シャープ、「暮らす」「働く」のあらゆるシーンにAIを掛け合わせ新たな価値を創造。再成長への土台作りが進展、事業構造を成長フェーズへ
成長を牽引する新規事業の立ち上げを加速し、成長ステージへ
シャープは「2026年度事業説明会」を開催し、社長執行役員 CEO 河村哲治氏が目指す方向性と今後の成長を牽引する新規事業の推進状況について、続いて各事業責任者が2026年度の事業計画と重点施策の進捗状況について説明を行った。
「再成長に向けた取り組み」と題して説明した河村氏。まず初めに2025 - 2027年度 中期経営計画の進捗について触れ、「2025年度は収益力、財務体質、信用力が改善した一年となった。成長基盤への投資も伸長するなど、再成長の土台づくりが着実に進展している。今後はさらなる業績向上を目指し、成長力強化へ取り組んでいく」と述べた。

目指す方向性として、昨年9月に掲げた新コーポレートスローガン「人の願いの、半歩先。」を取り上げ、朝起きてから夜寝るまでのあらゆる時間に寄り添う同社の姿勢を表現した新スローガンを体現するべく、「“暮らす” “働く” のあらゆるシーンにAIを掛け合わせ、人の未来を切り拓いていく」と力を込めた。
「スマートライフ」「スマートワークプレイス」「ディスプレイデバイス」の3つの既存事業では、顧客接点の強化とAIを核とした事業変革を推進し、着実な事業成長と収益性の向上を目指す。
一方、「暮らす」「働く」の顧客接点の拡張とAI活用の基盤構築に向け、「AIインフラ」「次世代通信」「ロボティクス/インダストリーDX」「モビリティ」の新規事業により、同社の強みを活かせる新たな産業領域へ挑戦する。強力なパートナーである鴻海もAIを事業の中核に据えており、「親和性が高く、さまざまなシナジーが期待できる。各事業で飛躍的な成長を目指す」と事業構造を“成長型”へと転換する。

それぞれの新規事業の推進状況についての説明では、「AIサーバー(AIインフラ)」は鴻海の調達・製造力を活用し、2026 - 2027年度に「販売」から国内市場へ参入。これまでのBtoBの幅広い展開による顧客網を強みに、2028年度ごろにはAIサーバーの「構築・導入支援」に事業領域を拡大。課題解決に向けた提案ときめ細かな保守サービスを提供していく。
「衛星通信(次世代通信)」は、世界最小レベルの衛星通信端末を強みとして2027年度の事業化を目指し、さらに、船舶や建設などニーズが大きい特定産業向けの事業展開では、パートナー企業との協業により取り組みがすでに進行している。
さらに、「インダストリーDX」「EV(モビリティ)」「宇宙用太陽電池(次世代通信)」について概要を説明。「各事業の市場規模を合計すると、2030年には5兆円から6兆円になる。そのなかでシャープがどれだけの事業機会を得られるか議論を進めている。個々の事業を説明するまでには至っていないが、全体の中でのシェアとして4 - 5%を目指し。年間2000億円から3000億円を目指し事業に貢献していきたい」と目標を掲げた。
河村氏は「“暮らす” “働く” のあらゆるシーンにAIを掛け合わせ、人の未来を拓く。この方向性に沿って、既存事業の強化と事業変革を強力に推進するとともに、成長を牽引する新規事業の立ち上げを加速し、成長ステージへと歩みを進めていきたい」と説明を締めくくった。
スマートライフ事業の重点施策「AIoT事業拡大」へ
続いて、常務執行役員 Co-COO 兼 スマートライフビジネスグループ長 菅原靖文氏がスマートライフ事業について説明した。2025年度の業績は、市況の低迷や競争環境の激化により減収となったが、米国のキッチン事業やBtoB事業の伸長、さらにソーラーやテレビ事業の構造改革の効果により増益を確保した。

2026年度の事業計画においては、「中期経営計画の前提から事業環境が激変している」と指摘。中国企業との競争の激化、量販店・小売りにおける自社ブランド展開の拡大、メモリー・SSD価格の高騰や中東情勢など外部環境悪化に伴うコスト増を挙げ、「本当に逆風のなかで2026年度がスタートしている」との環境認識を示した。
先日のヤマダホールディングスとエディオンの経営統合においても、プライベートブランド(PB)強化が狙いの一つとされたが、対PBに対して菅原氏は「PBのスペックも上がってきているが、シャープは日本のお客様の趣味嗜好を理解し、それに対する技術開発をこれまで行ってきた。PBとの戦い方として、お客様のニーズにしっかりと応えられる価値の高い商品を開発し続けること。そして、お客様目線でのサービスがひとつの武器になる。AIoTについてもしっかりとお客様にお伝えしてその価値を認めてもらい、シャープのブランドの価値を上げていきたい」と説明した。
今後の方向性として、AIoTの本格拡大・収益化とBtoB事業の拡大による事業変革の加速。そして、高付加価値化や新規カテゴリーの創出、グローバルでの事業拡大、ブランド価値を高めることでの収益基盤の強化を示した。「選ばれるメーカーを目指し、スピードを上げて戦っていきたい」と力を込めた。
2026年度の通期業績予想では、グローバルで増収増益を見込む。エアコン事業では、昨年、冷夏で売上げが大きく落ち込んだASEANにおける売上が回復し、国内では省エネ基準改定に伴う需要増の取り込みを図り、黒字化への転換を目指す。
洗濯機では、国内では他社参入で販売が減少したドラム式洗濯機において、「現在、当社しかない」というコンパクトタイプの8s高付加価値モデルを投入し、好調な動きを見せている。海外では大型化やドラム式洗濯機・全自動洗濯機へのシフトを進め、販売拡大を目指す。
重点施策である「AIoT事業の拡大」では、生成AIに対応した機器が5つのカテゴリーで出荷台数18万台以上となり、「生成AIの活用により “家電” と “人” との関係が進化し、“顧客の嗜好” や “機器の状態” に合わせて、提案から実行までサポートできる」と強みをアピール。2025年にはこれまで商品別に分断していた顧客データの統合を実現した。

「COCORO HOME AI」の利用率は約85%に達し、1日に20回以上トークするコア層も拡大。副次効果としてコールセンターへの機器の操作などに関する問い合わせが約30%減少した。また、過去機種へのサービス拡大に対し、約5,000人のユーザーが利用し、今後、過去機種のユーザーを対象としたAIサービスの有償提供へ手応えを掴んだという。
今後の展開として、これまでは機器単位でのサービスや利用データを通じたパーソナライズにより、製品単体への愛着やリピーターの獲得に寄与していたが、これからは複数の製品を横断したサービスでパーソナライズをより深化させていく。

例えば「花粉」であれば、空気清浄機が対応したモードで除去するだけにとどまらず、ヘルシオが花粉症に効果のある料理のメニューを紹介し、洗濯機は花粉をより除去できるモードで運転する。これらを製品の側から提案してくれる。従来の製品単体にとどまらない、シャープというブランドに対する愛着へと結びつけ、アップセル・クロスセルを実現していく。
AIサービス事業の収益化へ向けた本格展開へ向け、菅原氏は「シャープ全体を持ち上げるような事業体として、2026年度を戦っていきたい。長くシャープ製品をご愛顧いただける世界観を打ち出していく」と訴えた。
