<CES>サムスンの展示にベテラン評論家が驚いた理由とは?“テレビファースト”の背景を紐解く
今年も大盛況を持って閉幕した米ラスベガスの「CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショウ)」。毎年最先端のテクノロジーやプロダクトが登場し、世界を沸かせている。
CES取材暦30年を重ねる麻倉怜士氏が、ファイルウェブの重点トピックであるオーディオ&ビジュアル製品を中心に、ホットな話題を深掘りしてお届けする。
AIの新たなゲートウェイとしてのテレビ
サムスンの「新しいブース」を訪れた時、もっとも驚いたのは、何と「テレビ」、それも130型の、まったく新しい「マイクロRGBバックライト液晶テレビ」が、堂々と、来場者を迎えていたことだ。
私のCES取材暦は30年に近いが、その前半はデジタル放送を核にした「テレビの時代」であった。だが後半2010年代以降は、いかにテレビを人前から隠すか、つまり旧いテクノロジーの象徴として位置付けるか、に努めていたように理解している。
サムスンの新製品には、昔から大いに注目していたが、肝心のテレビが会場では毎年、縮小していったのだから、がっかりだった(一方のLGエレクトロニクスは、常にテレビが主役)。
その意味で、今回のサムスンの新しいブースで、まずはテレビの紹介から始まったことに驚いたのである。
「新しいブース」と述べてきたが、実はサムスンは、もうこれまでのラスベガス・コンベンションセンターの中央館には、いない。そこから撤退し、新たに高級ホテルWynn(ウィン)のプライベート大会場でプレス・カンファレンスを挙行し、大規模なブースも設けたのである。
そのプレス・カンファレンスも新型テレビの紹介から始まった。例年、サムスンはいかにAIに注力しているかの自慢話から始まるのが常だったから、これにも大いに驚いた。
突然のテレビファーストの理由は2つ。ひとつが、ブランニューのマイクロRGBバックライト液晶テレビのデビュー。
今、液晶テレビシーンでは、バックライトのLEDをカラー化するのがブーム。中国勢がミニLEDサイズのRGBバックライトなら、うちはさらに小さいマイクロLEDで行くと、イノベーティブなマイクロRGBバックライトテレビを開発したので、それをまず知ってもらおうとの趣旨だ。プレス・カンファレンス冒頭の紹介も、その意図からだ。
もうひとつが、家電のAI化を進めるのに、テレビがゲートウェイとして最適との判断だ。それはブース設計でも、まさに玄関としてまずはテレビのAI化(サムスンでは「Vision AI Companion」という)が来場者を迎え、つぎに冷蔵庫、食洗機、掃除機などの白物家電のAI化のデモンストレーションが後に続くことからも分かる。
テレビに特化したAI機能のVision AI Companionではまず、リモコンの「AIボタン」から起動。音声対話でテレビ番組の見どころ、動画配信のコンテンツ、料理のレシピなどをグーグルのGeminiが答える。アナウンサーの声と背景音をAIで音源分離し、それぞれの音量を調整することもリモコンで可能。
AIの登場で、テレビの体験は新しい次元に入った。逆にAIを広めるにはテレビは格好のゲートウェイだということを、サムスンのブースレイアウトは雄弁に示していた。



