今後注目の弩級DAPも国内初上陸!「ポタフェス2025名古屋」徹底レポート
finalから「国内初披露」のヘッドホンが急遽参戦。名古屋初上陸のハイエンド製品も多数
finalは、イヤホンの新フラグシップモデル「A10000」や、既存製品をベースに最新の音質設計を投入して新しい可能性を引き出す “MODシリーズ” に加え、国内初公開のヘッドホン/完全ワイヤレスイヤホンを参考出展した。
ヘッドホン「DX3000CL」は、“これまでにない革新的なダイナミックドライバーの開発” をコンセプトに掲げるヘッドホン “DXシリーズ” では初の密閉型モデル。シリーズ第1弾の開放型モデル「DX6000」(約25万円)は新設計のダイナミックドライバーと独自の通気構造で非常にヌケ感に優れた音を目指していたが、今回のDX3000CLは中高域のヌケ感を受け継ぎつつ、密閉型ならではの深い低音が楽しめるモデルになるそうだ。現在まだ開発中だが、年内には発売予定。価格も10万円以下、できれば8万円台を目指したいとのことだった。
完全ワイヤレスイヤホンの「ZE300」は、6,000円前後の価格帯でまもなく発売予定というコンパクトモデル。姉妹ブランドagの「COTSUBU」を連想させる小ぶりな筐体に、ANCや外音取り込み機能、上位モデル「ZE500 for ASMR」ゆずりの通気構造を投入。装着時にかかる空気圧を制御して、耳にもイヤホンの内部構造にも負担がかかりにくくする、快適なワイヤレスイヤホンとなる見込みだ。
アユートは、イベント当日10月4日に発売となったAstell&Kern「XIO」(約55万円)をはじめ、取り扱いイヤホンブランドのフラグシップモデル/基幹モデルをラインナップ。多くのユーザーが列をなしていた。
XIOはAstell&Kernと米イヤモニブランドの64 Audioとのコラボレーションモデル。ダイナミックドライバー2基、BAドライバー8基の10ドライバー/ハイブリッド構成で、空気圧制御システム「apex」や、プレーヤー/アンプのインピーダンスで音質が変化しにくい「LID」など64 Audio独自の技術も多数採用。特に低域のダイナミックドライバーは、2基を連結した「トゥルーアイソバリック」構成となっており、深みと密度、インパクトにあふれる低音を再生できるという設計だ。


トライオードのCROSSZONE(クロスゾーン)は、デジタル処理を使わずアナログな音響設計のみで、スピーカーで音楽を聴くような “頭外定位” の再現を目指すヘッドホンブランド。今回、そのエントリーモデルとして開発中の「CZ-12」を参考出展していた。昨年のオーディオイベントで初披露されたモデルだが、開発が進みいよいよ正式発表が近づいているようだ。
既存モデル「CZ-10」のヘッドバンドを折りたたみ対応の軽量仕様に変更し、さらにキャリングケースも同梱して携帯性を高めたモデルという位置づけ。ドライバー構成についてはCZ-10と共通だが、チューニングは変えているとのことで、一般的なヘッドホンの聴こえと異なる “頭外定位” を屋外でも気軽に楽しみやすくなるはずだ。価格もCZ-10から抑え、10万円を切る程度を目指しているという。
メディア・インテグレーションは、従来から取り扱っていたFOCAL PROFESSIONAL(フォーカルのプロ向け機器シリーズ)に加え、新たに取り扱いを開始する独ベイヤーダイナミックの製品を早速展示。海外で発表されて間もないオンイヤー型Bluetoothヘッドホン「Aventho 100」は、レトロさを漂わせる上品なデザインながら、ANCや外音取り込み、aptX Losslessといった最新トレンドをカバーするモデル。約3.6万円ほどで11月ごろに発売見込みだという。
