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PrimeSeatでは定演を独占配信

IIJとベルリンフィルが協業。「デジタル・コンサートホール」でハイレゾ配信スタート

2016/04/08 編集部:小澤 麻実
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左からオラフ・マニンガー氏、IIJ鈴木幸一会長、ローベルト・ツィンマーマン氏
(株)インターネットイニシアティブ(IIJ)と、ベルリン・フィル・メディアは、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の映像配信サービス「デジタル・コンサートホール(DCH)」において協業。IIJが「ストリーミングパートナー」となるスポンサーシップ契約を2016年1月1日付で締結し、共同して「高精細映像と高品位音声を融合する未来の配信サービスを実現」するための新技術開発をおこなっていくことを明らかにした。今後はDCHの音声のハイレゾ対応や、4K、バーチャルリアリティ映像、バイノーラルオーディオ等も視野に入れながら、様々なプロジェクトを実施していくという。

DCHのストリーミングインフラを、IIJが技術面/資金面でサポートしていく

パートナーシップの第一弾として、本日4月8日から「デジタル・コンサートホール」にて、IIJのストリーミング技術を使ったハイレゾストリーミングチャンネルをスタート。ベルリン・フィル・レコーディングスのタイトルを、最大192kHz/24bit FLACで試聴することができる。こちらは当面日本のみでのサービス提供。年間契約ユーザーおよびチケットを持っているユーザーは無料で試聴が可能だ。チケットを持っていないユーザーも、90秒間サンプルを再生できる。

「デジタル・コンサートホール」内のハイレゾストリーミングチャンネルページ

試聴音源としては、既にソフトとしても販売中のシューマン、シベリウス、シューベルトのツィクルスが用意されている。今後はベルリン・フィル・レコーディングスの新録音のほか、グラモフォンやワーナーなどで録音した過去作品の提供も予定しているとのことだ。

ベルリン・フィル・メディア取締役のローベルト・ツィンマーマン氏が説明を行った

シューマン、シベリウス、シューベルトのツィクルスをハイレゾで試聴できる

試聴はJAVAベースのwebブラウザプレーヤーで行うかたちで、プラグインや外部ソフトは不要とのこと。現在はPC版のみだが、今後モバイル機器にも対応予定という。

webブラウザプレーヤーで試聴するかたち。回線状況にあわせて再生クオリティを選べたり、作品/指揮者/オーケストラ等の情報を表示したりできる

回線状況にあわせて192kHz/24bit、96kHz/24bit、48kHz/24bitの音源から選択することが可能だ。ダイナミックレンジ波形表示や、作品/指揮者/オーケストラ等の情報表示にも対応している。

今後はChromecast/AirPlayを使用したオーディオ機器での試聴対応も予定。プレイリストや検索機能の追加、録音関連情報や、スコア/字幕等を見ながらのストリーミング再生なども検討しているとのこと。さらに、「PrimeSeat」のソフトを使った試聴にも対応予定だ。

今後は他レーベルの音源配信や、Chromecast対応などを行う予定だという


「PrimeSeat」では「ベルリン・フィル・アワー」開始

また、IIJが提供するハイレゾストリーミングサービス「PrimeSeat」のインターネットラジオでは、4月16日から新番組「ベルリン・フィル・アワー」をスタート。こちらはベルリン・フィルからコンテンツ提供を受け、IIJが独占配信するもので、ベルリンフィルの定期演奏会が48kHz/24bit PCM音源で提供される。

4月16日19時からは『ラトルのマーラー「巨人」、ベートーヴェン「第4」』、4月23日19時からは『アバドのシューマン「第2」。ベルク「ヴァイオリン協奏曲のソロはファウスト』が配信される。第三弾以降は順次サイトにて発表されるとのことだ。

なお既報のとおり、4月9日(土)の「ベルリン・フィルのメンバーによる室内楽」の公演のDSDライブ配信も実施する(関連ニュース)。

4月9日(土)ベルリン・フィルメンバーによる公演のDSDライブ配信も担当する

説明を行ったIIJ 冨米野孝徳氏


「ストリーミングの未来について共に考えたい」

ベルリン・フィルとIIJは、昨年4月の「ベルリオーズ《ファウストの劫罰》」DSDライブ配信(関連ニュース)でもコラボを行っていた。これが大成功を収めたことから、今回の合意に至ったのだという。

冒頭挨拶したIIJの鈴木幸一会長は、同社が早い時期からストリーミングに取り組み、高い技術を持っていることをアピール。「今後は間違いなくストリーミングの時代になる。4K映像を現行の電波法で配信した場合、1.5局くらいしかできないことになるのですから。世の中を変えていかなければという危機感を持っており、それはオラフさん(ベルリン・フィル・メディア取締役)もそうでした。IIJは世界一の配信技術を持っていると自負していますし、ベルリン・フィルのコンテンツも世界一素晴らしい。日本を変える、次の時代の配信を考える良い機会だと考えています」と語った。

IIJ 鈴木幸一会長

早い時期からストリーミングに取り組み、実績があることをアピール

続いて来日したソロ・チェリスト兼メディア代表のオラフ・マニンガー氏もコメント。「ベルリン・フィルはその歴史のなかで、演奏活動をするだけでなく、最新技術をいちはやく取り入れて最高の音質を届けることに力を注いできました。その実現にはドイツ銀行やソニーなど優れたパートナーとの協力がありましたが、今回IIJというパートナーを得られたことも我々にとって大きな喜びであり幸運です。我々は、彼らの技術だけでなく企業としての姿勢にも非常に共感していますし、鈴木会長のクラシックに対する造詣の深さと愛に感銘を受けています。今後ますます重要になっていくストリーミングの未来について共に考え、共に開くことのできる存在だと確信しています」と賛辞を贈った。

ソロ・チェリスト兼メディア代表 オラフ・マニンガー氏

会場から「この協業はビジネス面から見ると、すぐにペイできるようなプロジェクトなのか、それとも環境自体を変えていくための実験的なものなのか」という質問が投げかけられると、鈴木氏は「こういうプロジェクトはあまり大したビジネスにならないのが私見(笑)」と笑いつつ「ただ、もちろん全く商売のことを考えていないわけではありません。インフラが整っており、クオリティにこだわりを持つ方も多い日本は“実験場”として素晴らしい国。将来新しいかたちのディストリビューションが普及するにはいちばん良い場所だと思います。ですが、国の政策としてそういったことを全く考えていないのも日本なのです。そういった点ではベルリン・フィルとの協業によって新しい姿が予見できるのではないでしょうか」と説明した。

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