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固定価格買取制度の順次終了に向けて

積水化学、太陽光発電余剰電力の新買売サービス「スマートハイムでんき」

公開日 2019/04/15 18:43 Senka21編集部・竹内純
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■本年度FIT終了1割強がセキスイハイム

積水化学工業は、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)の適用が、本年11月より順次終了するのに伴い、住宅用太陽光発電の余剰電力 “買売” を行う新サービスとして「スマートハイムでんき」を発表。9月提供開始へ向け、本日4月15日よりユーザーへの案内を開始した。

積水化学工業(株)執行役員 R&Dセンター所長・小笠眞男氏(左)と同執行役員 住宅カンパニー リフォーム営業統括部長・久宗弘和氏

「スマートハイムでんき」は、同社セキスイハイムに居住のFIT終了となるユーザーから、余剰電力を買い取り、他のセキスイハイムに居住のユーザー、同社グループの工場や事業所へ供給・販売するというもの。

余剰電力を有効に活用。温室効果ガス排出量のさらなる削減にも貢献する

再生エネルギーの主力として急速に普及した太陽光発電だが、天候や時間帯による発電量の変動が大きく、過剰発電による大規模停電の恐れが指摘される。実際、日照時間が長く、太陽光発電の普及率が高い九州では、九州電力が昨年10月13日に日本初の太陽光発電の出力制御を実施している。

太陽光発電の急速な普及による大規模停電が懸念されている

本日開催された記者発表会で、同社執行役員 R&Dセンター所長・小笠眞男氏は、「時代に先駆け1997年から太陽光発電付き住宅の販売を開始、2018年度で累計20万棟になる。本年度にFITが終了する同住宅は54万棟に及ぶが、当社がそのうち約6万棟を占め、1事業者としては最大規模となる。FITを推進してきた我々の課題でもある」と説明した。

2019年度にFITが終了する54万棟のうち、セキスイハイムが1割強の約6万棟を占める

現在は太陽光発電だけでなく、再生可能エネルギーを最大限に使い切る、蓄電池導入による自給自足を提案。直近の蓄電池採用実績は38%にまで急速に高まり、同社の考え方が「お客様にも徐々に受け入れられている」と手応えを掴む。

太陽光発電と併せて蓄電池を導入する割合が約4割まで高まっている

■買取料金はソーラー+蓄電池搭載で12円/kWh

同社が示した関東地区246邸のHEMSデータをもとにした電力使用状況は、1軒あたりの平均発電量は5,400kWh/年。これに対する消費電力量は、日中の自家消費が2,100kWh/年、蓄電池に貯めて夜に活用するのが2,300kWh/年で、計4,400kWh/年。すなわち、1,000kWh/年の余剰電力が発生している。「その有効活用を提案するのが今回の新サービス」と訴えた。

約1,000kWh/年の余剰電力の有効活用が新サービス導入の趣旨

4月15日より、セキスイハイムグループ会社のセキスイファミエスが、FIT終了を迎えるユーザー向けセミナーや住宅訪問を展開。本年度対象となる6万棟のうちの10%を目標に、蓄電池導入によるエネルギーの自給自足を提案。さらに、それを応援するサービスとして位置付けられるのが余剰電力を買い取る「スマートハイムでんき」で、買取料金はソーラー+蓄電池搭載の場合は12円/kWh、ソーラーのみでは9円/kWh。なお、買い取り価格は毎年度見直しを行う。

買い取り価格は蓄電池の有無で差がある

今後、7月には電力販売価格を公表して電力購入を希望するユーザーからの申し込みを受け付ける。9月にはユーザーの約半数を占める東京電力エリア・中部電力エリアからまず電力の供給をスタートし、11月には全国で電力の供給・買い取りを実施する。

今後のサービススケジュール

■VPP事業化へ2020年には準備を完了

現在、発電量の調整用電源としては火力発電が用いられているが、温室効果ガス排出を削減する「再エネ社会」実現にも、いつまでも頼っているわけにはいかない。再生可能エネルギーを「たくさんつくればいい」というフェーズから、「どう使うかが問われる時代」へと移行する中で、「環境を経営のど真ん中において事業を展開している」と語る積水化学工業が導入する「スマートハイムでんき」。

「この事業で儲ける意思はまったくない」と断言。余剰電力をいかに有効に活用するかが趣旨であり、ユーザーの余剰電力の課題を解決すると同時に、現在、約4割ある住宅用太陽光発電と蓄電池を新築時に採用するユーザーを、本サービスの提供により、「新築されるお客様がより安心して住宅用太陽光発電と蓄電池を導入できる。その割合を5割まで引き上げたい」と訴えた。

3年前の2016年には小売電気事業者として登録。将来的には各住宅の蓄電池に貯められた太陽光発電電力も買い取り、その電力を束ねるバーチャルパワープラント(VPP)の事業化を目指す。2020年に準備を終了する計画で、実証・検証が進められている。スケールこそ違うがすでにその仕組みを有し、「蓄電池の遠隔自動制御ができる態勢もすでに整えられており、1分で状況が把握できる。電力会社からの要望があれば、5分以内にその要望にお応えできる」と力を込める。

電力を束ねるバーチャルパワープラント(VPP)も事業化へ向けて着々と進行

積水化学グループの課題である温室効果ガス排出26%削減の達成や社会課題である電力需給バランス安定化にも寄与する新サービス「スマートハイムでんき」。蓄電池の調整力を活かし、再生可能エネルギーのさらなる普及を目指し、持続可能な社会の構築へ貢献する。

目指す究極的な姿は、エネルギーを地産地消できるゼロエネタウン

「スマートハイムでんき」の事業目標
<買取電力量>
143,000[MWh/年](2021年度)
※12,000棟/年の住宅の生産に必要な電力に相当
675,000[MWh/年](2030年度)
※国内73拠点の積水化学グループ工場・事業所の電力需要(2017年度実績)を賄える量に相当
<販売電力量>
179,000[MWh/年](2021年度)
<契約件数>
買取件数 55,000件(2021年度末)、186,000件(2030年度末)
販売件数 38,000件(2021年度末)


「スマートハイムでんき」事業の目標数値

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