同社の展示の中でとりわけ個性的だったのが、楽器ブランド・ティーンエイジ・エンジニアリングの「TP-7」(約27万円)。基本的には96kHz/24bitまで対応する音声素材録音用のフィールドレコーダーなのだが、実用性はもちろんのこと、遊び心が満載。天面のモーター内蔵ターンテーブルを回せば瞬間的な早送り/巻き戻しやDJのようなスクラッチができたり、側面のレバーを操作すればカセットテープ風の早送り/巻き戻し操作が行える。ブースではプレーヤーとして展示されており、ヘッドホン/イヤホンの試聴を目当てに訪れたユーザーが思わず興味を惹かれ、次々と手に取る光景が見受けられた。
ソニーは9月19日発売のモニターヘッドホン「MDR-M1」を中心に、レコーディングやミキシングにおいて現役で活躍する同社プロフェッショナルヘッドホンを出展。海外の著名スタジオの音響をリファレンスとしたMDR-M1、ソニー・ミュージックスタジオ東京のニアフィールドモニター環境をリファレンスとした「MDR-M1ST」、空間オーディオ制作向けの開放型モデル「MDR-MV1」といった音楽制作の第一線で使われるヘッドホンたちを聴き比べることができた。


ヤマハブースでは、10月23日発売の平面駆動ヘッドホン「YH-4000」(約43万円)、10月30日発売の密閉ダイナミック型ヘッドホン「YH-C3000」(約30万円)という今月発売が待たれる2モデルを出展。フラグシップ平面駆動ヘッドホンの「YH-5000SE」(約50万円)を交え、それぞれの個性を比較しながら、楽器メーカーでもある同社の技術とサウンドを体験できた。


完実電気は、Meze audioの開放型ダイナミックヘッドホン「105 SILVA」(約8万円)、Audezeの密閉型平面駆動ヘッドホン「LCD-S20」(約9.6万円) という2ブランドの新製品を出展。前者は上位モデル「109 PRO」と下位モデル「105 AER」の長所を取り入れ、ボーカルの存在感や弦楽器の自然な響きが魅力というモデル。後者もAudezeブランドの最上位モデルの技術を取り入れつつ価格を抑え、密閉型ハウジングとすることで場所を選ばず音楽に没入できるようにしたモデルとなっている。
ピクセルブースでは、音響チャンバーの交換でさまざまな音色を楽しめるAcoustuneのイヤホンの聴き比べや、レコード入門にもピッタリのHAKUブランドのターンテーブルなどを展開。飯田ピアノブースでは、10月中旬から発売予定となる、MEMSドライバーの使いこなしに注力したベトナムSoranikブランドの「MEMS-3S 2025」「MEMS-3」の試聴機を用意した。
日本ディックスは、9月から取り扱いを開始した新イヤホンブランド・Slofloのダイナミックイヤホン「MS001GM」(約7万円)や、Pentaconnブランドのオーディオ用プラグなどを展示。ブリスオーディオは、その品質と価格のバランスで大好評だというサブブランド・Brise Worksの「MIKAGE」(約2万円)などケーブルを体験できた。
主に業務用ヘッドホンを手掛けるアシダ音響は、今年2月に発売したリスニング向けヘッドホン「HA-ST12」(税込6,930円)の新カラーバリエーションを出展。ライトブルー/アッシュピンク/アッシュグリーンという柔らかな色使いの3色で、ファッションにも取り込みやすいカラーとなっている。NOBUNAGA Labsは純銀にわずかな金を配合した、新しい合金導体のケーブルを参考展示。同ブランドのラインナップに無い、3万円弱の価格帯に投入する予定とのことだ。
ミミソラオーディオは、See Audioブランドから発売予定の有線イヤホン「SeeU」を参考出展。4BA+1ダイナミックドライバー構成で、同ブランドのハイエンドモデル「KAGUYA II」にならった全帯域の調和を重視したチューニングを行ったという。01 Diverseでは、新規取り扱い予定のブランド・Sam&Johnnyの完全ワイヤレスイヤホンを参考出展。カスタムIEMの制作ノウハウを活かした耳にピッタリはまり込む装着感と、6BAなど完全ワイヤレスイヤホンとしては珍しいドライバー構成が特徴となる。
