの楽屋やステージを埋める赤、朱、緋、紅、ピンクを豪華に画面に溢れ返らせる。しかも色数が多いだけでなく、発色に甘い艶がある。まるで(女の子の好む)ジェリービーンズをぶちまけたような丸みと切なさがある。

液晶方式の場合、どこか発色が硬く乾いた質感がある。プラズマ方式のテレビは本機以外にもいくつもあるが、本機は基本的にハイビジョンの色域(ITU-R BT709)をほぼカバーし、バランスが原画に忠実である。しかも色乗りがいい。濃厚で絵画的な味がある。これにP50-XP05の持ち味であるしっとり艶やかな暗部階調による深い陰影表現が加わり映画のコンセプト「オンナ達の紡ぎ出す夢の王国」を見事に描き出す。P50-XP05で見る『バーレスク』は必見である。

あえて調整ポイントを挙げると、色の豊かさが前面に出てもう少し精細感が欲しいなという気がする。そのためには、ピクセルマネージャー(日立の超解像)を2に、LTI(ルミナンス信号を高域中心に鮮鋭度を上げる)を弱にすると立体感が出る。フィルムグレインとアップでのアギレラの肌の質感もきれいに現れる。ディテールは「切」でいい。コントラストレベル4(ガンマカーブの黒寄りをやや寝かせた重厚な画質)で見ると、心地よく映画に酔える。

さて、本作は音楽映画なので音質が問われる。アリが初めて生で歌い出すまでのショーは(映画の音質も)やや意図的に歪みっぽくナローレンジだが、アギレラのボーカルになると対比的にFレンジが広がり、ステージの奥行き感と、彼女を客席から見上げているような高さ感覚が出る。これが本作のサウンドデザイン上の最大の聴かせ所なのだが、CONEQ搭載の本機は、ステレオ再生でもその変化がちゃんと味わえる。

口パクから生の歌声へ。これを粗略に描いたらアギレラに叱られてしまう。P50-XP05はその点、いささかも不足がない。

大橋伸太郎 プロフィール
1956 年神奈川県鎌倉市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。フジサンケイグループにて、美術書、児童書を企画編集後、(株)音元出版に入社、1990年『AV REVIEW』編集長、1998年には日本初にして現在も唯一の定期刊行ホームシアター専門誌『ホームシアターファイル』を刊行した。ホームシアターのオーソリティとして講演多数。2006年に評論家に転身。

前へ 1 2

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE