＜ポタフェス＞世界初披露アイテム多数、あの名エンジニアの新規ブランドも！豊作のアユートブース

12月13日（土）、14日（日）の2日間、東京・秋葉原にてe☆イヤホン主催のポータブルオーディオ展示試聴イベント「ポタフェス2025 冬 秋葉原」が開催中だ。

地下1階にてブースを展開するアユートは、同社が取り扱うAstell&Kern／ACTIVO／qdcブランドから世界初展示の製品を多数公開。他のブランドからも日本初展示の製品や、さらには取り扱いを調整中の新規ブランドまで、非常に豊富な話題を提供している。本稿では、特に注目の製品をピックアップして紹介する。

Astell&Kernから世界初お披露目されたのは、ブランド初のハイエンド・ポータブルDAC／アンプ「AK-HC5」。いわゆるドングル型のDAC／アンプとしては初めて、AKM「AK4191EQ」＋「AK4499EX」のセパレートDACソリューションを採用するのが特徴のひとつ。PCM 768kHz/32bit、DSD512までの再生に対応する。

また、同ブランドのフラグシップDAP「A&Ultima SP4000」から「High Driving Modeテクノロジー」を継承している。オペアンプを並列配置することで電流を大幅に増し、力強い駆動力と低ノイズを両立するという設計技術だ。

さすがにSP4000とまったく同じ回路というわけではなく、本技術をオンにすると消費電力も上がるそうだが、その代わりドングル型のDAC／アンプとしてはトップクラスのパワーを発揮できるようだ。

ほか、それぞれ音質が微妙に異なる6種類のDACフィルター、アップサンプリング機能「DAR」、UACモード切り替えなどに対応。

150段階の細かな音量調節が行えるボリュームホイール、くっきりとした1.62型OLEDディスプレイ、着脱可能なデュアルノイズシールドケーブルも装備。

Astell&Kernの高級DAPゆずりの音色をスマホで手軽に楽しめる、入門機的な立ち位置になるかもしれない。国内ではこの冬、およそ8.5万円ほどで発売見込みだという。

Astell&Kernからはもうひとつ、VOLK AUDIOとのコラボレーションにより開発したイヤホン「STELLA」が世界初公開となった。VOLK AUDIOが手掛けるイヤホンとしては、ブランド第1弾「ETOLLE」に続きこれが実質的な第2モデル目となる格好だ。

ETOLLEと同様、チューニングはVOLK AUDIO創業者のJack Vangとグラミー賞エンジニアMichael Gravesの2人が手掛けるそうだが、ドライバー構成はまったくの別物に。

低域はVOLK AUDIO独自の9mmダイナミックドライバーとSonion製BAドライバー2基、中域はBAドライバー3基、高域はプラナー（平面）ドライバー2基とSonion製静電ドライバー4基、合計12ドライバー／6ウェイ設計となっている。さらに独自の「ベントアーキテクチャー」も内蔵しているという。

ハウジングにも複数の素材を投入しており、シェルには強度を高める熱処理を施した6061アルミニウム合金、フェイスプレートにはステンレス製フレームと高硬度のサファイアクリスタルグラスを奢り、シェルと同じアルミニウム合金でブランドロゴを表している。国内では70万円前後で発売予定だそうだ。

Astell&Kernのカジュアル・サブブランドであるACTIVOからも、5ドライバー／ハイブリッドイヤホン「SCOOP」が世界初公開。

8mmダイナミック×1／6mmダイナミック×2／BA×2という他ではあまり見ないドライバー構成を採用しながらも、独自の音響ポート設計と回路によってコントロール。近年の音楽トレンドと相性のよい、メリハリのついたサウンドを奏でるという。

付属の銀メッキ銅＋OFCハイブリッドケーブルは、プレーヤー側の端子を3.5mm／4.4mm／DAC内蔵USB-Cの3種類に着脱交換できるマルチプラグ仕様となっている。価格は約1.5万円と手頃なモデルに位置づけられるそうだ。

世界初展示の最後の1つが、qdcの15ドライバー／トライブリッドイヤホン「CRAVE」。qdcのブランド10周年記念、そして次なる11周年目に向けてアユートと共同企画したコンセプトモデルという位置づけで、価格は55万円前後が想定される。

ドライバー構成はカスタムIEM「EMPRESS」をベースとしつつ、チューニングはEMPRESSやその兄弟機「EMPEROR」のどちらとも異なる“リスニングモニターサウンド” を目指したそう。

超低域には1基の10mmダイナミックドライバー、低域に4基／中域に2基／高域に4基のBAドライバー、超高域に4基の静電トゥイーター（EST）を配置。さらにブランド独自の「Dmagic音響構造」でダイナミックドライバーとその他のドライバーの相互干渉を防ぐことで、非常に広い周波数帯域をフラットに再生できるとしている。

デザインは「高級感と普及感の融合」というコンセプトで、スタイリッシュで所有欲を満たし、かといって耳元悪目立ちしないギリギリのラインを突き詰めたとのこと。音質は非常に完成度が高く、来場の際はぜひ試してほしいとブーススタッフも太鼓判を押していた。

qdcからは、過去にもイベントで登場した4BAイヤホン「4Pro」も参考出展。今回の展示機は、日本限定デザインとL字型プラグを着脱交換できる2in1ケーブルを採用したモデルとなっている。スイッチの切り替えで音楽鑑賞向け／スタジオモニター向け／ステージモニター向けの3種類のチューニングを使い分けられることも特徴で、約11万円で発売予定となっている。