クラウドファンディングプラットフォーム・GREEN FUNDINGのブースでは、10月31日までプロジェクトを実施中のXROUNDの完全ワイヤレスイヤホン「FORGE PRO」を出展。豊富な機能を備え、リスニング、ビジネス、フィットネスなど様々なシーンに対応できることを強調している。AVIOTブースでは、L'Arc-en-Cielのボーカルなどで知られるHYDE氏が監修するヘッドホン「WA-J1-666」、完全ワイヤレスイヤホン「TE-J2-666」を、予約者への発送日前に体験することができた。
Hi-Unitブースでは、ドラマー・ピエール中野氏監修のイヤホン「Hi-Unit 003-pnk(有線ピヤホン5)」やUSB-DAC「HSE-AD03-pnk(ピダック)」、手頃なUSB-C接続イヤホン「HSE-A2000NC」など9月から10月にかけて発売する新しい製品をさっそく出展。先行販売プラットフォーム「ミミゴト」で販売中の、10万円を超えるチタン製高級インナーイヤー型イヤホン「DM7Ti」も存在感を放っていた。
今年で開店10周年! e☆イヤホン名古屋大須店に名古屋のポータブルオーディオ事情と展望を聞く
ポタフェスを主催するe☆イヤホン、その名古屋大須店は、今年10月23日をもって開店10周年を迎える。ポタフェスが開催されたこのタイミングで、店長の吉田 佳(よしけい)氏に名古屋のポータブルファン層の傾向や、今後の展望について伺ってみた。
――10月23日で大須名古屋店は10周年を迎えるとのこと、おめでとうございます。10年間営業されてきた中で、名古屋のオーディオファンにはどんな製品が好まれてきたのでしょうか?
吉田店長:名古屋大須店のお客様の傾向としては、有線イヤホン/ヘッドホンのポータブルオーディオユーザーが大多数ですね。ただ、スタイルについてはお客様ごとにさまざまです。1台の高級イヤホン/ヘッドホンを愛用して、それを活かすプレーヤーやアンプを探すのか、比較的手頃なイヤホン/ヘッドホンを複数台所有して、気分や音楽によって使い分けるのか。選び方、聴き方は多岐に分かれています。
次に多いのがワイヤレスオーディオをたしなむユーザー層で、有線ポータブルオーディオユーザーと合わせてお客様の半数以上を占めているといった印象です。また当店で紹介に力を入れてきたこともあってか、自宅で使うタイプのヘッドホンのユーザーも、昨年から徐々に増えてきたように感じています。
――ある1系統の楽しみ方が流行っているというよりは、ポータブルを中心に色々な形でヘッドホン/イヤホンで音楽が楽しまれている、という格好なんですね。e☆イヤホンさんといえば中古買い取り/販売も取り扱われていますが、そちらはユーザーさんからどのように利用されているのでしょうか?
吉田店長:高級モデルでも手頃なモデルでも、同じ価格帯の別の製品に買い替える際に利用される方がもっとも多いです。複数台所有されているお客様の中には、これまで買い集めた製品を放出してグレードの高い製品にステップアップする、という方もいらっしゃいますね。
――中古買い取り/販売も、しっかりと新しいオーディオと出会う手段として利用されているのですね。それでは今後、名古屋大須店としては、どういった取り組みをお考えでしょうか?
吉田店長:現在、名古屋大須店では聴く機会が限られている高級モデルや、生産台数の少ない希少なモデルなどを体験できる機会を、より増やしていきたいですね。店舗に常設するか、期間限定のフェアのような形式にするかは未定ですが、東京・秋葉原店や大阪・日本橋店並みに、ユーザーさんに貴重な音楽体験を味わってもらうのが目標です。
それこそ今回のポタフェスも、そんな機会の一種だと言えますが、ここまで大きな規模でなくとも定期的にイベントなどを催して、秋葉原/日本橋と同等の体験を、名古屋や近隣に住むオーディオユーザーの方々にご用意したいですね。