そして、アユートが今後新たに取り扱いを開始予定のオーディオブランド grell audio（グレルオーディオ）から、開放型ヘッドホン「OAE2」が参考出展された。名前からピンと来た方もいるだろうが、本ブランドはかつてゼンハイザーに在籍し、いくつもの名ヘッドホンを手掛けたエンジニア Axel Grell（アクセル・グレル）氏が立ち上げたものだ。

OAE2には、「フロントサイド・サウンドフィールド・モジュレーション（FSFM）」という技術が用いられている。40mmのドライバーユニットはバッフルに対して角度をつけて配置され、振動板には放射面も振幅も大きなバイオセルロース素材のコーンを採用。

また、ハウジングの大部分はドイツ製の精巧なステンレスメッシュで覆われている。この設計によって、繊細な高音と力強い低音を絶妙に調和させているそうだ。

ドライバーユニットに角度をつけるという手法自体はいまや珍しくないが、OAE2の取り付け角度は群を抜いて大きいのが印象的。

また、ケーブルはハウジングの片側だけに接続するいわゆる片出しタイプだが、左右両方のハウジングにコネクターを備え、どちらにケーブルを繋いでもよいそうだ。取り扱い開始時期はまだ未定とのことだが、価格は日本円で約9万円だという。

イベント直前に展示機が間に合った、サプライズ出展も用意された。木製ハウジングのヘッドホンがアイコンのSendy Audioからは、平面磁界ヘッドホン「Apollo Pro（仮）」が参考出展。

モデル名は仮につけられたものだが、既存モデル「Apollo」（約5.5万円）のチューニングをさらに追い込んだ、後継機的な位置づけになるとのこと。会場にはA／B 2タイプの試聴機が用意され、来場者からの反応を開発にフィードバックするという。

ULTRASONEからは、プロ向けヘッドホン “Signatureシリーズ” のハイエンド機種として開発中の「Signature QUANTUM」が登場。詳細についてはまだ非公開だが、自然な音場を再現するためのブランド独自技術「S-Logic」をさらに磨き上げた最新バージョン「S-Logic 5」が搭載されるとのことだ。

この他にも、Noble Audio／Maestraudio／FitEar／FiR Audio／AZLAといったブランドから、国内初展示品や、発売に向けブラッシュアップの進んだ参考出展、発売直後の新製品の数々が並んでいる。アユートブースだけで、実に多彩な体験ができそうだ。なお来場される場合は、試聴展示の多くは整理券方式となっていることにご注意を。

この9月からアユートでの取り扱いがはじまったNoble Audio。13ドライバー／クアッドブリッドモデル「Shogun」（約55万円）、4ドライバー／ハイブリッドモデル「Van Gogh」（約11万円）、3ドライバー／トライブリッドモデル「Knight」（約3.9万円）など、11月22日から本格展開を開始した有線イヤホンに加え、新たな最上位モデルとして開発を進めている「Kronos」の量産仕様が国内初公開された。

チタン製ハウジングの中に、超低域10mmダイナミックドライバー／低域7mmダイナミックドライバー／中域BAドライバー×2／高域ドライバー×2／超高域静電ドライバー×2／骨伝導ドライバーの計9ドライバーを搭載。付属ケーブルはパラジウムメッキ4N純銀線と6N OCC銀線を組み合わせた8芯バランスケーブル（4.4mmプラグ）が採用されている。価格は70万円程度とのこと。

あわせて、完全ワイヤレスイヤホンの最上位モデルとなる「FoKus Prestige Encore」も展示。木材を使用した高級感のあるハウジングに、8mmダイナミック／BA×2／6mm平面磁界の計4ドライバーを搭載。

従来モデルよりも新しい世代のBluetoothチップセットを採用し、アクティブノイズキャンセリング（ANC）にも対応する。こちらは12万円程度が見込まれるそうだ。

Maestraudioでは、FitEarとのコラボレーションで開発した本格ステージモニター「STAGEAR」の量産仕様を展示。

ミュージシャンやエンジニアが実際にステージ上で着用することを想定したつくりで、ハウジングのフィット感やケーブルコネクターなどにFitEarの知見が活かされている。ドライバー構成は、Maestraudioおなじみの10mmダイナミックドライバーと5.8mmパッシブセラミックトゥイーター「RST」のハイブリッドだ。約3万円でもうじき発売予定としている。

FitEarが来春発売に向けて開発中のモデル「Lilior（仮称）」。オランダDEC社のアンビエントフィルターを装備することで、装着時に耳の内部にかかる圧力を逃がし、音場や定位の最適化、圧迫感の軽減などを図っている。

ドライバーユニットはすべてSonion社製で、BAウーファー×4／フルレンジBA×2／静電トゥイーター×4の10ドライバー／ハイブリッド構成となっている。

Maestraudioを展開するオーツェイドの自社ブランド intimeでは、先行販売プラットフォーム「ミミゴト」で予約販売中のDAC内蔵バランスケーブル「nOmaDAC（ノマダック）」を参考展示。

PCM 384kHz/32bitまで対応するDACとバランスアンプを内蔵した、USB Type-C接続のイヤホンケーブルとなっており、導体を2種類、イヤホン側コネクターを3種類から選べることも特徴だ。

イベントでの試聴機出展は今回が初めてだといい、PCUHD（高純度銅）と銀メッキPCUHDの2種類の導体を聴き比べることもできる。先行販売期間は今年12月30日までで、価格は約1.3万円からとなっている。